第205話 現場に急行してみよう!
うぉっちもんさん(元の姿)が運転する車に乗って、現場に急行する私たちです。
途中で迷宮省の車も合流したので、六両くらいの縦列になってガーッと走っていきます。
目立つ目立つ。
「僕の車だけ普通だから、むしろ目立つね……。なんで迷宮省は黒塗りなんだ? 今度調べてみようかな」
「うぉっちもんさんは毎日こうやって配信のテーマを探してるんですねえ」
マスターが感心しています。
『私としては、まだこの話をしていなかった事が意外なのですが』
「風神号くん、いい着眼点だね。それはね、僕は基本的にダンジョンそのものと関わることが少ない。取材にしても、ネット越しの通話、あるいは事後の本人に申し込む形になるからね」
『なるほど。迷宮省は本人ではなくダンジョンに来ますし、現場にいるものですからうぉっちもんさんとは接触しないと』
「そうなるねえ。もちろん、大罪勢である僕は常に迷宮省に監視されている。僕らが人類の敵に回ったら、恐ろしいことになるからね」
「ほえー、敵になるんですか?」
「僕としてはならないつもりだよ。子どもが学校に通ってるし、妻も社員たちも困るだろう? 基本、人間と共存する大罪勢は社会性が高いんだ。己を知っているがこそだね」
『お答えいただきありがとうございます。強い力を持つからこそ、己を律する……これは今後、ふうらいエレメンツでも使えそうですね。私たちは小規模配信者グループとしては異常なほどの戦力を誇りますから』
「そう! それだよ! 実は常々取材したいと思ってて、それで風神号さんから接触してくれたから渡りに船だったよ。これが終わったら、色々話を聞かせてもらっても?」
「僕は大丈夫でーす!」
『ご協力頂いている報酬という形でお答えします』
「風神号は固いなー」
『マスター、アバター化してるからって私のほっぺをむにむにしないでください~!』
「姉弟みたいだねえ」
大変賑やかに車が走り、例の小学校に到着。
警察がやって来ていたようですが、迷宮省の到着を見て警察官たちに緊張が走ります。
そしてパトカーに乗り込んで散っていきました。
車から降りた園宮さんが肩をすくめます。
「我々は警察からは嫌われていますからね」
人間の犯罪を取り締まる警察と、ダンジョン事件全般を管理する迷宮省。
お互いの領分がぶつかり合うので、仲が悪いわけですね。
「実は、迷宮省の権力は拡大し過ぎているということで問題提起もされているんだ。だが、その度に大きなダンジョン禍が発生し、民意は迷宮省の権勢を拡大させることに賛成。結果的に組織は強く大きくなり続けている」
「なるほどー。でも確かにダンジョンって無視できないですもんね」
うぉっちもんさんとマスターが、園宮さんの前で堂々とそんな話をしています。
園宮さんは涼し気な顔です。
「なに、迷宮省が暴走したら、配信者がこれを叩き潰してくれますよ。そういう仕組みになっていますから」
「そうなんだ! よくできてるなあ……」
どういう仕組でしょう!?
後で聞いてみましょうかね……。
そうこうしていたら、警察の聞き取りから解放されたPTAの皆さんがやって来ました。
そのうちの一人、お綺麗で背も高く、むちむちされている女性がマスターに気づきました。
パッと表情が明るくなります。
「かざりちゃーん!!」
「葉月ママ! お久しぶりでーす!」
駆け寄りざまにハグしそうな葉月ママさんを、マスターは寸前で見切ってちょっとだけ距離を取り、両手で握手をするに留めます。
できるようになりましたねー。
葉月ママさん、気付くと相手の懐に入っているような恐るべき歩法で近づいてきていたのに。
「やるようになったねー。また実力も上がってるみたいだし、配信見てるよー」
「ありがとうございます! 僕だけの力じゃなくて、みんなのお陰でもあるんですけど。それより葉月ママ、なんか凄いことに巻き込まれてましたけど……」
「あ、見てた? まさか引退したただのおばさんが、あんなことに巻き込まれるなんて! 世の中はまだ物騒だよねえ」
おばさんと言うには若々しいと申しましょうか。
周囲の奥様方と同じくらいの年齢らしいのですが、明らかに突出してエネルギッシュです。
さらに、この後に子どもたちが校舎から出てきました。
その中の、見知った顔の二人が葉月ママさんとマスターを認めると、猛スピードで駆け寄ってきました。
「ママー! かざりーん!」
「かざりんきてるの? ぼくかざりんすきー!」
葉月ママさんのお嬢さんと御子息です。
お嬢さんは小学校四年生だそうで、程よいところで立ち止まってマスターに挨拶を。
まだ一年生の御子息はダッシュとともに、マスターに抱きつきました!
こ、これはーっ!
「うわー、凄い勢いだー!」
「ぼく、かざりんだいすきだからね!!」
「あらまあこの子! かざりちゃんはみんなのものだよー」
「えー!」
そして、うぉっちもんさんと挨拶をする葉月ママです。
迷宮省の方々もそこに集まって、状況の確認などが始まりました。
そんな葉月ママは、他のPTAなお母様がたから尊敬の目を向けられています。
ちょっと事情を聞いてみましょう。
『あのう』
少年モードの私なら警戒心を抱かれにくいでしょう。
「あらかわいい!! ああ、葉月さんね……。彼女はほら、私たちの世代のスーパースターだから」
「私たちにはバレてないつもりでいるけど、バレバレよねえ」
「世界を救ったスーパーヒロインにして、今は普通のお母さんだもの」
「私たちの中の乙女が目覚めちゃうのよね、会う度に」
『なるほど、なるほどー。彼女の過去については詳しく存じ上げませんが、そんなに凄い方だったのですね』
私が発した言葉を聞いた奥様がたは、目を丸くしました。
そしてニヤリと笑います。
「後で真実を知ったら衝撃だと思うわよー」
「君とあの娘で配信してるの? 絶対見るからね」
「あー、気付くときが楽しみ」
な、何を楽しみにされているのでしょうか。
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