第101話 ハラハラしながら見守るなり
「こ、こ、こんにちはー。魔瞳エイミーでーす。本日デビューさせていただきましたー」
ツーテールの髪、黒い柄ものマスクに地雷系の大きなシャツ、ミニスカートにアクセサリーじゃらじゃらな恵美奈が、配信を始めた。
待機していたリスナーが、次々にチャットを送ってくる。
※『こんにちは! かわいいですね!』『やっぱりAちゃんだ!』『あれは巧妙なプロモーションだったんだなあ』モチョチョ『ムッふともも!! ……まだここにモデレーターはいないようだな……』御座候『エッチ過ぎる格好ではござらんかな?』
明の配信で見たことあるリスナーもいるな。
あたしたちの繋がりで、みんなエイミー初配信に駆けつけてくれているらしい。
ありがたいなー。
「じゃあそのう、自己紹介をしながら、先輩方の助けを得つつダンジョン配信して行こうと思いますぞ」
※『ますぞ!?』『ますぞ!?』『ますぞ!?』回転『まさか地雷系ファッションからオタク女子構文が出てくるとは……』
あたし、ハッとする。
画面の外から「それだ! その口調! いつものあんたのそれ! やれーっ! やれーっ!!」と訴えかける。
※『画面外からサンダーの叫びが聞こえてて草なんだ』『後輩への指導が熱心!!』『麗しき先輩後輩愛か? それともそう言う関係なのか?』モチョチョ『だが、ふうらいエレメンツにはなかったエッチ要素がこれで補われた』回転『おいそこまでにしないと』モデレーター『コメント制限しますね』モチョチョ『ウグワーッ!?』
確かに言われる通り、ミニスカートからむき出しになった恵美奈の足は大変扇情的だと思う。
上は余裕のあるシャツ姿なのに、胸元はそれを下からぐっと押し上げているし。
今のあたしは、デカいものを見ても冷静でいられるようになったのだ。
恵美奈とか、最近の明がいつも近くにいるからね……。
というか明よ。
あたしの体を使って、そこまでサイズアップしたのは何か秘密があるのか……!?
そんな明は、ぽへーっとしながら恵美奈の配信を見守っている。
「刑部さんかわいいー」
そうだった!
こいつ、もともと恵美奈のことちょっと好きなんだった!!
※『エイミーちゃんは何ができるの?』『この間はなんか結界を破ってたでしょ!』『魔眼って言葉が聞こえたの、切り抜かれてた』
「そ、そ、そうなんですよー。私は魔眼使いでー。あー、こんなの表で言っちゃっていいのかー? いいんだよねえ? ど、どうなんですかな上鳴くん」
「いけー! そのままいけー!!」
※『なんと力強い指示コメだw』『サンダーが頼れる先輩過ぎるw』回転『魔眼使いは、もともと色々問題があって危険視されてきた歴史があるっぽい。それが表に出てきたっていうのは、もしかして時代の転換点なのかも知れないな』
おっ、さすが明のところの有識者!
おい明!
ずーっと恵美奈に見とれてるんじゃない。
「で、では行きましょうぞ! 私はその、魔眼をメインにしながら配信する? みたいなんですが……。慣れないうちは先輩方の助力を得てですな……」
※『おどおどかわいい』『いけんのか』『見せてもらおう魔眼とやらを』『あとムチムチを』
リスナーは期待してるな。
何に期待してるんだってのもいるが。
いいぞ恵美奈、そのままダンジョンにゴーだ!
なんかダンジョン前で立ち止まって、チラチラ振り返りながら不安げなので。
あたしはガーッと前に出て、彼女の背中を押した。
「おら! 行くぞ行くぞ行くぞ!」
「ヒギィー」
※『いったー! サンダーがいった!!』『話を進めてくれるのありがたいねえ』『あっ、画面外からかざりんも出てきて、ポテポテ歩いてついてくるぞ!』『なんて自然体なんだ』『さらにできるようになったな』
こうして入り込んだ、教員宿舎ダンジョンの中。
長く長く続く廊下に、無限に連なる部屋の扉は次々に開いていく。
その中から出てくるのは、おなじみなゴブリンたちだ。
このゴブリン、最後まで人間側につかないでずーっとモンスターなんだよね。
「ヒィ~! お助け~!」
「エイミーが助けるんだよ! ほら魔眼! 魔眼ゴー! 今回のはエミーの研修も兼ねてるんだから!」
「あ、そ、それでぶっつけ本番……! スパルタが過ぎませんかな!?」
「ゴブーッ!!」
「ギエピー!! と、止まれーっ!!」
その時!
エイミーの瞳が緑に輝く。
これはAフォンが演出を増幅し、キュピーンと輝いたように見せているのだ。
※『おーっ!!』『目が光った!!』『と思ったらゴブリンが止まった!』『停止の魔眼だ!』
そこに駆け寄っていって、あたしがゴブリンをぶん殴って倒す。
「今回は魔眼だけど、実際に武器を使って戦うのも練習して行こうな」
「わ、わ、私に自らの手を汚せと!?」
「悪役みたいなこと言ってんなー」
※『いいキャラ過ぎるw』『持っている力は強力なのにw』『しかもオーバーアクションで楽しい』『可愛くてムチムチ』『推せる』
いいじゃんいいじゃん。
人気になってきてるぞ!
あたしは今、強力なライバルを育てているのかも知れない!
まあ、そのライバルから熱視線を送られていたりするのだが。
「じゃあ、俺が敵をぶっ倒すから、その手伝いね。でもカメラはエイミーをメインで撮るから。Aフォンよろしく!」
Aフォンが応答して、ピカピカ光った。
こうして、教員宿舎ダンジョン一階を移動することになる。
本来なら入ってすぐ階段なんだけど、それがダンジョン化によって通路の奥深くまでずれてしまっているのだ。
ということは……二階以上に、ダンジョンのコアが存在するってこと。
確か、最初にダンジョン化の兆候があったのが204号室だったはず。
「204号室ですな」
「おっ、ちゃんと事前の資料読んできてる! 偉い」
「うへへへへ、座学はバッチリですぞ」
「僕何も読んでなかったなあ」
「かざりはお前、だんだんぽやっとしてきてない!? 大丈夫か!?」
この三人でわいわい騒ぎながら、しかし主役は魔瞳エイミーでこの配信をお送りするぞ!
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