第84話 学園、影の理事長
ついに、僕の踊ってみた動画が投稿された。
ちゃんと概要欄に、ダンス振り付け:ウルヴァリン狼我って書いてある。
狼我さんありがとう~!
「異様に再生されてるな……。なんでだろう」
「明日奈が超かわいいからじゃね? 配信のキレッキレな動きから一転して、明らかに可愛いダンスができてるし……。あれ? このウルヴァリン狼我って放課後プレデターズの? あ、その体が元の花咲里明日奈のものだもんねー」
ファノリーさんがなんか一人で納得した。
「まあ、なんか色々な人に助けてもらって、今の位置にいるみたいな……」
「だよねー。こうやってうちらと普通に学園生活してるのに、明日奈ったら見る度にどんどんビッグになってくんだもん」
「いやいや、登録してくれる人達のお陰なので……」
「謙虚~!」
感心されてしまった。
その後、この間のカラオケに行った三人も集まってきて、僕の席でわいわいとお喋りした。
全然、女の子の流行みたいな話にはついていけない……!
だけど凄く気を使われて、専門用語とか流行語が出る度に軽く説明してくれる。
女の子って親切だったんだなあ……。
なお、これは後で花咲里さんに聞いたら、この学校が特別らしい。
ものすごく厳格な審査を通らないと入学できないらしくて、学力以上に人間性が問われるとか。
そ、そんなところに、入れ替わっただけの僕が入って良かったんだろうか!?
途中で僕が男だとバレてしまって、学園を追い出されてしまうのではないだろうか……?
お、恐ろしい~!
なんかそんな不安を感じたので、学園の北側にある運動場に面した東屋で、一人瞑想することにした。
本日は雨。
6月に入ってから、雨が増えてきた。
流石に雨天だと、昼休みに外に出る人は少ないもんね。
東屋は僕一人だろう。
……と思ったら、東屋の中向かっていく人影がある。
小柄で上品な服装のおばあさんがトコトコと入っていった。
誰だろう?
学園の関係者の方かな?
僕は見たことない。
そろーっと東屋を覗いてみたら、スラッとした長身の綺麗な女の人がいたのだった。
あれえ!?
さっきのおばあさんは!?
彼女はカバンからタブレットを取り出すと、それを設置。
何かの動画を流し始めた。
なんだろう……?
あっ、僕のショート動画だ!
女の人がリズムに乗って、ぴょこぴょこ跳ねたりし始める。
うひゃー!
ぼ、僕を見て踊ってらっしゃる!?
「ひえー」
「!?」
彼女がハッとした。
そして僕と目が合うと……。
フッと笑った。
「いい? あなたは何も見ていない。見ていないわ。いい?」
「あっはい」
「良い返事だわ、かざりさん。我が校の生徒であり、魂の入れ替わりが発生してもなお、その高潔さには僅かな陰りもない。あなたは我が校に相応しい人だわ」
「あ、ど、どうも……!」
「……それで、私、あなたの動画を何度も見ているのだけどちょっと質問いいかしら? この……ここからここに至るダンスの動きが……」
「あっはい! あの、ここはですねえ」
僕も東屋に入って、彼女にダンスの動きを教えたりなどする。
言語化して人に教えると、なんか自分の中でもしっくりくるものがあるなあ。
「ありがとう。とても参考になったわ。やっぱり時代に合わせて、魔法も新しい動きを取り入れていかないといけないものね。私の魔法行使は銃刀法違反になっちゃうから、銃を使わないやり方を身につけないと……」
「物騒なことをおっしゃってる……。あ、あの、あなたは……?」
「ああ、ごめんなさい」
彼女は微笑んだ。
「私はシヅル。そうね……この学園の、影の理事長みたいなものね。安心して頂戴。学園関係者だから。生徒の皆さんが学習をしている時に、私だけダンスの練習をするというのも気が引けたので、こうして雨の日の昼休みに活動したのだけど……」
それから、彼女はポン、と僕の肩を叩いた。
僕よりも背が高いから、目線が上を向くことになる。
年齢が良く分からない、エキゾチックな美女って感じの人だ。
「あなたは我が校の生徒に相応しいわ。自信を持ってね。応援しているわ、かざりん」
「えーっ!? ぼ、僕の活動のことも知って……!?」
シヅルさんの後ろに、扉みたいなのが出現する。
アンティークな作りなんだけど、その隙間から光が漏れている。
「時代があなたを望んで、そしてあなたは誕生したのでしょう。かざりん、あなたには大いなる使命がある。それはきっと、もうすぐ分かることでしょう。それまでの間、学園でしっかりと力を蓄えてね。それから、ダンスのレッスン楽しかったわ。ありがとう」
手を振って、彼女は扉の奥に消えた。
扉も消えた。
ま、ま、魔法だーっ!
湊くんの魔法もすごかったけど、シヅルさんのそれは本当に、魔女が使う魔法って感じだった。
学園の影の理事長……?
始業式の時、僕はまだ明だったから分からないけど……。
彼女が壇上で挨拶したんだろうか。
まあ、学園関係者に、中身が入れ替わっててもうちの生徒だよってお墨付きをもらったからいいか。
様々な謎が増えた気がするけど、とりあえず悩みだけは完全に解消した。
「あれ? 出てったと思ったら戻ってきた! どこ行ってたの明日奈? トイレ? 声かけてくれたら一緒に行ったのにー」
ファノリーさんに突っ込まれて、そんなバカな、結構長い間東屋にいたのに……と思って時計を見ると……。
僕が教室を出てから、五分くらいしか経過してないのだった。
な、なんでー!?
魔法かー!?
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