第99話 どういうスタイルで配信するか会議
「……どういう集まり?」
明が疑問を口にした。
もっともな質問だと思う。
ここはファイヤー・アンド・ウインド合同会社のパーテーションで区切られた事務所。
そこに、あたし、明、ファノリー、フレアとアクアが集まり、メインになるのは恵美奈だ。
そして有識者としてベテランマネージャー、エルフのルンテさん。
「ひいーっ、私の目で見るに、そこのギャルは人間じゃないじゃないですかーっ」
「イッヒッヒー、明日奈の親友、土田ファノリーだよー。よろー」
「人間じゃないのは今更じゃない? うちの事務所は異種族しかいないし、恵美奈だってハーフ妖怪みたいなもんでしょ?」
「それはそうだけどぉ……」
「まさか刑部恵美奈が魔眼使いだったなんてねー」
「パパから存在は聞いたことがあるな。パパ、妖怪とも繋がりが深いから」
「はいはいはい! みんなめいめいに話してると話がまとまりませーん。静まりましょう若人たち!」
五十年以上生きてるエルフのルンテさんは、あたしたちみたいな若いのを捌くのも余裕なのだ。
「いいですかー? 今日は刑部恵美奈さんを、どういう配信者にしていくか? そのために集められた有識者会議です。ふうらいエレメンツは少数精鋭。正確には、現在の事務所のキャパ的にあまり多くの配信者を抱えられません。なのでここはきちんと勝ちにいくキャラクター造形が必要になるんですよ」
「プロみたいなこと言ってるよこの人」
「ほむら、俺達が素人なんだ。収益化してないんだぞ俺達」
リトルウィッチ・デュオを圧倒するベテランマネージャー!
そして明はまだ状況が全く分かってないみたい。
「コンビでデビューするとなると、お互いの関係性で売れます。その場合はキャラ造形は気持ちオーソドックスでもいいんです。ですが単体で売り出すとなると、それこそ強烈なキャラクターが必要になるわけ。例えばここに、過去に売り出された単体でも高いアピール力をもつ配信者で……」
次々にプレゼン資料を持ち出してくるルンテさん。
圧倒的過ぎる……!!
あたしたちはまだガキだった……!
これが……これが大人……!!
なお、これを社長やリーシュさんや鳥乃さんも見ていて、もう全社会議じゃんこれ!
パラスさんだけ、ずっと日向ぼっこしている。
ああやりながら、商品展開の資料をちゃんと作り、バンダースナッチ株式会社とも販売計画のWEB会議をしているのだ。
「そういうわけで、若い皆さんには忌憚ない意見、アイデアを求めます! はいそこのギャル!! 土の眷属でしょ? 魔眼使いも属性的には土だから同類。なんかネタあるでしょ?」
「うち? うちはねー。地雷系ファッションの配信者ってどう?」
「いいですねー!」
ルンテさんが即座に肯定した。
動きが早い!
「はあ!? 私が地雷系に!? ひぃーっ、そ、それはキャラとかけ離れているので……」
案外近くない?
慌てる恵美奈だが、地雷系ファッションとの相性は良さそうな気がする。
さすがファノリー。
一撃でクリティカルなアイデアを出してくる。
「地雷系地雷系……。あー、確かに恵美奈に合うかもねー」
「ふむ……。いいんじゃないか?」
「湊あんた、胸元見てたでしょ」
「ばっ、おまっ、そんなの見てねえよ!!」
湊がおっぱい好きなことは分かってるぞー。
明もそうだからな。
ほら、明もその単語を聞いてちょっとそわそわしてる!
「明鎮まれ、鎮まれ~」
「ぜ、ぜんぜんそわそわしてないよ!」
「明日奈っておっぱい好きだもんねー。よくうちに抱きつかれてニヤニヤしてるし」
「ファノリーちゃーん!!」
名前で呼ぶ仲になってんのね。
いいじゃんいいじゃん。
なお、明というかかざりんのファンである湊は、同じおっぱいスキーということで明にシンパシーの籠った目を向けている。
この場はカオス!!
その後、次々に地雷系ファッションのアイデアが寄せられてきた。
みんなめいめいに調べて、色々提出してくる。
これをルンテさんが見て、恵美奈が見て、どれを選択するかを決めていくわけね。
スカートやリボンは黒をベースに、差し色でピンクを入れていく……?
なるほどなるほど。
「はわわわわ、私がこんな格好をするようになるなんて……」
「Aちゃんとして配信デビューした時は制服姿だったじゃん? そこで黒いマスクをしてうぇーいって感じだったじゃん」
「私、そんなことしてたかな……!?」
「地雷系でも違和感ないって。大丈夫大丈夫! むしろしっくりくる!」
あたしの励ましに、なんかちょっとその気になる恵美奈なのだった。
とりあえず、長い髪をツーテールにしたりするのは確定した。
ゴスロリっぽい衣装にするか、バンギャ(ヴィジュアル系バンドファンのギャル)っぽい、柄物の黒いシャツを着せるか……。
「このシャツ、下を履いていないのでは?」
「ホットパンツ履いてるよ。いいじゃん、恵美奈ムチムチしてるんだし、これで太ももを見せつけてやろうよ!」
「ひぃーっ」
「サンダーのやつがグイグイ攻めるわね……」
「うち、サンダーマスクがこうもそういうのに理解があるとは思ってなかったわー。あ、でもストリート系の格好してるから、お似合いかも」
「お似合い!?」
ファノリーの言葉に、ハッとする恵美奈なのだった。
おい、何を考えてる。
「じゃ、じゃあこのシャツに黒いブリーツスカートを合わせて、腕とかにはアクセを付ける方向で……」
ネイルに関しては、最近はバーチャルネイルというのが出ている。
Aフォンを買えばそれも完備できるから、それで行こう。
「はい、ではイラストレーターが見つかったら、本格的にキャラクターデザインに移ります! まずはその前に、生身でデビューしちゃいましょう! 次は配信者ネームですが……」
全社会議が続くのだ!
社長が、なんか感動しながらひたすらメモしてるなあ。
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