第63話 魔女の屋敷は謎のマンション?
「フレアとアクアの家か……。つーか、なんであたしら電車で移動してんの?」
「僕たちの配信が溜まってきて、社長がそれの編集とか切り抜きで忙しいからだよ。あと、新しいグッズも考えているみたいだし」
僕たちは今、電車に乗って湊くんの家に向かっているのだ。
異世界と繋がっている修行場があるという話を聞いた僕が、花咲里さんに話したところ……。
「凄い撮れ高じゃん!! 異世界でしょ!? 行くしか無いって!!」
ものすごく前向きになっていた彼女に押されて、じゃあお邪魔しますと連絡することになってしまったのだ。
『ちょうどパパが出張中だからな。いると絶対にパパが出てくるから、このタイミングしか無かったんだ』
と、湊くんは妙にパパさんを恐れているような……?
まあいいや。
僕は細かいことは気にしないようになって来たから、言われる通りお邪魔するだけだ。
「普段こっち行きの電車なんか乗らないから新鮮~。小学生の頃の遠足以来じゃない?」
「そう? 僕は小学校の頃は京都にいたから分かんないなあ」
「それよりあたしの釣り配信とバーチャル配信見た? あれでまた登録者増えたんだけど」
「見た! すごかったー。僕の体をあんなに自由自在に扱うなんて……。花咲里さんは僕以上に僕をやれる才能があるよ」
「なんかこう、その褒められ方は複雑な気持ちだなあ」
電車が進むごとに、どんどん車内の人は減っていく。
それに、特別快速で来たはずなのに、この沿線に入ってからは各駅停車になってるし……。
「東京って感じじゃない景色になってきた……」
「そうなの? あたしあんま東京から出ないから分かんないんだけど」
なんていうか、凄く地方都市っぽい!
退魔師は仕事のためにあちこち行ったりもするので、僕は関東圏以外の街もよく見ていた。
東京にもこんなところが……。
なぜか僕は一度もこっちに来たことが無いんだけど。
「えーと、この電車の終点が二人の家らしいよ。配信者の人がたくさん住んでるマンションだから、何をやっても大丈夫だって」
「へえー、そんなところが……おっと」
声をひそめる僕ら。
だけど、車両の中には片手で数えられるくらいの人しかいない。
人払いの結界で人が減った……!?
わけではなく、普通にこの沿線はまるごとベッドタウンなので、どんどん人が降りていった結果みたい。
電車から降りると、凄く……凄くレトロな駅に到着した。
「おわーっ」
「おおーっ」
二人でしばらくぼーっとした後、地下を通って改札へ。
もう、何から何まで、僕が知ってる普通の駅じゃない。
で、外に出たら普通に大きなビルがあったりしてホッとした。
「ええと……駅から見える青いマンションだそうだけど……。あ、あれだ」
湊くんから送られてきた写真と照らし合わせる。
間違いない。
こっちのは空から撮影したものだけど、地上から見ても、うん、まあなんとか分かる。
「アクアってあいつ、何気にポンコツなんじゃない? ってかなんであたしの体を使ってる明とアクアが仲良くなってんのよ。いや、あたしだってフレアと仲良くなってるけど」
「なんでだろうね? やっぱり、配信者の先輩として放っておけなかったのかも」
「そうかなあ……? あのアクアってやつ、絶対むっつりスケベだぞ」
「そ、それは分かんないよー! それに年頃の男子ってみんなそんなもんでしょー!」
「あんたも巨乳好きだもんね」
「ち、ち、違う~!」
いけない!
僕が圧倒的に劣勢だ!!
話を変えなくては!!
「そ、そういえば、えーと、うーん……」
ニヤニヤする花咲里さん相手に、上手い話題が思いつかないまま……。
僕らはそのマンション前に到着していた。
雲一つ無い青空よりも青く、星一つ無い夜よりも明るい青。
不思議な色だ。
入口にインターフォンがあったので、湊くんの部屋番号を押してから……。
『はい』
「僕です。かざりです」
向こうでバタバタ音がした。
『なになに!? 中身が変わった方のかざり来たの!? 私に話させなさいよー!』
『うるさいぞ、どけほむら! おりゃあ!』
『ウグワーッ!? お、お前、姉を投げ飛ばすとはーっ!!』
『ぶるあーっ! んマスターァーッ! 体術も鍛えねばならんようだなぁーっ!!』
『ふっふっふー、うちのマスターは肉体的にも強いですからねぇ』
賑やか~!!
思わず、花咲里さんと顔を見合わせた。
「あいつら、家の中でもまんまなのね」
「フレアさんってそう言うタイプなんだ? ちょっと花咲里さんに似てる……」
「似てない」
ということで、扉が開き、僕らはエレベーターに乗り込んだ。
一気に最上階まで向かうんだけど……。
……?
一瞬、誰かに見られたような。
風神号が突然配信モードになって、『誤動作でした』と言ってまたスリープになった。
Aフォンが誤動作する?
なんか、途中の階にとんでもないものがいたりしない?
まさかね。
一気に最上階まで到着。
築三十年以上経ってる古いマンションだそうだけど、いい感じでリノベされてて見た目は古く感じない。
「昔は霊合教がここに支部を作ったりしてたらしいわよ。だから事故物件になってたって」
「えーっ、どこにでも痕跡があるなあ、あの人達!」
降りてすぐの部屋が湊くんの家だと言うので、呼び鈴を鳴らす。
そしたら、別の部屋の人がちょろっと顔を出してまた引っ込んだ。
髪がぴょんと跳ねた女の人だったような……。
「あれは……配信者ね! ダンジョン配信以外は外出しない生活をしてるタイプの人よ!」
「そ、そうなんだ……?」
配信者ってそう言う人多いの!?
最上階には五つの部屋があって、そのうち四つに配信者が住んでいるんだそうだ。
あれ?
じゃあ下のフロアは?
「おう、いらっしゃい」
考える暇もなく、湊くんが出迎えてくれる。
「やっほー」
後ろにはこの間事務所に来た女の子もいる。
彼女が魔法少女フレアだったんだ?
「ようこそ、魔女の屋敷へ。ここには、普段は四人の魔女が住んでるんだ」
「あとママね」
「四人!?」
意味深な話をされながら、僕と花咲里さんは家の中へと足を踏み入れるのだった。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




