第93話 明も襲われてたけど……?
がしゃどくろ、それでも流石に大きいなあ。
「小さくなれない?」
『もがー』
おっ、みるみる小さくなる。
気がついたら、デフォルメされた手のひらサイズの骸骨がいた。
あたしの手の中でちゃかぽこ踊る。
かわいいかもしんない。
「あらー、かわいい!」
「それ、退魔師が連れてたやつですか? へえー、退魔師を倒すと別の退魔師が奪えるんですね」
リーシュさんがはしゃぐのを背景に、鳥乃さんの言葉で状況を理解した。
あたしが退魔師を一人ぶっ倒した。
そいつは宇宙さんが連れて行ったから、妖怪との契約が切れてしまったのだ。
野良になったがしゃどくろに、あたしが接触して契約した。
そういうこと?
『もがもが』
そうだそうだって言ってる。
事務所の机の上で、がしゃどくろを放流した。
トコトコ歩き回り、ノートパソコンのボタンを不思議そうに押している。
あ、ちょうどアワチューブを見てたところだったらしく、配信が繋がった。
これって……明!?
やっぱり結界に包まれてて、何者かと戦ってる。
間違いなく、襲撃してきた退魔師じゃん!
だけど、あたしの時とは様子が違う。
周辺から次々に、釘みたいなのが飛んでくる。
これを明は最小限の動きで的確に回避し、一本をカバンで叩き落とした。
それをキャッチして、新たに釘が飛んできた方向へと、振り向かずに投げる。
『ウグワーッ!?』
悲鳴が聞こえて結界が砕けた。
なんだなんだ!?
「呪詛返しとかじゃないですかね……?」
「かざりちゃんすごーい……!」
多分そういうことだと思う。
釘を投げられてくるのを冷静に見切って、退魔師の移動先を先読みした。
それでキャッチした釘を相手が移動する前に投げ返し、痛打を与えたということだ。
チャット欄が大盛り上がりしてる。
そりゃそうよねえ。
アイドルみたいなふわふわした衣装のかわいい娘が、キレッキレの動きで攻撃を回避、反撃一発で状況をひっくり返したんだから。
『ふうー、びっくりした! えーと、今のはですね、殺気を感じた方向にそのまま相手の攻撃を返す技で、こっそり練習してたんですけど』
いやいやいや、アイドルみたいな見た目の配信者がやる技術じゃないでしょ!
術を失ったぶん、空気を感じ取る力を徹底的に鍛えたっぽい。
そこに同接やら何やらが乗って……。
『ぐがあああああああ!!』
配信の中で咆哮が響く。
一つ目一本足の巨人が現れて、明目掛けて飛びかかってくるところだ。
どんなに大きな人だって、あの一本足に踏みつけられたらひとたまりも無いだろう。
回転ってリスナーにスパナマークが付いてる。
これ、モデレーター権限が与えられてるってこと?
その人が『一本だたらだ!』とコメントしていた。
なるほど?
踏みつける一撃を、明はギリギリで回避した。
そしてエコバッグを取り出す。
これをぶんと振り回すと、当てられた一本だたらが『ウグワーッ』と悲鳴を上げて飛び退いた。
なんか今、ガキーン!! ってすごい音しなかった!?
一本だたらが口を大きく開いて、そこから炎を吐き出す。
炎はあやしい紫とか黄色のオーラを纏ってて、言うなれば毒入りの炎みたいな!
だけど、これを明は、エコバッグから抜いたお野菜で一閃した。
野菜の種類はズッキーニ!
それが、呪われた炎を切り裂く!
その先にいた一本だたらまで、顔面に一直線のダメージ痕ができて、『ウグワーッ!』と叫んだ。
そしたらもう、明が眼の前まで接近してるのだ。
どういう原理なのか、明がひとっ飛びで一本だたらの頭の上まで到達した。
ズッキーニの先端から光が伸びる。
それが妖怪の頭頂からつま先まで、一刀両断。
『ウグワワワーッ!!』
妖怪、消滅!
痕には肩に釘の刺さった退魔師。
完全に戦意を喪失している。
『あわわわわ、ば、化け物……!!』
そりゃねー、持てる手段全部を正面から粉砕されたんじゃねえ。
ほんと、明強くなってるなあ。
戦い方にも華がある。
武人のそれって感じがするな。
「うーん、だけど……遊びがないね……」
「あっ、リーシュさんがなかなか手厳しいことを……」
「だってアイドルなのに、武者みたいな戦い方したらだめでしょ。かざりちゃんはカワイさでも売ってるんだし、もっと可愛くて強い方が後々効いてくると思うな!」
「そんなもんですかねえ?」
鳥乃さんはピンと来てないらしい。
だけど、あたしはなんとなく分かった。
「今の明のは、退魔師だった頃と地続きの強さだもんね。せっかくきら星の名を継いだわけだから……もっと意味の分からない強さを身につけないといけない……。そんな気がする」
「そう、それ!! サンダーいいこと言うー!! かざりちゃん、確かに伸びてるけど登録者50万人になったところで伸びが急に遅くなったでしょ。ここが、常識と神秘の壁なんだと思う。モンスターから人になったオークの私は分かる!」
リーシュさん、妙にダンジョン配信への造詣が深いなあ。
「だって、私のお父さん、きら星はづきの配信に出てくるもん、モンスターとして」
「ええーっ!?」
「なんですってーっ!!」
驚くあたしと鳥乃さん。
そ、そんなことが……。
「そこで一撃の余波を浴びせられて、頭が冷えて、人間界を見たら凄いことになってて、こりゃあモンスターやってられないぞって言うんで部族のみんなを引き連れてこっちに合流したの。その後、市民権を勝ち取るよう政治家に働きかけて、あとは近所の人達と仲良くなって行儀を良くしてね……」
今ではリーシュさんのお父さんは、市議会議員をやってるそうだ。
オークの!
市議会議員!!
すごい話を聞いてしまった。
「で、お父さんが言うには、きら星はづきはもっとずっと意味がわからなかったって。でも、確実に何千万、何億という人の生き方、考え方に影響を与えたって。多分そのためには、当たり前だとたどり着けないじゃないかな」
それはまた……随分ハードルの高い話だなあ。
いけるのか、明……!
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