第122話 特訓だけではない、男がアイドル的に輝ける道を探るぞ!
スパイスさんがあたしの攻撃を回転しながら弾いて、その途中でフォームチェンジした。
服装がバレリーナみたいなのに変わった!?
七色に輝く光の弾みたいなのが四方八方から飛んでくる。
「うおおおおお!! なんだこれなんだこれ!?」
視界を埋め尽くすヒット判定!
これを必死に撃ち落とすけど!
手が!
足りない!
その弾幕を突っ切って、スパイスさんが飛び込んできた。
「スパイラルキーック!!」
「うおおーっ!? なんじゃこりゃーっ!!」
もろに喰らってふっ飛ばされた。
「わはははは、手数をやるならこれくらいやったほうがいいぞー!」
スパイスさんは笑いながら、逆さまになって空中に立っている。
何が……何が起こってるんだ。
実戦形式で教えてもらったけど、この人はあたしが今まで手合わせしてきた中で、一番意味が分からない。
一発として同じ攻撃が来ない。
全く違う、見たことがない攻撃が次々に襲ってくる。
しかも!
全部かなり手加減されてるのが分かる!
「つ、つえー……!」
「そりゃーね、スパイスは強いからねー。戦う魔女としては世界一だよー」
「これが世界一……! 思ってたより全然遠かった!」
この風景を見ていた湊が、
「やっぱ、パパの戦い方は反則だよなあ……。絶対ついていけないもん」
とか呟いているのだった。
こうして手合わせの部は終わり。
手数で戦うというのがどういうことなのか、徹底的に叩き込まれたぞ。
もう、相手が認識できる量を飽和してるくらいの攻撃を叩き込めってことか!
スパイスさんから何か盗めないかな……。
考えながら異世界から帰ってきたら、背の高いロマンスグレーな男性が待っていた。
「さて、ここからは君のアイドル方面を強化していくわけだが」
「えっ!? 誰!?」
「さっきスパイスだった者だよ」
「パパのギャップ凄いだろ……?」
凄すぎる。
あたしは湊と一緒に、奥の部屋に通された。
なぜかベランダを出て、隣のベランダとの境目を作るパーテーションに扉がついている。
そこを開けたら、あるはずがない部屋に到着したのだ。
「こ、ここは……?」
「魔女のレッスン室だよ。俺は常にここで己を磨き、後進に伝えられるものをまとめている」
スパイスさんが重々しく告げる。
な、なるほどー。
中央に大きなプロジェクターがあって、左右にスポットライトもあり、撮影設備も揃ってるみたいですけど。
「まず、これを見て欲しい。俺が参加していたる、フォーガイズという男性配信者ユニットなのだが……。スレイヤーVが最近腰をやったので休止した」
「明らかに幼女が一人混じってませんか」
「あれが俺だね。女体化は男ができる最も男らしい行為だ」
「は、はぁ……」
濃いぞ、この人!!
おい湊!
振り返ったら、
「パパは突き抜けてしまっているからな……。俺はまだまだあの域には届かない」
尊敬の目をしながらそんな事を言うのだった。
いかん!
この家には同類しかいない!
だけど、フォーガイズのコンサート映像はとても参考になった。
なるほどなるほど、男のダンスはこうか。
女だった頃とは全然違うなあ……。
……あれ?
チャラウェイさんいない?
やっぱチャラウェイさんだろあれ。
思わぬところに思わぬ人がいる。
湊のお父さんとチャラウェイさんが仲間だったとは……。
そして当然というか何と言うか、スパイスさんの見た目は全く変わっていなかった。
後で聞いたんだが、魔女は不老なんだそうだ。
だから、人間であるスパイスさんは歳を重ねても、変身した後の魔法少女スパイスは永遠に少女のまま。
いつか人間の部分が寿命を迎えた時、人として死ぬか、魔女として生きるかを選択することになると聞いた。
そう言う事になってるんだなあ……。
「ところで上鳴明くん」
「あっ、はい」
「うちのほむらとはどうなんだい?」
「えっ!?」
「ほむらがよく、君の話をするようになったんだ。あの娘は極端な実力主義者でね。自分基準で見て弱い男は相手にしないんだよ。だから、男の話をするなんて言うのは実に保育園以来……」
いかん!
スパイスさんの目が笑ってない!
湊がなんか身構えている。
「パパ! はやまるな!?」
「君の実力は見た。現状、ほむらと互角とまではいかなくても、良い線いくだろう。だが……最終的には俺に勝たねばほむらをやることはできない……」
「うおおおおお!? いやあの! 俺、というかあたし、魂は女なんですけど!?」
「よくある」
「よくあるぅ!?」
「俺がそもそも、おじさんなのに魔法少女の才能を持っていて、祖母から魔導書を受け継いで変身し、戦い抜いた人間だからね。根本の性別は逆でも、君の歩む道の先にいる者だ」
「パパ、サンダーは女に戻れないんだけど! ちょっと違うからね!」
「あっ、そうなの!? だったら魂は女だけど体はずっと男ということか」
おーい!
この親子は何の話をしてるんだー!?
でもとにかく分かったこと。
男は男で、アイドルとして生きていける道があること。
あたしがやれることはまだまだ無限にあって、努力のしがいがあるってこと。
後は、スパイスさんは娘のほむらが可愛くて仕方ないということかなあ。
「よし、雑談はこれくらいにして、ちょっと振り付けを練習したりしてみよう。話を聞いたが、君は元アイドルだったんだろう? ダンスに対する基礎はできているものと思う。だから、このフォーガイズで一番ダンスが多かった曲の振り付けくらいなら楽勝で……」
「や、やります!!」
なんかあたしに対する、別の意味で熱い視線を感じるけど、訓練を付けてくれるって言うならやるしかない。
夏休み中はちょこちょこお世話になるかあ……!?
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