タイトル未定2026/10/01 15:43
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私の名前は春日小路 涙美です。
日本に発生し始めたダンジョンを探索する。探索者に、最近なりました。
「こういうの憧れてたんだよね」
今は渋谷ダンジョンの5階にいます。
「この先にボスがいるらしい」
言って、髪を緑に染めた男性――丘道さんが、指で示した――なんだか牙に見えるものが生えた赤い門が不気味に見えました。
「ボスって、5階で初めて出てきたんだろう?」
「ああ。滅茶苦茶強くて、10人パーティーが全滅して8名死亡」
「まじかよ・・・・ヤバすぎるな」
私は、現在、4人の男性と一緒にダンジョンに潜っています。
私をパーティーに誘ってくれた男性4人は、ギルドという物を組んでいます。
ギルドというのはダンジョンが発生し始めて、誰かが作り始めた物で、要は探索者のグループです。
みんなで協力してダンジョンを攻略しようって感じですね。
彼らはメガ・シチズンというギルドを結成しているそうで、総勢16人いるそうです。
私もそのうち入れてもらおうかな? とか思ってます。
「おっ、ゴブリンだ!」
リーダーの丘道さんがARの剣を出現させました。そうして振り返って叫びます。
「塩橋!」
「おうよ!」
塩橋と呼ばれた男性が、頭上で3本のロープを結び、先におもりを付けた物を回します。
ボーラという物です。
あのロープを投げて足に絡ませれば、モンスターの身動きを封じて、一方的に戦えるのです。
これが足のあるモンスターに特効なんです。
お陰で5階という、結構難易度の高い場所で、初心者の私ですら、ずっと危なげなく戦えてます。
むしろ4階の飛ぶタイプのモンスターの方が、危ない感じでした。
「よし、掛かった!」
「もう一匹いる!」
「塩橋! 頼む!!」
「おう!」
塩橋さんが慣れた投擲で、ゴブリンの足を封じます。
「掛かったぞ!! ――とどめを刺せ!」
みなさんがARの武器でゴブリンを突き刺します。
ゴブリンは断末魔を挙げてガラスのようになり、砕けました。
このエフェクトのお陰で、ゲームっぽく感じられ、人型の動物を殺した感はあまりありません。
「あれ?」
なにか、私の前に出現しました。
ブーツ?
巨大なブーツでした。鎧のような、メカのような見た目の。
「あっ、ドロップアイテム!?」
このブーツ、レア度1のシェルター級ですが、初めての魔石以外のドロップ品です!
まだダンジョンのドロップ装備はほとんどなくて、シェルター級でも1000万とかで取引されるんだとか!
「おー、涙美ちゃんおめでとう!」
「おめでとう!」
「ありがとうございます!」
私が、頭を下げた時でした――足に何かが絡まって・・・・えっ?
なぜか塩橋さんが、私に向かってボーラを投げていました。
「えっ、な――!?」
私が驚愕の声を挙げようとすると、口が押さえられました。
さらに猿轡を噛まされ、ロープで縛られます。あっという間でした。
私が落としたブーツを、丘道さんが拾い上げ、口の端を歪めます。
「ダンジョンってのは密室でなぁ。――中で何があったかわかんねぇんだよ」
「んー!? んー!!」
「馬鹿な女が、誘ったらホイホイ付いてきやがって――ママから言われまちぇんでちたか? 『知らない人に付いていっちゃ駄目でちゅよ』って」
どういうこと!? 何を言ってるの!? この人!!
「このブーツは俺達が売り払って、金を大事に使ってやるから、安心しろ」
まさかこの人たち・・・・。
「じゃあな」
塩橋さんが私を持ち上げ――ボス部屋に・・・投げ込まれた!
