第65話 やっぱり魔法の才能は無かったですね!
「私は誰にも魔法を使える可能性があると思ってる」
魔法少女アクアになった湊くんが、真面目な感じで語りだした。
「なるほど」
※『ほうほう』モチョチョ『かざりんが魔法を!?』今川『確かに魔法を使えそうな姿ではあるでおじゃ』
「配信であれほど強力なパワーを発揮できるんだ。きっとかざりんには魔力があって、魔法も使えるはず……。そうだろうマリンナ!」
『んー、全く魔力は感じませんねえ……。こっちの男性は強い魔力がありますけど』
「な、なんだってー!!」
※『なんだってー!』『なんだってー!!』『なんだってー!』『そ、そんなことが!』『そんなことになるわけが!』『そんなこと、なるわけない!』
「そうなってるじゃん!!」
フレアさんが突っ込んでくれて場が収まった。
サンダーがこれを見て、ずっとゲラゲラ笑ってる。
「すげー!! 自然に展開が漫才に寄ることあるんだ!? コメントも絶対、ツッコミ待ちだったよな?」
「そうだったんだー」
※モチョチョ『おっと、これはネタを潰してくる天然……!』『恐ろしい女だぜかざりん……』
実際に、魔法の使い方をアクアさんからレクチャーされてやってみたんだけど……。
何も出ませんねえ。
花咲里さんのボディだと、魔法というか術は使えないっぽい。
前の僕の体が魔力が強いっていうのは、ちょっと驚きかも知れない。
退魔師には、魔力みたいな力を測る仕組みが無いからね。
「えー、では魔法の修行みたいな配信はこれで終わりということに……」
「終わらない! 終わらないって!」
僕が配信を打ち切りそうになったので、アクアさんが慌てて止めてきた。
魔法少女姿だとちっちゃいから、僕の胸の下くらいの背丈だねえ。
かわいいね。
「ほうほう、魔法? こんな感じ? あ、拳が雷を纏ったわ」
「何あんた、天才!? なんですぐできんの!?」
向こうではこっちと真逆の展開が起こってる。
花咲里さんが、一瞬で魔法を体得したらしい。
実際、法術と魔法は同じものだろうし、それが使える僕の体なら性質の近い魔法は使えるだろうなあ。
「今までも、音ゲー風にHIT狙ってた時、電撃が走るみたいなエフェクトは出てたんよね。だけど、意図して出せるようになるってことは……武器のレアリティ以上の破壊力を叩き込めるってことじゃん? うっわ、便利~!!」
「物騒なやつねー」
「あんたに言われたくないなあ」
「なんですってー!! おっしゃ、じゃあ模擬戦やろうじゃん! サンダーそっち。私こっち」
「おや? サンダーマスクとフレアさんの試合が始まりそう……」
「見物するか……」
目的を失ったらしいアクアさんが、ちょこんと体育座りをした。
僕もその横で体育座りする。
※『かわいい』『あまりにもかわいい』『姉妹じゃんw』
同い年なんですけどね!
「そもそもこの空間ってなんなの、アクアさん」
「あ、そうか。そこまで説明してなかったね」
眼の前では、炎と雷がぶつかり合ってる。
うわー、花咲里さん腕を上げたなあ。
どんどん飛んでくる炎の弾丸を、次々に撃ち落としている。
「ここはファールディアっていう異世界なんだってさ。伝説の配信者、きら星はづきが発見し、それをきっかけにこの異世界にいた異種族が、私達の世界に移り住むようになった」
「あ、ちょっと教科書でやったかも」
「うん、授業に出てくると思う。ファイヤー・アンド・ウインドの社長もオーガでしょ? この世界からやって来た人だよ。ダンジョンは最初、このファールディアから溢れ出してくるものだとされてたけど、後々の研究でそれが否定されてる。ここ以外にもたくさんの世界があって、いろいろな世界から侵略の意図を持って入り込んできているものらしい」
「ダンジョンに意思があるの!?」
遠くで、ドカーンっ!! と大きな音。
「爆裂火球を丸ごと相殺するなんて、やるじゃん!!」
「飛び道具ばっかでずるいぞ!!」
※『おお、どっちにも集中できない!』回転『いま来た。ダンジョンに意思というか、明確な悪意があるってのはよく言われてるな。それそのものが小規模な侵略者だって言うのが今の定説らしい』『背景のバトル、眼の前のお話、チャット欄の解説……忙しすぎる配信だ』
「ま、ファールディアはそういう世界の一つだったってこと。でも、今はもうここから侵略してくるとかないんじゃないか? 多分、ここの地域にいた異種族は丸ごと地球にやって来ちゃったし、それ以降は大規模な移住の話は無いっぽいし……。確認されている、ファールディアとの窓口は、もうここしかないし」
「そんな凄いところにいるんだ、僕! 驚きだなあ……。世界は広いなあ……。あ、そう言えばお弁当を作ってきたので……」
「ほんと!?」
エコバッグからおにぎりを取り出す。
「ちゃんとビニール手袋をして握ったから、潔癖症の人でも大丈夫!」
「いや、素手で全然良かったんだけど……」
※『おやあ? アクアからじっとりとした温度感を……』モチョチョ『いいぞーこれ』『女の子同士の匂わせはなんぼあってもいいですからね』
アクアさんが男の子だって知ったら、チャットにいるみんなが大変なことになりそうだ……。
こうして僕らは、フレアさんとサンダーの試合を見ながら昼食にするのだった。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




