第70話 作戦会議だ!
よく考えてみたら、放課後プレデターズ加入一時間後にサーバルさんとぶつかったのがあたしだった。
あの地下アイドルグループ、尖った人ばっかりだったけど、サーバルさんはぶつかり稽古みたいな感じで最初に強く当たって、その反発感でアイドルの素養を見極める人だったなあ。
もっと他にやり方あっただろ。
お陰で放課後プレデターズは新規加入メンバーが次々潰れていた時期があったらしい。
やりすぎじゃないか。
なお、あたしは全力で弾き返し、サーバルさんがニヤリと笑ったのが記憶に新しい。
女子格闘技か何かなのか?
そんなサーバルさんが、あたしに会いに来る。
いや待て!
今は使ってない、ラーテル花咲里のアカウントに来たってことは……。
「この人、あたしの入れ替わった配信見てないな……!? これは……これはまずい!!」
「上鳴くん、どうしたのですかな?」
「うむ……ありていに言えば、かつて世話になった先輩が来る。俺に会いに……。だが、俺ではない俺に会いに来る。すっごい癖強な先輩がだ」
「おお……。聞いているだけで面倒くさそうな」
「おわかりいただけただろうか」
分かり手の恵美奈。
こいつも流石にアーカイブは見ているだろうから、あたしがラーテル花咲里として上鳴明の中に入ってることくらいは理解しているだろう。
だが、万一知らなかった場合、下手に開示をして今後の人間関係に支障が出ては困る。
なぜなら、あたしは恵美奈を割と親友だと思っているからだ!
「で、明……じゃない、明日奈と会わせないといけないんだけど、あいつはその記憶は無いから、どうやって対処させたもんかと思ってな……」
「ふむふむ……。記憶喪失のようなものですな。では、詳しい有識者から話を集めて、動画と一緒に予習してもらうしかないのではないですかな?」
「それだ!! それで行こう!」
「フフフ、事態解決ですな? それでは今日はオカ研に付き合ってもらいますぞー! 最近よく直帰していたではありませんか」
「そう言えば……。しゃあない! 今日は付き合うわ」
そう言うことになったのだった。
「夏に是非一緒に行って欲しいオカルトスポットが!」
「なになに、旧魔月城跡……? 訪れたホラー系配信者が次々行方不明に……? ほんとう~?」
「まあずっと昔の話ですからな! 単純にダンジョンに巻き込まれただけかもですけど。いやあ、ダンジョンのある時代にオカルトをやっていくのは大変です」
「ダンジョン自体がオカルトだもんなー」
部活でそんな話をしつつ、オカルトスポットを巡り、他のオカ研部員もやって来て、お茶とお菓子をいただきながら彼女たちのオカルト談義を聞いた。
そこで何故か、あたしをどのオカルトスポットに連れて行くか、誰が同行するかという話で盛り上がり……。
最後にあたしの横にいた恵美奈がメガネを外してカーっと睨むと、部員たちが一斉に「じゃあ恵美奈が」「先輩が」ということになった。
なんだなんだ。
いきなり催眠術掛けられたみたいになって。
「秘密ですぞ」
まあいいか。
恵美奈からもらった方策を手に、帰宅した。
本日は事務所での仕事はなく、明も直帰。
「明、話がある……」
「僕の家に当たり前みたいに入ってきたなあ。一応体は女子なんですけど」
「自分を見て興奮したりはしないわよ!」
「そう言われるとそうだけどー」
「今回はあたしがお茶を持ってきた。これを飲みながら話そう。あたしの体を使っている以上、避けては通れない試練がやって来たぞ!」
「何さ、大げさだなあ」
「聞いて驚け。あたしの地下アイドル時代の先輩、サーバル才藤さんがやって来るぞ! 初手からあたしをかわいがりしてきた強烈な女だ!」
「ほえー」
「ほえーってお前! 数々の新人アイドルがこのかわいがりに耐えきれず潰されていった、パワハラの権化みたいな女だぞ?」
「僕の退魔師の頃は日常みたいなもんだったし」
「あっ、こっち方面の耐久力が凄く高いやつなんだった」
なお、サーバル才藤に悪気はない。
悪気がないから問題なのだ!
でもまあ、明なら大丈夫か……。
「一応、放課後プレデターズのステージとか動画で見ておいてよ。あとサーバル才藤は今何やってるか知らないけど……」
ふと、スマホの検索画面、グググールでグググってみた。
サーバル才藤……。
才藤才華。
女子地下格闘技に現れた新星……。
女子地下格闘技~っ!?
「花咲里さんが仰け反ってる! 壁に頭ぶつけて壊さないでね。敷金返って来なくなっちゃう!」
「細かい男だなー」
「体は女だけどね」
「あたしの先輩だった人が、アイドルから女子格闘家への華麗な転向をしてたからびっくりしたんだよ」
「花咲里さんだって、僕の体を使って今は退魔師配信者してるでしょ?」
「あっ!! 全然人のことは言えなかったわ。というか……才藤さんから見たら、今のあたしはひらひらした可愛い服を着て、リスナーたちに可愛いを振りまき、あのきら星から名前を受け継いでガンガン伸びてるアイドル配信者ってことになるのか」
「僕がアイドル……!? ハハハ、ないない」
「無自覚系かこいつ!! とにかく! あの人は、あたしが大きくキャラ変したから伸びたと判断してるはず。これを媚びとか、時代と寝たとかそう判断する女だ、あの人は。売れるとか売れないとか関係ないの」
「ストイックというか、武道家みたいな人だねえ」
「放課後プレデターズはそういう変人の集まりだったの。あたしを入れて五人。そういう癖強女子を集めてたけど、金銭の問題で不本意解散したってわけ」
「なるほどぉ……。じゃあ、僕はその才藤さんと会えばいいんだね? 分かった。予習しておくよ」
「おっ、素直じゃん……」
「僕の親に会う時、花咲里さんには世話になったからね。僕も義理を果たす! あと一応花咲里さんも来てね。二人で会おう」
「うし、二人であいつを迎え撃つか!!」
「尊敬する先輩なのか、敵なのか、どっちなの……?」
困惑する明だった。
両方だよ!
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