「んーーー!!」
4人の男性が遠ざかっていきます。
やがて4人の姿は、私の視界から消えました。
ボス部屋の奥から、なにやら唸り声のような物が聞こえたかと思うと――ゆっくり、巨大な緑色の巨人が私に向かってきました。身長が、4メートルは有ると思います。
巨人の頭上には◤オーガ◢と表示されていました。
オーガは、私の隣まで来ると、右腕にもった棍棒を振り上げます。
私は、なんとかロープから脱出しようと悶えますが、硬いロープはビクともしません。
(し、死ぬ――殺される!! し、死にたくない! ・・・死にたくない、死にたくない、死にたくない!!)
体が震えます。震えが止まりません。涙と鼻水で顔が滅茶苦茶になっていきます。
オーガの顔が嗜虐的な笑みに歪みました。こいつ、私を殺すのを楽しんでいる!?
オーガが舌なめずりをして、私がきつく目を瞑った時、遠くから声がしました。
「ここの敵、なんか弱くね?」
「うんうん。あっちより全然弱い」
誰かこっちに向かってる!? ――私は、猿轡された口で叫ぶように、うめき声を上げます。
「んーーー!(助けてぇーーー!!)」
なにか、立ち止まる音がしました。
お願い、立ち止まらないで!!
(誰でも良いから、助けて!! ここから連れ出して!!)
「なんか、こっちで、うめき声みたいなの聞こえなかった?」
「聞こえたな」
「なんでしょう」
私は喉が裂けそうなほど、思いっきり声を出します。
「んーーーーーーーーーっ!!(助けてーーーーーーーーーっ!!)」
「なんか、様子がおかしい!! ――変形!!」
(え? 変形?)
驚くべき速度で飛んできた・・・飛行機!?
飛行機は急に人の形になり、お、女の子!?
彼女は、「オーガ、か」と言って、右手に装着した巨大な銃を構えたかと思うと、「ハイパーカノン!」と叫び、発射。
地響きのような銃声を鳴らし・・・・オーガのお腹に大きな穴を開けました。
さらに、巨大な太刀を持った女性まで走ってきて、大きく振るうとオーガの足が斬り飛ばされました。
そのあとは突如姿を現した小柄な女性が、嘘みたいな高さまで飛び上がり、オーガの首を斬り飛ばしました。
飛行機の姿でここへ来た、カーリーヘアの女性が私に駆け寄ってきました。
「だ、大丈夫!?」
「な・・・なんでボス部屋で縛られてるんですか!?」
つ、つよい、この人たち、あまりにも強い。何者!?
金髪の女性に、猿轡を外してもらいました。
私は自由になった口で事情を話します。
「メ、メガ・シチズンって人たちのパーティーに誘われて入ったんですが、アイテムがドロップした途端、急に縛られてボス部屋に放り込まれたんです・・・」
「なっ!? ――ひどい!」
「なんてことをするんですか!」
にしてもこの人達。全身にダンジョンのドロップ品らしき装備をつけている・・・。ど、どうやったらあんなにアイテムを手に入れられるんだろう?
小柄な女の子が、どこからともなく出した刀で、私のロープを切ってくれました。
ですが、飛行機になっていたカーリーヘアの女性が慌てます。
「リッカ! 今、配信中だよ!? 銃刀法違反とか!!」
「これは美術品として登録してある。安心しろ」
「ビ、ビックリさせないでよ・・・」
「しかし、そのメガシチズンとか言う奴ら、スウの配信に思いっきり名前が乗ってしまったな。こりゃもうタダじゃすまんぞ」
「えっ、スウ!? ――貴女、スウなんですか!?」
「あ、うん。はじめましてスウです」
「す、すごい! 登録者数1500万人の!! って、一式 アリスさんじゃないですか!!」
すると、小柄な方が胸を張りました。
「えっと」
この方は誰だろう。
小柄な方が、私の様子に、目を見開きます。
「えっ、もしかして、リッカちゃんを知らない感じ?」
「えっと・・・す、すみません」
「が・・・がぁん」
助けてもらったのに知らないとか、失礼してしまったのでした。




