第208話 インターネットに強い弁護士がやって来た!
「ということで、私の学校のOBで弁護士と弱小アワチューバーの二足のワラジを履いている、唐草さんです」
「今すごい紹介をされた気がするナリ。ご紹介に与りました唐草ナリ。小職は法律とインターネットに強いナリ。御社の求める法務部門は任せて欲しいナリ」
なんか凄く素朴な顔のパーツをした男性が来た!
人間かな……?
人間なんだろうな……。
僕は拍手をしつつずっとそんな事を考えていたのだった。
だって、彼が人間だとすると、うちのスタッフで初めての普通の人間でしょ?
でも喋り方が変わってるし、頭身とか動きとかもマインをクラフトするゲームのキャラみたいだし……。
「ありゃ人間だな。間違いない」
「鎌崎さん、ほんと!?」
「ああ。異種族特有のオーラみたいなのがない。魔力も感じないし、本当に普通の人間だ。たまたまゲームキャラみたいな見た目をしてるだけだ……」
「そうだったんだ……!!」
凄くゲームキャラっぽい動きで、みんなに会釈して回ってる。
会釈してるのに顔だけはこっちを向いているので不思議!
「唐草ナリ。よろしくナリ」
「あっ、こちらこそよろしくお願いします。きら星かざりです」
「おーっ! あなたがかざりんナリ!? 小職はかざりんがかざりんになる前からチャンネルを追いかけていたナリ。このチャンネルあぶねーなー、絶対になんか法に引っ掛かることやるぞって思ってたら男女が入れ替わって、穏健でアイドル的なチャンネルになって安心したナリ」
「意外と縁が深かった!」
「法に引っ掛かるってなんだー!」
サンダーが怒った!
「こ、言葉の綾ナリ~。お助け~」
おお、サンダーに追いかけられて唐草さんが逃げていく。
ゲームのキャラみたいに手足をバタバタさせて、ピョーンとジャンプしたり加速したりしている。
サンダーに小突かれる度に赤く点滅してるぞ。
人間かな……?
その後、唐草さんのアワチューブチャンネルを見てみた。
「インターネットに強い弁護士の何でもチャレンジチャンネル……?」
登録者数は85人。
動画本数は1100本!!
「す、凄い……!!」
「毎日卵の丸呑みとかコーラメン◯ス風呂とかにチャレンジしているナリ。ぜひ登録して欲しいナリ」
「こんなに精力的に活動してるのに、どうして世の中の人に見つからないんでしょうね」
僕が純粋な疑問を口にすると、そこに鳥乃さんが入ってきた。
「それはですね、唐草先輩は過激な動画でちょこちょこアワチューブから凍結されてて、登録者数もよくゼロにリセットされたりしてるんですよ」
「政府の陰謀ナリ~」
「弁護士がそれ言っちゃいけないんじゃないですか先輩?」
なるほど、面白い人だった。
でも、弁護士としての腕は確からしい。
アワチューブの収益はほぼゼロなので、弁護士としてご飯を食べてるそうだし。
「今回は、小職のチャンネルがまたリセットされてご覧の有様になったので、大きな会社の庇護下に入るべく罷り越したナリ」
「この人、歯に衣着せずになんでも言うなあ」
社長も感心していた。
とにかく、変な人だけど付き合いやすそうで良かった。
この他、グッズ関係とモデレーター関係はそろそろ一人ずつでは間に合わないということで。
「そもそも、パラスくんが自主的に働きすぎててもう法に引っ掛かるので」
「小職が来たからには違法労働は許さないナリ」
「私、現状の働き方が気に入ってるんですけど」
「ダメナリ」
「なので、グッズのサポートで男性社員を一人雇いました。蠍宮くん」
「アンドロスコルピオの蠍宮です! よろしくお願いします!」
みんなで拍手で迎える。
爽やかそうな人だ!
下半身のサソリ部分も、ハサミを振り上げて挨拶してくれる。
サソリの後足で立つこともできるそうなので、省スペース化も全然可能らしい。
「リーシュさんのモデレーター関係、動画編集関係もそろそろキャパいっぱいなので、さらに一人編集要員を雇いました。みんなも知ってると思うけど……マンマーの魚花くん!」
「どうもどうも」
「あっ、色々サポートしてくれた人!」
僕ははっきり覚えているのだ。
人間の女の人と結婚したマンマーの方で、現地企業で働いていたはず。
動画編集とかできる人だったんだ!
「ヘッドハンティングされまして。頭が魚だけに……いや、ヘッドフィッシングかな」
「ハーハーハーハーハー!!」
魚花さんのマンマージョークで、唐草さんが床に倒れて痙攣するくらい笑ってる。
この人凄いなー!!
「ただの人間のはずの唐草さんが一番ダントツで濃いですぞ!! どうなってるんですかな!?」
なんか刑部さんは、唐草さんのキャラの濃さに危機感を覚えているみたいだった。
配信で存在感を奪われそう?
確かに……。
こうして八月からは、パワーアップしたファイヤー・アンド・ウインド合同会社でやっていくことになりました!
みんなよろしくお願いしまーす!
『種族の広がりがまた凄いことになりましたね。どこよりも多様性に富んだ企業と言えるのではないでしょうか』
「確かに~。でもみんなすごい人たちだよ」
人間を除くと、一人として同じ種族がいないもんね。
社長からしてオーガだし。
ちなみに法務部門の唐草さん、初日は自分の居場所を作った後、やることがなくなったらしく。
コインを縦に積み上げていく配信の撮影を始めている。
自由だなあー。
「先輩! アーカイブ確認してリスナー把握するとか、SNSでの反応を確認するとか、色々やることありますよ!」
鳥乃さんに小突かれて、積み上げたコインがバラバラと崩れていった。
「うわーっ、小職が五分掛けた積み重ねが~!!」
「仕事仕事! もう先輩はフリーじゃないんですから!!」
「まだ大学生なのに後輩が大変シビアナリ~」
事務所がさらに賑やかになりそう!
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