ダウンロードします
「こなくそ!」
『あ、駄目です、涼姫。物理攻撃でモンスターを倒しては!』
「えっ、なんで? ヨトゥンはこうやって倒したよ?」
『なんか、モンスターを倒すとダンジョンポイントという物がもらえるんですが、物理攻撃で倒すと貰えないんです』
「え、質量を上げて物理で倒すのは駄目なの?」
『推奨されないみたいです』
「じゃあどうやって倒すの? この世の全ては物理攻撃だよ? 精神攻撃で倒すの?」
私はクラーケンに向かって、
「お前はあとで、タコ煎になるんだ」
精神攻撃を仕掛けてみた。
『えっと、ARの武器で倒すんですよ』
「ふぁ!?」
『こいつら、ARの武器が通用するんです。――ARで「ダンジョン.com」というサイトにアクセスしてください――』
「ダンジョン.comぅ!?」
『――ダンジョンと共に出現した、謎のサイトです。そこにある「迷宮樹・ラビドラシル」というゲームをダウンロードします。そして初期装備を受け取ると、ARで武器を召喚できるので、それで戦うんです』
「・・・・どういう理屈やねん」
混乱のあまり関西人になりながら、とりあえずみんなで『ダンジョン.com』にアクセスして『迷宮城ラビドラシル』をダウンロード。
にしてもダウンロード速度が遅い。もしかして20年前に普及していた回線――ADSLとか使ってんじゃないの?
あと、今月は動画見すぎて、ギガ使い果たしたんだよなぁ。
というわけで待ち時間を待っていると、みずきが提案してきた。
『このダンジョンの存在、秘密にしないか?』
「え・・・? なんでよ」
『チートがしたい』
「は?」
『自分だけ入れるダンジョンのチートがしたい!! ――こんな場所、誰にも話さなきゃバレないし、バーサスフレームがないと、簡単に入れないし!!』
「『お前は何を言っているんだ?』」
『涼姫はいいよな? 銀河連合の禁止区域に入れるし。自分だけ入れる場所でチートできて! わたしもしたい!』
・・・・確かに私は、銀河連合から特別な権限を与えられていて、普通の人が入れない場所に入れたりするけど。
『チートしたい!! チートしたい!! チートしたい!!』
子供みたいにジタバタし始めるルミライト・ダーリン・インフィニティ・カスタム――というかみずき。
やめなさい、イワシ達が「きゃー」って逃げてったから。
「子供か!」
『チートしたいぃ!!』
妹みたいな子に言われると、うーん。
同い年なんだけどね。
「わ、わかった! わかったから! 誰にも話さない!」
『やったぁ!!』
通信ウィンドウの向こうで、ちびっ娘が天使みたいに微笑んだ。――まぁ、ヤツの言ってる内容はゲスいんですけどね。
でも後で調べたら、この辺りって、JAXAとかの探査船がよく来るって書いてあった。
このダンジョン、そのうち日本に見つからないかなぁ?
でも200メートルくらいの海の底だもんなぁ――確かに、国が整備でもしない限り、バーサスフレームがないと入れないだろう。
それにここ、私が上を見上げると、なんかテーブルみたいな巨大なのがヒサシみたいになってる。
これ、国が見つけられないかもなぁ。
少なくとも衛星からは探知できないだろう。
あとここ200メートルとかの海の底だから、結構良いパイロットスーツがないと駄目かも。
水圧も20キロくらいかな。耐えられないことはないだろうけど、普通のダイビングスーツとかだと大変そう。
水圧の変化に体をならさないと危険だし・・・。
その後、みずきが魚をバーサスフレームで捕まえているのを眺めていると、(密漁にならんか? 大丈夫か?)ダウンロードが終わった。
『ダウンロード、終わりましたね』
なんか、初期装備選択というのが表示された。
「じゃあ、初期装備選ぶ?」
『ですね――大打刀っと』
「迷いないね。M1911っと」
『涼姫ちゃんこそ』
『小太刀っと』
「リッカも迷いないなぁ」
『まぁ、戦い慣れた三人だからなぁ。手に馴染んだ武器がある』
「防具もあるのかぁ」
『海ですし、水着にしますか?』
「パイロットスーツの上から水着?」
『実に愉快な見た目の集団になること、請け合いですね』
「それな」
曲がりなりにも女子3人の服選び。ここからが長かった。
結果。
私の見た目、
ファンタジー+カウボーイって感じ。
白いとんがり帽子のテンガロンハットに、白で長いコート。
黒いベストに、足元は黒いパンタロンだぜ、パンタロン。
今買おうと思ったら、どこを探したらいいのやら。
シャツなんか、襟がフリル。フラメンコとか踊りだしそう「オ・レ!!」
そこにM1911を添えて。
『涼姫ちゃん、とんでもない組み合わせですが、整ってますね。モデルとしても、唸るコーデです』
「ゲームのコーデは慣れてるんだよね」
『いやもうこれは、ゲームのコーデではないがな』
『リアルのコーデと変わりませんね』
アリスは、上半身着物、下半身黒いドレススカート。
「アリスも大概じゃん」
『涼姫ちゃんに、抵抗してみました』
「せめて対抗にしろ」
みずきは・・・メイド服に、ラウンドシールド・・・・まではまぁ良いとして。
バケツヘルム――バケツを被った見た目のヘルメット。
「なにその格好」
『涼姫に、拮抗してみた』
「それで拮抗してると思うの止めて? どんなセンスだよ」
『西洋好きだからな!』
「お前の西洋はどんなだよ」
みずきが『見えにくいな』と言って、ヘルメットを脱いだ。
普通のメイドになった。ラウンドシールドは除く。
私は神殿を見る。タコは引きこもったまま。
「で、あのタコ倒さないと駄目なんだよね?」
『ですね』
「なんか神殿の奥から出てこないし、乗り込むかぁ――神殿は壊せないの?」
『どうもダンジョン自体は不可侵オブジェクトという物らしく、破壊不能なんですよ――多分、穴を掘って進むとかズルをさせないためです』
「・・・なんだその・・・・物理現象どうした」
『わかりません』




