第66話 サンダーが修行中ですが僕は散歩します
「サンダーが頑張っている」
「頑張ってるね」
炎と雷がびゅんびゅん飛び交っている。
※『意外な才能だったな』『名は体を表しすぎだろw』『なんとなく予想はできてた気がする』
「ねー。でも僕には魔法の才能が無かったのでした」
※『かざりんドンマイ』今川『元気出してでおじゃ』
「なので、これから異世界を散歩しようと思います」
「なにぃ!? なんで!?」
※『いきなりw』『アクアがびっくりしてて草』『草』
「いやあー、その、このままだと撮れ高が……。せめてお散歩動画にシフトして、カザトモを楽しませいたいと」
「真面目だなあ……。分かった、付き合うよ」
※モチョチョ『基本的にかざりんは真面目なんだよな』『何事にも真剣だよね』『そこが好き』『チュッチュッ』モデレーター『(目の絵文字)』『ひっ』
アクアさんが僕の横を歩きながら、色々レクチャーしてくれる。
「異世界は結構危険なんだ。世界全部がダンジョンみたいなもんなんだぞ。だから気をつけて歩かなくちゃいけない」
「なるほどー。どんな風に危険なの?」
「例えば……」
話の途中で、崩れた家の前を通りかかった時。
そこから黒い塊が飛び出してきた!
『もがーっ!!』
「うわーっ、大きな熊に角が生えたみたいな生き物!!」
「早速出てきた! こういうのがあちこちにいるんだ! 廃墟になった街は、モンスターの巣になってるってことさ! まあ、あの練習場周りは私達一家の縄張りだってモンスターも理解してるから、近づかないんだけど」
「あー、棲み分けできてるんだね……」
そうすると、この熊も僕たちが縄張りに入ってしまっただけなんじゃないだろうか。
『もぐぐぐぐ……』
唸りながら僕らを睨む熊。
今にも襲いかかってきそうに見えるけど……。
アクアさんを警戒してる?
「一階、練習場に入ってきて私と戦ったことがある。水で押し流してやったら逃げてった」
「あー、格付けが終わってた!」
「ってことでかざり、やってみる? 今なら同接いるでしょ。危なかったら助けるから」
「えーっ、僕が!? やってみようかなあ……」
おずおず前に出る。
熊はこれを見て、ぐわーっと立ち上がった。
『もがー!!』
威嚇してくる!
※『かざりんVS異世界熊!』『デモンストレーションマッチって感じか!』『がんばれー!』
「がんばりまーす!」
声援を受けながら、僕はエコバッグを構えた。
うん、エコバッグしか持ってきてないな……。
ここに入れてたお弁当は食べちゃったし。
僕と熊で、一瞬だけ睨み合う。
そしたら熊が、ぐわっと仕掛けてきた。
えーっ!?
僕、仕掛けられるような隙あった!?
※回転『かざりんの特徴として、全く強そうに見えないというのがあるからな……』『仕草もおどおどしてるし』『本気モードでも雰囲気がふんわりしてるしね』
「そっかー! じゃあ仕方ないかも! あちょ!」
熊が振り下ろしてきた爪を、エコバッグを振り回して迎撃する!
バチーンッ!!
すごい音がして、熊の腕が跳ね上がった。
『もがっ!?』
熊がびっくりしている。
慌てて、もう片方の腕を叩きつけてきた。
僕はこれも、踏み込みながらエコバッグで払う。
『もがーっ!』
熊はバランスを崩されて、くるくる回って倒れた。
その間に、僕はぴょんとジャンプ。
転倒した熊のお腹の上に立ち……顔の上にエコバッグをぶら下げた。
「降参する?」
『も……もがー……』
熊、戦意喪失だ!
「じゃあこれで終わり! 僕みたいに見た目が弱そうでも、なんか強かったりする人がいるから気をつけてね」
『もが……』
廃屋に帰っていく熊だった。
※『優しい』『優しい』『優C』『普通に戦う人間の動きだったな……!』『むちむちキュートなかざりんが、本気で動くとキレッキレの動作になるんだよな』『絶対ダンスとか上手い』『上手そう!』
「ダンスか……。いいな……。見てみたい」
アクアさんが不穏なことを言った。
そういうこと言うと実現しちゃうからね……!?
あーっ、社長から『やろう!』っていうメッセージが来ちゃった!
リアルタイムで配信見てたなあの人~!!
練習場まで戻ってくると、花咲里さんがダダダダダッと駆け寄ってきた。
「あんた、ついにダンスやる気になった!? よっしゃー!! 教えてやる! しっかり教えてやるからね!!」
「うわーっ、サンダーの方がやる気だー!」
「当たり前でしょー! 人の体使ってんだから、いつかはダンスやらせようと思ってたんだからね! よし、まずはショート動画を目標にダンス練習をする。曲の選別もあるし、これは忙しくなってくる……」
「サ……サンダーは自分の配信もあるでしょ?」
「そっちは仕事。こっちは趣味!! 別腹だから問題ない!」
「ひぃー、すごいバイタリティ!!」
「楽しみだ……」
アクアさんがなんだかニコニコしてるし!
フレアさんは流れについていけなくて、きょとんとしている。
「何の話か分かんないけど……。練習はこれで終わり? そんじゃあみんな、帰るわよー! この窓を通ると、こっちと向こうの時間の流れは同じなのよね。だから、あっちはもう夕方のはずだけど……。ご飯食べてく?」
お食事のお誘いを受けてしまったのだった!
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




