第62話 ぶち抜け、無敵チート!
『良いかサンダー。貴様、若手の配信者と見たからベテランである我からアドバイスしよう』
「おっ、なんすか」
一触即発のこの場面で、何を言う気なんだこの鎧の人。
『これは撮れ高だぞ。突如、チート軍団の攻撃が始まる。立ち向かうのはルールに則った配信者二人。どうせ運営がすぐに処理するだろうが、その間は我らをリスナーに印象付けるチャンスとなる! 頑張るのだぞ!』
でかい手で、背中をバーンと叩かれた!
バーチャルなのにいってー!
だけど……!
「分かったぜ! つまりこれ、チャンスってことだな!! うおおお!! 知名度と好感度を上げるぜー!!」
※『おいバカ口に出すなw!』『それ言っちゃったらおしまいだろー!』『まあ、そこがサンダーらしいと言えばらしい』
しまった!
だけど、そんなことを考えてる余裕なんか無かった。
早速、異常に速度が上がったチーターが攻撃を仕掛けてくる!
ギラギラ輝く全身タイツに、髪の毛を逆立てたやつだ。
そいつが、目で追うのがやっとの早さであたしの周りを駆け回る。
「ひゃははははは~っ!! はええだろ! 追いつけないだろ! この俺の速さはバーチャル世界で誰よりも上だあーっ!」
「チート使っておいて偉そうなこと言ってんじゃねえ!」
いくら速かろうが、音ゲーの超高難度のバーと比べれば……。
「ヒット判定が!」
ガンッ!!
「ウグワーッ!? 当ててきた!? バカなーっ!!」
「見えるんだよ!」
ガンガンッ!!
「ウグワワーッ!! バカな、バカなーっ!! もっと、もっとスピードアップだ!」
「人間の!」 ガンッ! 「思考速度は!!」 ガガンッ! 「変わんねえんだから!!」 ガンガガンッ!! 「タイミングが!」 ガガガガンッ!! 「読めるんだよ!」 ガンガンガガンッガンガガンッ!!
「ウグワッウグワッウグワッウグワッウグワワワーッ!!」
スピードチートの奴は、最後はあたしの拳の雨にタイミングよく飛び込んでふっ飛ばされるだけの装置になった。
なんかこのチート、最初から飛び込む動作を取るとキャンセルできなくなるらしく。
「止まれ! 止まれ止まれ止まれーっ! お願い止まってえええええ! ウグワアアアアアアアアアッ!! 人間サンドバッグになっちゃうー!!」
とか言いながら、スピードチートは最後はあたしの連打を喰らい、空中に吹っ飛んでピチューンと消えた。
『アバターを砕いたか! 見事!!』
バングラッドさんが褒めてくれる。
※『サンダーいいぞー!!』『やっぱサンダーの戦いは打撃音が心地よくてな』『くせになるよねえ』
なお、バングラッドさんは三人のチーターと、互角にやり合ってる。
っていうか遊んでる?
光り輝く超威力の武器を振り回すやつを軽々といなし、巨大化チートを合気道みたいな動きで地面に転がし、攻撃回数チートを全て片手で受けきっている。
化物か!?
なんか、あたしの目指すスタイルの最上位にいるような人だな……!
「シンソクをやったくらいで調子にのんなーっ! おらーっ、無敵チートだ! 俺は最強タクヤだぞ!!」
あっ、今度は無敵チートか!?
動きは遅いが……。
カンッ!!
「俺のパンチが跳ね返された!」
「無敵チートだからな! ゲアハハハハ!!」
なんかゲラゲラ笑いながら、一見すると普通の防弾チョッキを着た男が銃を構える。
ガンガン弾丸を撃ち込んでくる!
あたしはこれを、拳で撃ち落とす!
「こっちは! ヒット判定! 見えやすいじゃん! でも無敵チートはヒット判定が……見えない……? 見えないのか……?」
「なんで弾を防いでんだよーっ!! ありえないだろー!! お前もチート使ってんじゃないのかーっ!!」
「無敵チート使っておいて他人に逆ギレすんなーっ!!」
言い返しながら、あたしは理解する。
こいつ、ヒット判定が見えないんじゃない。
防御する気が無いから、全身がヒット判定なんだ!
