第67話 意外と魔女が多い
修行配信が終わり……。
まあ、僕は散歩して熊をこらしめただけだったんだけど。
元の家に戻ってきた。
「流石に夕飯をごちそうになるのは悪いので……! 帰ります」
「うん、あたしらの話、親にしてないんじゃない? いきなり食べる人増えたら迷惑でしょ」
「確かに……」
「ママは影で俺達のことを怒るな」
ふーむ、と唸る双子。
こうやって並んでいると、顔立ちとかよく似てる気がする。
二卵性双生児だからそっくりじゃないんだけど、ほむらさんと湊くんは持ってる雰囲気が近いんだ。
「また今度、ちゃんと挨拶に来るね。お土産とかも持ってくるので……」
「ああ。ぜひ来てくれ」
再来の話をしたら、湊くんが明るい表情になった。
「こいつ……露骨過ぎる。他の女にはなびかないくせに、なんで中身が男になった花咲里明日奈にデレデレしてるのよ」
「あたしとしても大変複雑な気分……!!」
女子と中身女子の二人にじろじろ見られても、湊くんはどこ吹く風なのだった。
さて、リビングでお茶をいただいて、それでお別れということになった。
ほむらさんがお茶とお菓子を用意してる時、扉がガチャッと開いた。
「ただいまー!! あれ? 知らない靴がある! お姉ちゃんとお兄ちゃんの友達かー?」
誰だろう……!?
「妹だ」
湊くんが簡潔に説明してくれた。
「まだ小学四年生なんだが、既に魔導書を使いこなしてる。我が家四人目の魔女だぞ」
「あ、魔女が四人いるって言ってたもんね! ……あれ? でもお母さんは魔女じゃないんでしょ? だったら一人目の魔女って」
「パパだ」
「な、なるほど……!!」
湊くんの家が凄い家であることは分かった。
話を聞いている間に、靴を脱ぎ捨てたらしい妹さんがバタバタ奔ってくる。
廊下との間にある戸が開き、その娘が顔を出した。
髪をおさげにした、元気そうな女の子だ。
まんまるな目がくりくり動き、部屋の中を見回した。
「いた!! お兄ちゃんとお姉ちゃんの友達!」
「あ、どうもー」
「おー!」
僕が小さく手を振り、花咲里さんは元気に挙手した。
「こんにちはー! 七咲泉でーす!」
彼女は両手で挨拶してから、バタバタ走っていった。
リビングの隣に和室があって……。
和室に扉が三つある……!?
なんか部屋の構造がおかしくない?
「ここ、パパが社長さんに頼んで改造してもらったんだってさ」
湊くんの説明だ。
和室の扉の一つに、泉ちゃんが飛び込んでいった。
バタバタ音がするから、着替えているんだろう。
「空間が歪んでるのよねー。ほい、お茶! 私はお茶を淹れるのが上手い!」
「ほむらは何を自画自賛してんの。どれどれ……? うわ。本当に美味しいじゃん」
「でしょー」
「あ、僕もいただきます。確かに……なんか凄くお茶の香りがいい気がします」
「かざりんの方も分かってんじゃんー」
嬉しそうなほむらさん。
湊くんは「あんま褒めないでくれよ? ほむらが調子に乗るから」なんて言っていた。
案の定、ほむらさんがムキーと怒って二人でわあわあ言い合っている。
「あーっ、まーた喧嘩してる!」
『喧嘩するほど仲がいいって言うわよねえ!』
泉ちゃんが、金色の本を抱えてやって来た。
その本も喋るんだ……!?
赤い本と青い本もやってきて、三冊がわいわいぺちゃくちゃお喋りを始めた。
その横で、ほむらさんと湊くんが何やら言い合ってる。
泉ちゃんが自分でお茶を淹れて、お菓子をパクパク食べ始めた。
「お友だちってことはー。二人とも配信してるんですかー?」
「分かる?」
花咲里さんが相手をしてくれるみたい。
僕はお菓子を食べるのに集中しよう。
この焼き菓子美味しい。
「分かるー! だって二人とも、イケメンと美女だもん! スマホ持ってる子なら、ちょっと顔が良かったらPickPockで動画投稿とか当たり前だよー」
「そうかー。あた……俺もそうだったなあ……。そこでアイドルの動画を見て憧れて……、何を間違ったかこんなところに来てしまった」
花咲里さんが遠い目を!
僕が経験してない世界の話だなあ。
「お姉さんはどうなんですかー?」
「あ、僕、えっと、花咲里明日奈です」
「自分のこと僕って言う女の人だ! うちのクラスにも一人いるー! それでそれで、明日奈さんはー?」
泉ちゃんが目をキラキラさせた。
そこに反応するの!?
「ええとね、僕はずっと修行ばっかりで、なかなか芽が出なくて……それでも必死に頑張ってたら、ある日突然アイドルみたいになってしまった……」
「なるほどー! ……もしかしてお兄ちゃんの部屋に飾ってあるアクスタ、明日奈さんの?」
「あるの!?」
「おいこら泉! なぜその事を知っている! 鍵が掛かってるだろ!」
「うっふっふ! 泉は何の魔女だか忘れたー?」
「力の魔女めー」
なかなか外の家では聞けない会話だなあ……。
三冊の本がふよふよ浮かんで、僕の前までやって来る。
『ほら! 魔法が使えないんですけど、なんか凄い力を感じません?』
『あら本当だわ! これはあれね! 破邪の力ね! パッシヴで発動するやつだから、育ってくるとあたしたち一発で浄化されるわよー!』
『うおおおお、冗談じゃねぇぜーっ!!』
女の人の言葉遣いだけど、金色の本の声は男の人のものだなあ。
喋る本にも色々いるのだ……。
その後、泉ちゃんの学校の話とか、僕らの配信の話とか。
色々喋っていたら日が落ちてしまった。
そろろそ帰ろうということになり、僕らは三人に見送られてエレベーターに向かった。
ちょうど、エレベーターが上がってくるところ。
それが開くと、中にはツインテールでエプロンドレスの女の子が乗っていた。
「あれー? お客さんー?」
「パパ!」
「あ、パパが帰ってきちゃった」
「パパー!」
「パパ!?」
「どゆことー!?」
三人の反応に、花咲里さんが目を見開き、僕は大混乱!
この女の子がパパ!?
そしてすぐに、花咲里さんが何かを思い出したようだ。
「黒胡椒スパイス……!! 伝説のバ美肉魔法少女配信者じゃん……!! リトルウィッチ・デュオって、スパイスの子どもだったの!?」
「ど、どゆことー!?」
「あんたにはあとで説明するから!!」
花咲里さんは、スパイスさんと十分くらい話し込み、どうやらSNSのフレンド登録をしたみたいだった。
本当に活動的な人だなあ……。
なお、僕のSNSフレンドも、ほむらさんと泉ちゃんが追加された。
友達が増えると、なんかテンションが上がるよね。
こうして僕らは湊くんの家を後にした。
花咲里さん曰く、
「配信業界最高の魔女と知り合ったんだからね! これすっごいコネよ!!」
電車の中でずっと興奮していたのだった。
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