本当に良かったと思います
アリスとみずきが叫んだ。
『涼姫ちゃん!!』
『なにやってる、涼姫!!』
突き刺すように――津波に入り込んだ。
どこだ、親子はどこだ!
『〖超暗視〗!!』
〖超暗視〗という暗闇を見通すスキルで、視界が無影灯のようになった。
そうすると、津波の様子が見えた。
(この津波、なんだ、おかしい・・・・)
大量の土砂や岩が混ざり込んでいる。
(・・・・なんだこれ――やっぱり、海底が爆発した?)
私は〖飛行〗で土砂や岩を躱しながら、親子を探す。
訓練シミュレーターの訓練は、主に弾幕を躱す訓練だった。だから私は躱すのが一番得意。
「いた!!」
抱き合い流されていく親子を、見つけた!!
私は〖飛行〗で彼女たちに向かうけど、濁流の抵抗が邪魔だ!!
母親は、娘をかばいながら――不味い、流れてきた車に激突した!!
母親が意識を失ったのか、娘を強く抱きしめていた腕が、ほどけた・・・・!
2人が離れていく。
「くそっ!! 〖超怪力〗!!」
私は全力で、娘に向かう。
そうして〖念動力〗でなんとか、娘を抱きしめた。
でも母親の方が、どんどん離れていく!
「駄目だ、母親も死なせちゃ駄目だ!!」
私は知っている、親を失う辛さを。
あんな思い、この娘に味わわせてたまるか!
「あんな思い、させて堪るかッ!!」
私は叫んでスキルを使う。
「〖マッピング〗!」
周囲の様子と、生物の位置が青点で視界に示された。
引き波が来た。波が海に戻っていく!! ――母親が、海に連れ去られる!!
「――死なせるかよ!!」
私は一旦海水から出て、〖マッピング〗に映る青点に急降下。
そうして母親を見つけて、〖念動力〗で回収。
また急いで水面から上がろうとする――けど、〖第六感〗というスキルが耳鳴りで、危険を告げる。
振り向けば、
「岩!?」
回避が間に合わない!?
岩に、衝突し――そうになった瞬間、巨大な鋼の手が、私を包み込み、岩から守ってくれた。
鋼の手は、私を海水から引き揚げる。
『涼姫ちゃん!!』
「ア、アリス!! ――助かったよ!!」
アリスの機体、サンライト・ショーグン・ゼロ・カスタムの手だった。
ルミライト・ダーリン・インフィニティ・カスタムが、上半身をだらーんとした。
バーサスフレームは、人型形態は脳波操縦で動かすので、パイロットがしたい姿勢になってしまう。
『全く、無茶するな! ・・・・心配したじゃないか~』
『まあ・・・・誰かがピンチになると涼姫ちゃんが無茶するのは、今に始まったことではないですし――わたし達は涼姫ちゃんの無茶をカバーするしかないです』
『そうだなぁ・・・・それしかないよなぁ』
「ご、ごめん。〖再生〗」
私は謝りながら、意識のない母親に傷や病気を回復するスキルを使った。
相手が死んでたら黄泉の国に迎えに行っちゃうんだけど、そうなってないから大丈夫、この人は生きている。
アリスが、サンライト・ショーグン・ゼロ・カスタムの手を、まるで水を掬うときみたいな形にした。
座りやすくなった。
私が母親の女性を、巨大な手のひらに横たえると、
「ママァ! ママァ!」
と、恐らく名前は咲夜ちゃんが、母親にすがりついた。だから私は、優しく教えてあげる。
「咲夜ちゃん、大丈夫だよ。ママ、もうじき目を覚ますからね」
「ほ、ほんと? ママ大丈夫なの?」
「うん、大丈夫!」
私が太鼓判を押すと、咲夜ちゃんが急に目をまん丸にした。
「―――あっ、スウ!」
どうやら私を知っている咲夜ちゃんみたいである。
拙者、ちょっと有名な配信者なので、日本中に面が割れているのだ。
「そ、そう、スウだよ! スウが助けたんだよ! だからママは助かったよ!」
咲夜ちゃんがヘドバンみたいに頭を「ぶんぶか」振る。
私、結構、世界的に「無敵で何でもできる」と思われている節がある。
・・・本人的には、ただの根暗な陰キャなんだけどね。
「うん! スウがいるなら大丈夫!」
咲夜ちゃんが、笑顔を私に向けてくれた。
めんこい。でゅふふ。
私が心の中で、ヨコシマな囚人服に着替えていると、咲夜ちゃんのお母さんが呻いた。
私は胸をなでおろす。
咲夜ちゃんのお母さんは、飛び起きるように目を覚ました。そうして開口一番、娘を呼んだ。
「咲夜! 咲夜は!!」
周囲を見回し、咲夜ちゃんを見つけて、涙を流しながら抱きついた。
「咲夜! 助かったのね!? ――本当に良かった!!」
うんうん、よかったぁ。
私は安堵で、全身の力が抜ける。サンライト・ショーグン・ゼロ・カスタムの手のひらに倒れ込みそうになっていると、
「ママ! スウお姉さんが、助けてくれたんだよ!」
「えっ、スウさん? ――そうなの!?」
お母さんが私を見つけて、咲夜ちゃんを抱いたまま、何度も頭を下げてくる。
「ス、スウさん!! この辺りの学校の生徒だとは聞いていましたが・・・・本当に、貴女が居合わせてくれて助かりました! あの警告も貴女だったんですね!? 私のせいで娘が逃げ遅れてしまい、ご迷惑を掛けました」
「い、いえいえ」
咲夜ちゃんのお母さんは涙を流しながら、私頭を下げ続ける。
「本当に、ありがとうございました!! 本当に!!」
「いえ、お二人とも、助かってよかったです」
見ると、お母さんの腕が、震えだしていた。さっきまで必死だったから忘れていた恐怖に、気づいたんだろう。
だけど2度と娘を離すまいと、その腕は咲夜ちゃんをしっかりと抱いていた。
「お母さんが勇敢だったから、助けられたんです」
私は言って、咲夜ちゃんの頭を撫でる。
「咲夜ちゃん、お母さんを大事にしてね?」
「うん!」
曇りない返事に、私は、笑顔を返した。




