第124話 当然のごとく期末テストは楽勝
明とファノリーがクラスメイトに教えてもらいながら、事務所でテスト勉強していたのは知っている。
頑張ってるなーくらいの印象で、あたしは配信や特訓の片手間のテスト勉強で、期末テストは楽勝だった。
うーん、元の学校よりも進みが遅くない?
だけど、お陰で配信活動に集中できるというね。
「事務所の欠点は、ここでダンスの練習が出来ないことだよね……」
下の階まで衝撃が伝わってしまう。
いや、そこまでうるさいことは無いけれど、大家さんからは「この間の退魔師襲撃事件みたいなのは勘弁してくださいね」と念を押されてるらしいし。
なので、屋上まで行ってそこで練習することになる。
狼我さんに頼んでスタジオ抑えてもらうのも、お金がね……。
男子のダンス、奥深いな……。
女子のダンスとは全く違った考え方で、男の体を全開に使ったやり方になっている。
スパイスさんから教われたのは良かったな。
専門のトレーナーを付けるにしても、あたしの収益だと現状厳しいし。
明がグッズ収入で圧倒的収益を誇っているのに対し、あたしはまだ広告収益頼みだからな……。
ガッシーのグッズ化企画が進んでいるそうだから、そこでガツッと売り上げて、そこのお金でトレーナーを雇いたい。
それこそ狼我さんがいいか。
「頼むぞガッシー!!」
『もが!』
ちっちゃいガッシーがあたしのポケットから顔を出して、敬礼した。
なので、今は自主トレ。
目指すところの手がかりを得たので、そこを目指して練習をするのだ。
夏休み何するものぞ!
ずっと特訓だ!
「あ、いたいた。サンダー。あのね、サンダーの水着衣装の話なんだけどね」
「は!?」
いきなり屋上に明がやって来て、なんかとんでもないことを言い始めた。
「なんであたしの水着……!? いや、確かに夏はそういうシーズンだけど、ニーズってもんがあるでしょ」
「多くの女子が待ち望んでいた、サンダーの水着をね」
「あんたねー! これ、あんたの体だからね? あんた、自分の体が水着になって、多くの女子たちの目に晒されるのは平気なわけ?」
「ちょっと恥ずかしくはあるけど、僕も葉月ママが水着衣装を作ってくれたので、その完成形をお披露目する予定だし……」
「な、なにぃーっ」
よく考えたら、明の使ってる体もあたしの体だった。
お互いに水着衣装配信をしても問題ないということか……。
担当してくれたのは、あたしのアバターも作ってくれてるアスパラ玄斎さん。
今、彼と通話が繋がっています。
作業画面共有というやつ?
怖くてマウスに触れられないんだけど。
『かざりんが水着を着るって言うじゃない。僕もね、いかに葉月きららとは言えど専業イラストレーターとして負けてられないんですよね』
「や、やる気だ……!!」
画面の中では、躍動的なサンダーマスクの絵が描かれていっている。
あたりを取ったと思ったら、あっという間にその中にディテールが書き込まれていく!
早い早い。
『ということで、僕も水着をデザインしてね、これは持ち込み企画なんですが、社長さんにはOKをいただいたんで本格始動していくつもりですよ。一週間以内に完成させてみせます!』
「は、はい! 楽しみにしてます! うおおーっ!?」
画面の中で完成していくのは、あたしの水着姿か!?
上半身が裸だ。
明らかに、今のアバターよりもムキムキしてる……。
細マッチョという域じゃない。
これを後ろから覗き込んだルンテさんと明が「おほー」と妙な歓声をあげた。
なんだその声!
さらに恵美奈もやってきて、
「どれどれ? 上鳴くんの新衣装……。ああーっ、いけませんこれは、ああーっ」
なんか腰砕けになった!
「はあ、はあ、年頃の男子の鍛え抜かれた体を白日のもとに晒すなんて……。刺激が……刺激が強すぎます」
恵美奈の声を聞いて、アスパラさんは我に返ったみたいだ。
『ハッ、そ、そう言えば確かに……。乳首はNGですよね。では隠しましょう』
「アスパラさん! 絆創膏張ればいいってもんじゃないですから!」
あたしのツッコミを受けて、アスパラさんがハハハと笑った。
『冗談冗談! ブーメランパンツからトランクス姿にして、雷の模様。上にはピッチリラッシュガード! 肉体美をダブダブの衣装で隠すのはもったいないですからね』
「おおーっ!?」
「サンダーってこんなに体大きくなってたんだ!」
ルンテさんと明が盛り上がり、恵美奈が「エッチ過ぎる~!! 体のラインが全く隠れてない!」とのけぞりながらも、ニヤニヤしている。
クソーッ、どういう状況だ!!
「いい? これはアスパラさんが悪乗りしてあたしの体を大きくしてるの! 完成品は元のサイズに戻る……戻りますよね?」
『フフフフフ……。一夏しか着られないレア衣装。パンプアップした肉体を見せつけたって、いいんじゃないですかね……?』
いかん!
この男、ムキムキのままで決行するつもりだ!
や、やめろー!!
──止まりませんでした。
完成したあたしの水着衣装に、社長は大喜び。
リーシュさんも鳥乃さんも、なんか「キャーッ」と歓声をあげて喜んでいる。
なんだなんだ!?
「うーん、これは夏の大型ライバル出現だね……。僕も負けてられないなあ」
「明は変な対抗意識燃やすなよ……!?」
こうして張り切ったアスパラさんにより、たった二日間であたしの水着が完成。
これを纏って、シルエットをお披露目することになってしまうのだった。
な、なんか妙に恥ずかしいぞこれ……!!
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