第75話 明らかに退魔師以外の才能がある
「声よっ」
「あっ耳が幸せ」
「音程がずれても不快感がまったくない」
「やっぱ明日奈……前世の退魔師以外のことは超一流になれる才能があるよ……」
「うっ」
歌が終わって帰ってきたら、四人に凄く褒められた。
そして僕に退魔師の才能が無いだってー!?
確かに今は、法術も魔法もなーんにも使えないけど。
撫子さんが目を潤ませながら、僕の手をギュッと握る。
「い……今まであなたが歌ってみた配信をしてなかったのは、世界の損失だよ……!! やるべき! 私が応援するぅ」
「でも歌ってみたって権利関係難しいんでしょ? どっかの配信で聞いたことある……。配信するだけでも厳しい~」
美紅さんがこめかみに両手の指を当てて、左右に揺れた。
「配信してもリスナーへのサービスで、そんな儲かるわけじゃないって聞いたなあ……。あと歌ってみた動画も」
身内の人がたくさんいるファノリーさんは、流石に詳しい。
「そうなんだー」
「本人だけが他人事だし」
楓夏さんがケラケラ笑った。
そりゃあまあ、実感というものがですね、全然湧いてこないので。
「でも、配信で歌う前に権利関係の話とか聞けて良かった。みんなありがとう~」
「どういたしまして!」
「かざりんまだ歌うっしょ?」
「カラオケボックスならー、歌ってもタダタダ!」
うわーっ、なんかせがまれてしまっている!
だけど僕には弱点があったのだ!
そういうのを全然知らない!
この間葉月ママと同時視聴したアニメくらいしか知らない!
こ、これは……。
世界を広げていく時が来たのかも知れない。
「やっぱり歌を歌うなら、その歌の背景とか、タイアップしてるならその作品も見て世界をよく理解したほうがいいと思うんだ」
僕が告げると、四人がおおーっとどよめいた。
撫子さんがまた目をうるうるさせて、
「そういう歌に真摯なところ、素敵……。推せる……」
もしやこの人、カザトモなのでは……。
いや、だろうなあ。
楓夏さんと美紅さんもその可能性が凄く高い。
「うちらは応援することしかできないけどさ。手伝えることあったら何でも言ってよね!」
「そうそう! 私達は運命共同体。キュピーン」
「もっちろん! うちと一族も全面バックアップします! 権利関係はその辺り詳しいのがいるから、連絡しとくね」
「な、何から何までありがとう~!」
僕は周りから支えられて、今ここに立っています!
ということで、カラオケが終わり……。
相談しやすいところはどこかなと思ったら、僕の中で葉月ママと湊くんが浮上してきた。
どっちがいいかな。
ここはベテランっぽい葉月ママがいいかな。
「あの、葉月ママ。相談したいことがあります。歌ってみた配信をしてみたいんですけど、その歌の背景とかを全然知らないから教えてもらえると嬉しくて。葉月ママが忙しいのはよく分かってるんですけど」
そういう事をSNSで連絡したら、すぐに音声通話で返信が!
『うおー! 私はかざりちゃんがやる気になってくれて嬉しいよう! まあねー、私もオタクですからねー。そういう人種ほど上っ面だけなぞられても~みたいなひねくれた感じでね、受け止めるもんなんですね。おっとデュフフ、ついつい早口に。じゃあ勉強会やろう。我が家へご招待します』
「葉月ママの家に!? あ、でもお仕事忙しくないですか」
『忙しい! だけど仕事だけで人生を埋めちゃったらもったいないからね! 楽しいこともしていかないと! ほどよい息抜きは、むしろ仕事のクオリティを上げるんだよ~。ということで、我が家の住所を送りまーす。まあ、実家はかざりちゃんの住んでるのと同じ駅にあるんですけど』
「えーっ!」
こうして、葉月ママの剛腕によって今後の予定が決まった。
僕と葉月ママで、コラボすることになった。
前のはあくまでお互いの家とか事務所から、同じ時間に繋いで同時配信するコラボだったけど。
今回は僕が、葉月ママの家に行くことになるのだった!
うわー、緊張する!!
葉月ママが何をした凄い人なのかは知らないけれど、どうやら本当に凄まじく凄いということだけは分かる。
同じ名前の人を探っても、出てこないからなあ。
きら星はづきっていう教科書に乗っていた配信者は知ってるけど、今の葉月ママとは全然配信スタイルも違うし、それにあんなとんでもない偉業の数々、本当にできたの……?
脚色されてるんじゃないかと疑う僕なのだ。
さて、コラボ配信までの間に、僕もやっておくことが色々ある。
一人で頑張っても限界があるから、リスナーに助けてもらおう!
「こんかざー! きら星かざりです。今日はみんなにお願いがあって配信してます」
※『こんかざー』モチョチョ『こんかざ!』『こんかざ~』大判『どしたん? 話聞こか?』
「実はですね、月末に大型コラボがあるんですけど……」
※『大型コラボ!』『なんだなんだ』『誰だ!?』
ざわつくチャット欄。
既に、葉月ママを候補者に上げてる人がいる。
僕はあえて触れないぞー。
「えっと、秘密です! それで、その人に色々教えてもらうんですけど、内容は僕があんま詳しくないゲームとかアニメとか、ボーカロイド曲とかそういうので。これだけは押さえておいた方がいいよーっていう、そういうの教えてくれたら嬉しいです!」
※『なるほどー!』『それは確かにうちらの出番だぜ!』『片っ端から挙げてくか!』『履修しやすい内容のがいいよなあ』『推しに推しを布教できるチャンス!』
みんな頼もしいー!
その協力に絶対見合う配信だって僕は自負しているのだ。
だって、僕と葉月ママのオフコラボ。
オンラインじゃなく、オフラインでコラボするんだから。
こうして僕は当日まで、大いに勉強することになるのだった。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




