第211話 その名はAギルド
うぉっちもんさんからインタビューを受けることになっている。
そんなわけで、僕はお招きいただいて電車に乗り込む。
『目的地はAギルド関東本部ですね』
「うんうん。Aギルドなんていうのがあるんだねえ」
『はい。迷宮省は手広く配信者をサポートしますが、それはあくまで総合的サポート。それぞれの配信者に寄り添って様々な援助を行う互助団体が必要とされ、結成されました。それがAギルドなんです。公的機関と民間団体ですね』
「なるほどー」
実はうちの事務所もAギルドに所属はしているらしい。
ダンミーを使ったときのダンジョンの抽選に有利になったり、低金利での運営資金融資を受けたりできる。
なお、返却が焦げ付くと大変恐ろしい取り立てが来るらしい。
「ふむふむ……、僕は全然その存在に気付かなかったなあ……」
電車で向かった先は、いつも行っている都心と逆方向。
かなり大きなターミナルステーションだ。
ここにAギルド関東本部がある。
うぉっちもんさん、まとめてあちこちのインタビューもやってくらしくて、その中に僕もいるわけだ。
どれどれー?
「この駅、乗り換えで降りることはあるけど、駅から出たことは無いんだよね」
『マスターは何気に行動半径が狭めですからねー』
日傘を差して、ワンピースでデッキを歩く。
物凄く広くデッキが展開していて、下にある道路まで降りなくてもどこまでも歩いていけそう。
モノレールを見上げながらその下をくぐっていくと、ちょうど日陰になっていていい感じ。
「湿気だけはどうにもならないけどねー」
『ええ。この国の気候は我々Aフォンにとっても過酷です』
「そうなんだ! もしかして除湿機能とかがある?」
『我々は極めて強度の気密を保つ機構がありますね』
「へえー」
横にプカプカ浮かぶAフォンとお喋りしながら歩いていくと、なかなか目立つ。
「真夏に白いワンピースの美少女が……」
なんかそんなつぶやきが聞こえた。
『マスターがまた誰かの情緒を狂わせてしまった』
「そお?」
デッキから階段を下り、道路を渡ってその先へ。
二駅にまたがる大きな公園があって、その手前に官公庁が並んでいる通りがある。
その先にAギルド!
到着すると、それはなかなか大きなビルだった。
高さは8階立てくらいで、横に広い。
ひたすら広い……!!
『配信者が使える設備なども備えられているので、この大きさになっています。それぞれの配信者が収める年間会費によって、設備は維持、更新、運営されているそうですね』
「そうなんだー。じゃあ僕らも使わせてもらわないと損だね」
『マスターの場合は、事務所がまとめて支払ってくれていますから、表向きは見えませんからね』
見えないお金は、払ってても意識しなくなっちゃうものだよねえ。
どれどれ……?
ゲートをくぐると、ちょっとだけ空気が反発するみたいな感覚があった。
そして外だと言うのに、ちょっと涼しくなる。
「結界だね」
『結界ですね。Aギルドがダンジョン化しては元も子もないですから。かなり強固な魔法による結界が施されています』
「なんで僕に反発したんだろ?」
『感じる反発力は、その人物の実力によって異なるようですよ。伝説のきら星はづきともなると、通過するだけで魔法の結界が破壊されると言われていますので、永遠の名誉出禁なんだそうです』
「おもしろーい!」
あまり区別しないで、なんでもちょっと反発するようにできてるんだね。
屋内をくぐると、そこは吹き抜けの大きなホールだった。
天井がガラス張りで、光が差し込んできている。
冷房が寒いくらい効いているので、冷え性の人は一枚羽織るものを持ってきたほうがいいかも。
『マスターは寒くないですか?』
「全然。鍛えてますから」
日傘を畳み、エコバッグに入れ。
受付の人に挨拶をする。
「あのう、うぉっちもんさんと待ち合わせをしているきら星かざりという者ですが」
「ああはい。きら星かざりさん……。きら星かざりさん!? 本物!?」
受付の女性が立ち上がった。
こ、声が大きい~!
回りの人たちもこっちを見てるじゃない。
「ああ、失礼しました。あのきら星を襲名したということで、ギルドではあなたの話題で持ち切りだったんです。いえ、最初は襲名したくらいではまだ何者でもないだろうという話だったんですが。あなた以外にも、きら星を名乗る配信者はたくさんいたんですよ。誰もが泣かず飛ばずで引退されて行きました。だからこう……業界にはきら星という名前に対する諦めみたいなものがですね。ああ、うぉっちもんさんですね」
受付の人のお喋りをたくさん聞いてしまった!
目的地は第三会議室。
それなりに大きなところじゃないの?
ホールに掲示されている地図を見ながら考える。
「あ、この地図……Aフォンで映すと多層構造になるんだね。第3会議室は三階かあ……。施設がめちゃめちゃ多くて、これは迷いそうだ」
僕がうーんと唸っていると、
「あのー、きら星かざりさんですよね? ファンです! 応援してます!」
「きら星かざりさん、一緒に写真撮ってもらえませんか!」
「きら星かざりさん、握手して下さい!」
なんかたくさん声を掛けられてしまった!
なんだなんだー!!
みんな配信者なの?
向こうで受付さんが手を合わせて謝っている。
そうか、彼女のお陰で目立ってしまったか……!
というか、僕がそこまで名前を知られているとは思わなかった。
他の配信者さんと、そこまで交流したりしないもんね。
次々に人がやって来るので、ここから動けなーい!
そう思っていたら、向こうから緑色の小人がやって来た。
「迎えに来たのだー!」
「うぉっちもんさんだ!」
こうして、お迎えいただいて無事に合流!
インタビュー会場へと向かうことになる僕なのでした。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




