第126話 夏休み突入!
爽やかな目覚め!
夏休みがこれほど楽しみだったことがあるだろうか。
いや、ない。
僕は目を覚ますと顔を洗い、髪を梳かしてから昨夜の残りで朝食を済ませる。
そして早速夏休みの宿題。
日々の勉学習慣は、失うと取り戻すのが大変だからね。
特にあの学校では。
一時間ほど掛けて必要な範囲を終えると、僕は一息をついた。
「夏……休みだ……!!」
冷房つけっぱなしの状態で、窓を開ける。
流れ込んでくる、午前中の空気。
既に暑い!
「退魔師から解放されて、テスト勉強も倒した夏休み……。自由。圧倒的自由……!!」
僕はこのテンションのまま、『圧倒的自由!!』と題した配信を開始した。
「僕は自由です……!!」
※『こんかざ……どうしたいきなりw』モチョチョ『かざりんアバター忘れてるw!!』回転『生身ですよ生身w!!』
「そんなことはいいじゃないですか……」
※回転『そうか、夏休みだ! かざりんは夏休みテンションなんだ!』
その通り。
圧倒的な解放感をみんなと共有すべく、配信を始めた次第です。
※ベルっち『はえー、アバター系配信者が朝っぱらから生身で!! 時代が変わったなあ』『そんな時代は来てないw』『かざりんの素顔もめちゃくちゃ可愛いな……!?』『本当に女子高生だったんだ……』『ご尊顔を拝みつつ出勤』
「いってらっしゃーい! 社会人の皆さん、お疲れ様です。夏休みとかないですもんね」
※『あるっちゃあある』『数日間だけ……』『有給しか無い』
「ひえー。お疲れ様です!」
僕は働いている人たちをねぎらった後、これから何をしようねという話題になった。
「夏休みはですね、水着を着て海で配信するくらいしか予定がなくて」
※『ヌッ!』モチョチョ『聞いたぞ聞いたぞ!?』回転『いきなり切ってきたな、切り札……!!』御座候『かざりんの水着と聞いて駆けつけたでござる! 運転中なのでこれにて失礼……』
「あっあっ、この話、まだお知らせしてませんでしたっけ! えっと、葉月ママが水着をデザインしてくれたので、これをブラッシュアップして来週には配信できます! あと、新しいエフェクトを作っていただいたので、こちらもお披露目したい……」
※『いいっすね~』『生きる希望が生まれた』『社会人の俺達にご褒美をくれてありがとう』『学生のファンだっているぞ!』『かざりんどこ住み?』『やめろ詮索するなキッズ!』『それにしてもかざりん髪伸びたねー』『うんうん、前に生身見たときはショートボブだったのに』
「あー、そうですね。僕の髪、なんか伸びるのが早くて。肩くらいの長さになってますね」
※今川『いま来た。それはロブと言うでおじゃる。ロングボブの略でおじゃる。お揃いでおじゃるね』『公家と同じ髪型か』『やめろ想像しちゃうだろ』
「ロブ! なるほど勉強になります! それと、アバター被ってなかったの今気付きました。しかも顔洗って髪を梳いただけのすっぴんで大変恥ずかしい」
※『すっぴんマ!?』『透き通る肌』『以前より明らかにつやっつやになってる』『ちょっと顔が丸くなった?』『お肉がついてらっしゃる……』
「お肉はついたほうがパワーが出るし、体力もつくので大事だと思います。女の子って非力だと思ってたんですけど、案外パワフルですよね。サンダーとも数秒なら腕相撲で拮抗できますし」
※『あのサンダーと!?』『それは女子離れしたパワーと言う……!!』モチョチョ『かざりんの上腕二頭筋見てみたい!』
「えー、ちょっとだけですよー? ふんっ」
シャツをめくって肩を出したら、チャット欄が『エッッッッ』『白い肌!』『かわいい』『えちち!』と流れた。
その後、僕が力こぶを作ったら、チャット欄は『オー』『この盛り上がり』『ヒトコブラクダ!』『絶対俺より強い』と流れた。
なんかお分かりいただけたみたいだ。
「じゃあ、今日の朝の配信はこれで終わりです。僕は灼熱の下をお散歩します! みんなも熱中症には気をつけて、今日一日頑張ってね!」
配信終了!
僕はAフォンの前で、大の字になって転がった。
夏、サイコー!
夏休みサイコー!
生まれて初めての、何の義務も責任もない自由な夏休み!
カザトモのみんなとも話したし、残り一日は何をしたっていい。
「よし、散歩をしちゃおうかな……」
そこで僕は気付いた。
寝間着のTシャツのままで配信してた。
なるほど、みんなの反応がちょっと変わってたはずだ……。
でも、ルンテさんからも隣室のサンダーからも反応が無いということは、誰も配信を見てなかったのかも。
まあいいか、ということで、僕は着替えて夏の装いになった。
これは、学校のみんなと買いに行ったワンピース。
撫子さんたちが、やたらと僕におすすめしてきたやつ。
真っ白なノースリーブのワンピースに、麦わら帽子。
おお、すずしーい。
冷房のスイッチを切って、いざおでかけだ。
まだ男の頃の習慣が色濃く残っている僕は、日焼け止めという発想があまりない。
よし、コンビニに行って日焼け止めを買うのを最初の任務にしよう!
僕はアパートを出て、歩き出した。
すぐ前から、夏休みに入ったらしい男子中学生が歩いてくる。
そして僕を見て、ポカーンとなった。
なんだろう。
立ち止まって、目と口を開いて呆然としている。
夏の暑さにやられたのかな……?
「ねえ君、だいじょうぶ?」
「あ、は、は、はい。だいじょうぶです……」
「良かったー。日差しが強いからね。熱中症には気をつけてね」
「あ、は、はい……」
よし!
僕はまた歩き出すことにした。
そうしたら、後ろをついてきているAフォンの風神号が、
『恋泥棒……』
とかぼそっと呟いたのだった。
なんか混線して変な音声が紛れ込んだ?
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