第76話 お宅拝見葉月ママ
ついに、葉月ママのご自宅に伺う日が来た。
緊張でガチガチになりそう。
武蔵野市にあるそのお宅は、一軒家だった。
黒くてシックな外観!
建物も大きい気がする……!!
庭もある!!
葉月ママ、稼いでいるんだなあ……。
ガレージがあって、そこに二台車が停まっている。
片方はファミリー用の大きい車で片方が小さくて痛車だった。これ、葉月ママのでしょ。
うわー、アニメキャラっぽい女の子がどーんと貼ってある……。
ガレージを見ていたら、呼び鈴を鳴らす前に、扉が開いた。
葉月ママが立っている。
なんで分かったの!?
「ようこそーかざりちゃーん!」
「あっ!! ど、ど、どうもー! ほ、ほ、本日はお招きにあずかりまして!」
「緊張しないでー。今日は私一人だから」
さあさあ、と手を引かれて家の中に引っ張り込まれてしまった。
東京にこんな広い家が!?
と思うくらい中身も広かった。
眼の前にひろーい板の間があり、そこから色々な部屋にアクセスできるっぽい。
京都にある退魔師の総本部に近い大きさじゃないだろうか。
なんでこんな凄い大きさをしてるんだ。
「これはね……。私が昔活動してた時のグッズとか資料とかも保管してあるので、実は半分くらい倉庫なんです」
「ほえー、そうだったんですね!」
ちょっと安心した。
つまり、実際に使われている部屋は半分くらいということで……。
「本日はリビングで、原作鑑賞会を行います! これのために、私の旦那さんや娘チャンと息子チャンは部屋に入ってきたらダメーって伝えてあります!」
「おおーっ! ほ、本格的……! あとお子さんいたんですね」
「います!! まだ小学生ですけどねー。旦那さんとは付き合う前からの付き合いみたいなのはそこそこ長かったんですけど、イギリスにいる時にそんじゃあ婚約しましょーってなって。一緒に帰ってきてからなので」
ぺちゃくちゃお喋りしながら、葉月ママが作業をしている。
取り出してきたのは、お手製パンフレットだった。
「私が作りました」
「凄い!!」
「ふっふっふ、昔からこういう方面だけ器用なんです。さあさ、一緒に見ていきましょー。あ、配信するんでしょ? カザトモのみんなも一緒に見よ見よ」
ここで葉月ママがアバター姿に変身した。
ピンクの髪をした、エプロン姿の女の人。
「ど、どうしてエプロン姿に……?」
「むふふ、家庭的なところをアピールするためです」
「なんでですか!?」
そしてやたらとくっついてくる。
あー、いい匂いがする~!
「僕の意識が持つ間に、は、配信スタート~!」
『了解しましたマスター。配信をスタートします』
「最近のAフォンは受け答えもちゃんとしてるんだねえ。さすが、私の研究がフィードバックされた新型」
「えっ!? 葉月ママ、Aフォン開発に加わってたんですか!?」
「私、こう見えてイラストレーターが副業で、本業はダンジョン学の研究者なんです」
えっへん、と胸を張る葉月ママなのだった。
なお、密着してる隣で胸を張られているので、僕がぎゅーっと押し付けられる形になりますね。
「うわーっ」
※『あっ!! かざりんが葉月っちにむぎゅられているところから始まったぞ!!』『えっ!? 葉月きらら!?』『葉月ママじゃん!』『超大型コラボだぞ!』
「みんなー。こんきらー。葉月きららです。本日のプログラムはこちらでーす。ミツリンプライムかネチョネチョ動画、どちらも500円で見られるので、興味があったらみんなで見ましょー」
「わっ、葉月ママがこんきらって言ったら、コメント欄がピカピカ光った」
「いけないっ、権能を使ってしまうところだった」
権能とは一体……?
さてさて、僕らは大きなソファに腰掛けて、大画面のプロジェクターに映し出される作品を見るわけだ。
※『MVじゃなくて、それが主題歌になってるアニメを見る辺りが独特だよな』回転『でも、歌への思い入れって意味では正統派だな。かざりんは型から入るタイプだし』『今日は何話見るんだろう』
「えっと、どれくらい見るんですか?」
「んー、私のリミットもあるので、三話! 三話見て、それからプログラムは渡すから続きを自分で見てみてね!」
「あ、はい! ありがとうございます! うわーっ、世界に一冊のオリジナルのプログラム」
※『なにっ』『葉月っちお手製の一冊しか無い配信のしおり!?』『とんでもねえ物を受け取ったな……』『よく分からないけどプレミア凄そう』『どのタイミングで見始めるのー!』
「あっ、ごめんなさい!」
僕はチャット欄のみんなに手を振った。
「カウントダウンします! 五つ数えたらスタート! いい? 5!」
※『4!』モチョチョ『3!』御座候『2!』
「1! 始まりー!」
こうして、アニメを見始める僕なのだった。
今季話題のスラップスティックラブコメ『並行世界と繋がった俺の部屋が、異世界ギャルたちのたまり場になっているらしい』を見ます!
なんだこれ……?
内容は、奥手な男子高校生の世界樹が、ひょんなことから自分の部屋と異世界が繋がり、色々な世界から多様なギャルがやって来ては彼の部屋でわちゃわちゃする話。
「こ、こんな非現実的な……」
「かざりちゃんだって中身入れ替わったでしょ?」
「あっ、それも非現実的でした」
※『まさにおまいう』『世の中何が起きるか分かんないよね』今川『真剣にアニメを見る葉月っち、昔と変わらんでおじゃる』『親子のようだ』
「まあ昔はね、私もね、若かったですからね……っと、ここ。終わりにOP流れるから」
「終わりにオープニング!?」
「今の時代のアニメのパターンなの! ほら来た!」
これが……これが人気のある歌かあ!
凄く耳に残るメロディとフレーズだ。
そして歌が終わった……と思ったら、また続きが始まった。
「Cパートだよー!」
「異世界に帰ったと思ったエルフの娘が戻ってきた!」
わいわいと盛り上がったところで、次回予告になった。
やって来た女の子が学校に転校してくると。
クラスの人数が減ってた田舎の学校で、だんだんクラスメイトが増えてくわけだね。
なるほど、なるほど……。
「葉月ママ、ちょっといいでしょうか」
「はい、なんだねかざりちゃん」
「えっと、最初から樹くんには幼馴染の女の子がいますけど、ここに最初の異世界ギャルである、エルフのリーヴィーさんが来るじゃないですか。男子として、女子二人がいると凄く困ると思うんですけど」
「ふっふっふ、どんどんカワイイ女子が増えて、その間で翻弄される男子。フクザツな幼馴染女子の心情……! これを楽しむ作品なんです」
「な、なるほどー!」
知らない世界だった。
※『未経験のかざりんにはいきなり強烈だったのでは』『だがこの主題歌は人気だからな』『ぜひ歌って欲しい……!』
「な、なるほどー!! 僕、頑張ります! あ、二話目始まった」
同時視聴、がまだまだ続くのだった!
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