だけど、無敵なところにヒットを叩き込んでも意味が……。
なんて考えるのはあたしらしくない。
拳が輝き始めている。
バーチャル空間のアバターだって言うのに、あたしの拳のレアリティが分かった。
レアだ。
もうすぐSRになる!
「こっちも行くぜーっ!!」
「げはははは!! 無駄だって! やってみろよーっ!!」
無敵チートの全身を、殴る殴る殴る!
カンカン弾き返されるが、その反発を利用して殴るのを加速させる。
『条件を達成しました』
拳の上に浮かぶ文字がSRになった。
さらに殴る!
カンカン言う音が、ペシペシに変わった。
「あれ? おかしいな……なんか体が揺れてる……。俺は無敵なのに……」
無敵タクヤがちょっと焦り始めた。
「チートが働いてないのか? あの野郎、偽物売りつけやがって! こっちは小遣いつぎこんでんだぞ!!」
「お前、キッズか!!」
「キ、キッズ!?」
「親からもらった小遣いで他人からチートを買って無敵気取りとか、舐めてんのかって言ってんの!!」
「お、おまえーっ!! 殺す! 絶対に殺すからなーっ!! 俺はチートだから殴られても効かないし、でもお前は攻撃されたら死ぬしーっ!!」
無敵タクヤが俺に殴られつつ、どこからか巨大なロケットランチャーを取り出した。
それ、この距離で使う武器じゃないだろ?
「俺は爆発しても無敵だし! でもお前死ぬし! へい、ざーこざこ!!」
調子に乗ってそいつが言っている間に、あたしの打撃数がかなりの量になっていた。
『条件を達成しました』
拳の輝きが白銀に変わる。
浮かび上がる文字は、SSR!
そして放った拳が……。
ドムッ!!
「ウグワーッ!?」
無敵タクヤがぶん殴られて宙に浮いた。
「な、何が!? 今、無敵チートを破って攻撃が……!!」
「オラアッ!!」
ドゴッ!!
「ウグワーッ!? 届いてる! 攻撃が! ってか、バーチャルなのに俺の体が痛い! なんだこれ! 何が起きてんだよ! おい運営出てこい! どうなってんだよーっ!!」
チートを使って暴れておきながら、何か起きたら運営にクレームを入れようとする。
腐ってんなー!
「SSRなら無敵チート貫通できるんだな! だったら遠慮なしだ! オラララララララララララララ!!」
あたしの拳が!
蹴りが!
無敵タクヤの全身に突き刺さる!
「ウグワーッ!? 畜生! だったらこれだ! 死ねーっ!! チートロケットランチャー! 当たったらダメージ無限!!」
担いでいたロケットランチャーから弾が発射される。
だけど、おっせー!!
あたしの拳が的確に弾を捉えて、打ち消した。
「うっそー!?」
「嘘じゃねーッ!! キッズ分からせてやるぜーっ!! おらおらおらーっ!!」
ここからは……トドメの連打だーっ!!
無敵タクヤは打撃の嵐を受けて宙に浮いてるから、回避もできない。
「ウグワッ! ウグワーッ!? ウグワワワワワッ! ウグワッ!? ウグッウグッウグッウグッ、ウグワーッ!!」
※『うおおおおおリアル空中コンボだ!!』『なんで打ち上げられたまま空中で止まってんのw!』『きもちィー!!』『生意気野郎を撃破だぜーっ!!』
「オラアッ!!」
「ウグワーッ!? ひい、ひい、も、もう許して下さい……。痛い、痛いぃ……」
無敵タクヤが土下座してペコペコしたところで……。
運営が介入して、チート連中は全員BANされたのだった。
ずっと無双していたらしいバングラッドさんが、こっちにノシノシ歩いてきた。
『やるではないか!! 貴様、見どころがあるぞー!! そのうち我とやろう! ぜひやろう!!』
「……それって撮れ高ありますよね?」
『あるぞ!』
「やりましょう!!」
あたしはバングラッドさんと固い握手を交わした。
クジョーさんが「命知らずだねー」と笑っているのだった。
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