神奈川がピンチになります
横浜にダンジョンができて1ヶ月が経った。
ちなみに私は湘南付近に住んでいる。西鎌倉って言う場所に家を買った。さらに財力にあかせて、隣の家も買って庭に改造したんで、でっかい庭付き。いいでしょ。
で、湘南って普段は綺麗な海なんだけど、海は綺麗なだけじゃない――恐ろしい部分がある。
鮫や遭難も怖いけど、1番はやっぱり津波だ。
普段は千葉がある房総半島が守ってくれるんだけど、角度が悪いと直撃する。
「ダンジョンが出現し始めて、もう1ヶ月も経ちましたね」
「だねー。はい、アイス」
下校中、私は学校近くのコンビニで買った「箱アイス」から、アイスを取り出してアリスとみずきに配布。
みずきは学校が違うけど、よくウチに出稽古に来ているので、そんな日は待っていると一緒に帰れる。
今日は、待ってみた――ソシャゲしながら。
水着の牛若丸ゲットだぜ。
――しかし、水着になったら露出度もエッチ成分も下がるってどういうことよ?
私が摂理のバグに気がついて、真実を知ってしまった猫のような顔になりポカーンとしていると、アリスが私の口に鶏の唐揚げを入れてきた。
私は鶏を咀嚼。
「ん、――おいしい」
アリスは太りやすい体質らしく、モデルだから、カロリーを気にしている。なので唐揚げなどを買っても、1、2個しか食べず、ほとんどを私達にくれてしまう。
・・・大変だなあ。
アリスが、私が渡したアイスを見つめる。
「アイスですか・・・・有難い――ですが」
「カロリー控えめなガリガリする奴にしといたけど、気になる?」
「まあ・・・・小さいサイズですし、じゃあ半分だけ」
アリスが、ガリガリしだした。
「残りは、わたしにまかせろ~!」
焼き鳥の串を、両手に3本ずつ指に挟み、さらにアイスまで握ったみずきが拳を挙げた。
「ガッツリ食うなぁ。晩ごはん入らなくなるよ?」
ママに怒られるよ?
「我が胃袋は無限である!」
そういえばこの娘、大食い配信した時、ラーメンを3キロくらい平気な顔で食べてたっけ。
私がガリガリを始めると、頭上から「ピーヒョロロ~w」というトンビの鳴き声が聞こえて来た。
私はスキル〖テレパシー〗を使って、頭上のトンビの会話を盗み聴く。
「ピーヒョロロ~!w(おいおい、またカモが道端で飯食ってるぜ!w)」
「ピーヒョロロ!(ば、馬鹿野郎!! 新入り、あの方にだけは手を出すな! お前は巣立ちしたばかりだから知らないだろうけど、あのお方は鈴咲様! 音より早くジャンプできる方だ! 殺されるぞ!!)」
「ピーヒョロロ~!w(音より早くジャンプする人間なんていてたまるかよ先輩!w なにか見間違えたんじゃねぇのか!w みてろよ、俺があのチキンを奪ってきてやる!w)」
鳶が人間を鴨扱いして、鶏を強奪しにくるのか・・・・業が深いな。
トンビが、ダイブ&ズームで、アリスの背後から接近してくる。
「〖念動力〗〖洗う〗」
私は急降下してきたトンビを〖念動力〗でビンタして、ついでに〖洗う〗で綺麗にした。彼奴等シラミがいっぱいいるんだよ。触ったら「かゆいかゆい」になる。
シラミを弾けさせながら、トンビくんの軌道が直角に曲がって『20分 無料』と書かれた看板に激突した。
大丈夫、かなり手加減はした。
私は〖飛行〗でちょっと浮き上がり、トンビくんに微笑む。
「やる?」
「ピ、ピィィィヒョロロォォォ!!(し、失礼しましたぁぁぁぁぁぁ!!)」
涙目になったトンビくんが、慌ててお空にラナウェイした。
「・・・・ったく」
アリスが、私の口に唐揚げを入れながら微笑む。
「ありがとうございます。また涼姫ちゃんを恐れるトンビが増えましたね」
「私、鳥類好きだし、アイツ等可愛いんだけど、ケガさせてくるのだけはいただけない」
などと鳥類を咀嚼しながらぷんすこしていると、周りを飛んでいたトンビ達が、一斉に陸の奥の方へ飛び始めた。
「ん?」
そこでなにか、違和感を感じた。
あっち? 私は海の方を見る。――なにか、変だ。
みずきも、海を睨んでいる。
アリスが半分食べ終わったアイスをみずきに渡そうと、小さく振った。
「みずき、残りのアイスを・・・・みずき? 涼姫ちゃんも、どうしたんですか?」
「ねえ、みずき、海面が少し盛り上がってない?」
「かもしれん」
「〖飛行〗!」
私は〖飛行〗で一気に空へ300メートルほど駆け上がる。
そして急降下しながら叫んだ。
「津波が来る!!」
「なに!?」
「本当ですか!?」
遠くで、凄まじい水柱が上がっていた。
海に、なにかが落下したのか、海中で爆発でも起こったのかわからないけど――とにかくあの波は、津波に変わる!
私は所有スキルの〖テレパシー〗を使って、広域で叫んだ。
(津波が来ます! 高台へ逃げて下さい!!)
日本人は津波の恐ろしさが、身に沁みている。
海岸で遊んでいた老若男女、みんな、一斉に陸に上がってくる。
うちの生徒も海岸で遊んでいたけど、真っ青な顔で車道に上がってきた。
学校に残っていた生徒たちも出てきた。
みずきとアリスが、車道を走る車を止めだした。
車が走っていては、逃げるみんなが避難できないからだ。
2人が、「津波が来る!」と叫びながら、車の誘導をしだす。
化学教師の小森先生が、私達に叫ぶ。
「おい鈴咲! 八街! ――それから百合ヶ浜の生徒! お前たちも早く逃げろ!!」
私は、小森先生に叫んだ。
「私達3人は〖飛行〗で飛べます! 逃げるのは最後で構いません!!」
「な、なるほど――お前ら3人なら大丈夫か・・・・無茶はするなよ!!」
「先生こそ!!」
先生は生徒を誘導しながら、急な坂を登っていった。
あの坂、登るとしんどいけど、こういう時は助かる。
近くのお店や、住宅からも逃げる人々が出てきて高台へ走っていく。
この辺りは丘が多い。だからそこに逃げ切れば、津波は怖くない。
(みんな、慌てず急いで!!)




