第69話 なんか登録者数伸びてる!!
「と……登録者が五万人になってる……! なんでだ……!?」
「えー、良かったじゃない」
台所で朝食を作っている明が、適当な感じで答えてくる。
こいつも図太くなったなー!
「いやいやいや! 最近の増え方がおかしいんだって! なんかあたし、バズるようなことやった!? バングラッドさんと手合わせ配信とかしたのが効いたのかな……。だってあれは実践格闘だし、マニアックでしょ。やっぱ配信者って言ったら歌とか踊りとかゲームとか……」
「率先して拳で戦ってる花咲里さんがそれ言う? はい、朝ごはんはフレンチトーストだよー。この間ね、葉月ママから教わったの」
「明がどんどん女子力を高めてる……!! 既にあたしを三周くらい追い越して、まだまだ差を付けていっている気がする!」
「何いってんのー。ほら食べよ食べよ。学校あるんだから。いただきまーす」
「い、いただきます」
こいつ……!!
上鳴明が完全に女子化しつつある!
ついにきら星かざりのアーカイブは、男女入れ替わりよりも他の配信の再生数の方が上回り始めたらしいし。
今の明に興味があるリスナーがどんどん増えて、こいつを応援しているのだ。
配信って言うのはリスナーの応援が大きな影響を与えるもので、ダンジョンだけじゃなく配信者まで変化していくと聞いたけど……。
明のリスナー、カザトモが望むきら星かざりになりつつあるってこと……!?
こ、このままではお互い、相手の体に定着してしまう!
「あ、今日は僕、帰りが遅いから。夕飯は別で食べてね」
「外泊!? あ、あ、あんたまさか! 男と……!?」
「葉月ママと二人でアニメの同時視聴配信するの。事務所でオンラインのコラボだけどね。僕ってそういうの詳しくないでしょ。そしたらママが『かざりんに優しく教えてあげようねえ』って言って」
「はえー」
我ながら間抜けな声が出てしまった。
そ、そうよね……!
明は男なんだから、別の男になびくことはない……。
なんだ……!?
あたしは安心しているのか?
まるで幼馴染をNTRされそうな男みたいな心境じゃないか。
「それじゃ、いってきまーす!」
「おう、悪い男に気をつけてな……」
「なに言ってるの花咲里さん! 僕が通ってるの女子校なんだからそんなのないってば!」
絶対そう言うの、フラグなんだよなあ!
女子化していく上鳴明!
どうなってしまうんだ……!!
とか言ってたら、自分も大変なことになってるのを思い出した。
「登録者五万人なんだった。うおっ、五万千人に増えてる!! なぜだ!? なんでだーっ!!」
スマホを使い、原因を探る。
ちょっとぐらい遅刻したっていいだろう。
今はこっちのほうが大事だ。
「あ、これか! 配信教室のこだま先生で、あたしについて触れてる!! 退魔師の件の渦中にいる配信者、サンダーマスク……!? 注目って言われてる。こ、これかーっ!!」
バングラッドさん経由と、こだま先生経由で、あたしのチャンネルに新規リスナーが流れ込んでいたのだ!
と……とんでもないことになっとる……!!
「これ、何か配信をして返したらいいのか? いやいや、だけどあたしは今は上鳴明の体だから、バトルしたりゲームすることしか……。うむむむむ」
唸っていたら、恵美奈からSNSでメッセージが来た。
ホームルームが始まってる!?
いかーん!!
慌てて登校するあたしなのだった。
一限の途中で教室入りし、教師から嫌味を言われつつ席につく。
いやあ、すみませんねえ。
こっちも一大事だったんでねえ。
「明くん、どうしたのですかな? 遅刻なんてらしくありませんぞ」
「休み時間になったら聞いてくれ。ほんと、聞いて欲しい」
「おおっ、弱っている明くん!! はあー、セクシーですなー。なんでも聞きますぞー」
ということで、休み時間になった。
恵美奈がメガネの奥から、興味津々な視線を覗かせている。
「……ということで、あた……俺のチャンネルの登録者が激増してしまったんだ……。こんなことは初めてで、何をやったらいいか分からない……」
「いつも通りにすればいいのでは? だって、みんな明くんの噂を聞いてやって来たのでしょ? だったら普段通りの自分こそ一番期待されてるんじゃ?」
「あ、そうか。言われてみれば確かに……」
素の自分を求められているということ?
それは初体験過ぎる。
ずっとアイドルを演じ、自分なりの上鳴明を演じてきたからなあ……。
「明くん、今までずっと素でやってきたんですし」
「素じゃないよ!?」
恵美奈にそう思われていたのかーっ!!
ショックを受けるあたしだったのだが、その日受けたショックはこれで終わりじゃなかった。
最後の最後に、最大級のがやって来たのだ!
SNSに連絡が入る。
あたしは二つアカウントを持ってて、一つはサンダーマスク。
もう一つは元のあたし……ラーテル花咲里のもの。
なんと、この二ヶ月ずっと何もなかったラーテル花咲里のアカウントにDMが送られてきたのだ。
『やっほー』
『元気してる?』
『してるよね。色々あって、有名になってきてるじゃん』
『今度そっちで巡業するから、ついでに会お?』
『後輩の仕上がりをこの目でみてやるから』
『サーバル才藤』
「サ、サ、サ、サーバルさん!?」
放課後プレデターズで、あたしの先輩だった地下アイドルのサーバル才藤さん!!
彼女があたしに会いに来るだってーっ!?
どっちのあたしに会いに来るの!?
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