第100話 その名は魔瞳エイミー
「こ、こ、こんなあからさまな名前があっていいのか……!! ずっと逃げ続けていたこれまでの私の人生は一体……!!」
「いいんです!!」
強弁するのは、迷宮省からやって来た園宮さん。
本来なら魔眼使いにとって天敵とも呼べるような立場の人なんだけど……。
「今回、刑部恵美奈さんはきちんと迷宮省に届け出をして、魔眼使いの配信者としてデビューしますからね。国もあなたの存在を管理できて、あなたも光が当たるところでビジネスができる。win-winの関係と言えるでしょう」
「は、はあ……」
「それに、あなたの存在が他の魔眼使いたちへのアピールにもなるのです。いつまでも日の当たらない場所で生きているのではなく、表世界に現れて社会参加し、社会貢献せよ……と!」
「園宮さん語る~」
明がなんかしみじみ呟いた。
ここは、この間に引き続きふうらいエレメンツの事務所。
ルンテさんが連絡し、迷宮省も承認したらしい。
そして彼が即座にやって来たと。
国の機関なのに、フットワークが異常に軽いとは社長の談。
「迷宮省のシステムは、基本的に現場の人間が権限を持ちます。独自権限で裁決を行い、予算権を行使して配信者をサポートしたり現場に対処します。その正当性が審査されるのは後のことですね。よほど私利私欲で裁決権を行使しない限りは通ります」
「すげー。映画に出てくる国家直属の特殊機関みたいだ」
「ずばりそのものです」
「ずばり!」
「かっこいいー」
驚くあたし、目をキラキラさせる明。
そして状況についていけない恵美奈。
「では、迷宮省は正式に認可を出しましたということで、私はこれで……」
黒塗りの車で去っていく園宮さんなのだった。
その直後、恵美奈がパーテーションの裏に呼ばれ……。
「ひいー、こ、こ、こんな格好を!? スカートが短い……! 年を……年を考えてください……!?」
「なあーに言ってるの三十歳そこそこの小娘が。ちゃっちゃと着なさい!」
「ひいー」
恵美奈の悲鳴が聞こえてくるなあ。
そして姿を現した彼女は……。
見事に黒とピンクベースの地雷系ファッションになっているのだった。
いつもの黒縁メガネだけが恵美奈だなーと分かる要素かも。
「配信中は外したほうがいいかもね。ああそれから名前は昨日伝えた通り……」
「あ、あのまんまの名前で行くんですかあ!? 勘弁してくださあい」
「あなたは魔瞳エイミー! 魔眼系配信者! これは新しい! 当たる!!」
「魔瞳!」
「エイミー!!」
衝撃を受けるあたしと明。
なるほど、名前の綴りを見たらどういうキャラなのかすぐ分かる。
「魔法の瞳……」
「恵美奈だからエイミー」
「「まんまだ」」
「でしょう?」
ルンテさんが得意げなのだった。
「社長! それでは早速、デビュー配信をして参ります! 昨日のうちにデビュー準備中ということで、ふうらいエレメンツ所属・謎のAちゃんでアカウント作ってありますから!」
「仕事速いねー! 任せたよルンテさーん!!」
社長から力強い承認をもらい、ルンテさん率いるあたしたち三人は……足が進まなそうな恵美奈を、あたしと明で両脇からガッチリ連行して……目的地のダンジョンへ向かうのだった。
ダンジョンは、小さなものなら毎日発生している。
その多くは、対ダンジョングッズを使えば一般人でもどうにか破壊できるものだったりもするけど……。
「はい到着。今回のこれは、某大学の教員宿舎です。使われていなかった部屋がじんわりとダンジョン化し、見ないふりをしていたらあっという間に宿舎全体に広がってしまったというわけで」
今回のは、配信者が出動しないと解決しない規模のもの。
その中でも割と大きめらしい!
「広い敷地だねえ」
明がきょろきょろしながらしみじみ呟いた。
あたしも、前にグググールマップとかで見たことある。
この大学は大きい!
「ここめちゃくちゃ広いんだよねー」
「大学……通ってみたかった……」
「恵美奈はこれからじゃーん! なんか宇宙さんが、戸籍上での年齢を17歳にしてくれたんでしょ?」
「まあそうではありますが……」
「エルフである私から言わせると、人間なんか寿命が二倍になった程度では全然若造なんだけどね! さあさあ、配信の準備よー。既にAフォンは買ってあるからね。非公式だけどね」
ルンテさんがバリバリ準備していく。
恐ろしく手慣れている!
一人で配信準備を全部やっちゃうんじゃないか?
恵美奈はされるがままだ。
「あ、あのう……私はどういう配信をしたら……?」
「エイミーは魔眼を使えばいいの。いつも抑えているのを今回は解放して、どかーんと使っちゃって! それがあなたのキャラなんだから。あ、魔眼についてはAフォンが配信時に色と効果音を付けてくれるから」
「色と効果音!? 誰にも知られてはならないと言われている魔眼を、色と効果音つきで全国配信!? あわわわわ」
「恵美奈の常識が崩れていく」
「刑部さん頑張って!」
「はわわわわ、が、が、がんばりますぞ」
「いつものキャラになった。口調、そっちのほうが緊張しないんじゃない? それで行こう、それで」
あたしの提案に、頷く恵美奈なのだった。
ということで、教員宿舎に到着。
どう見ても普通のアパートみたいな作りなんだけど、外からでも禍々しい雰囲気を放っているのが分かる。
割と厄介なダンジョン化をしてそうじゃない?
「ねえ明」
「実は僕は霊的な気配とかなーんにも分からなくなっているんだ」
「なんだってー!」
「わ、私はここ危険だなーって分かりますぞ! 本当にここでやるんです?」
「やるんです」
ルンテさんが無情に宣言するのだった。
さあ、魔瞳エイミーのデビュー配信まで、あと十分!
あたしたちは補助として同行する。
画面にも映るし、なんなら率先してモンスターと戦うけど、ちゃんとメインは恵美奈なのだ。
さあ、張り切って行ってみよう!
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