第120話 ラストに向かって駆け抜けろ!
夕方頃にハッと我に返る僕たち。
明日からもテストあるんじゃないか!
「とりあえず僕の家が近いから、そこでみんなで勉強しよう!」
「えっ、かざりんの家に!?」
「行ってしまってよろしいのですか!?」
「お、思わぬ幸運~!」
「それじゃあうちもお言葉に甘えて……」
みんな自宅に連絡して、今日はテスト勉強で遅くなると言うことになった。
夜九時頃に、彼女たちのお父さんが来るまで迎えに来るみたい。
こうしてカラオケボックスから、わいわいと移動した。
我が家についたら、みんなきょろきょろしたり、あちこちに座ったりしている。
「かざりんの匂いがするかも……」
「凄く片付いてる……。信じられないくらい」
「むむっ、いかがわしい本を発見!」
「美紅さんいけない」
僕はスススーっと移動して、美紅さんの重心を崩して転がした。
「うぐわーっ!?」
そして本は本棚に……。
「明日奈、女の子が好きなの……?」
「……ファノリーさん。僕のもともとの境遇を思い出して下さい」
「あっ、そう言えば魂は男子だった」
気をつけていただきたい!
僕はぷりぷり怒りながら、勉強の準備をした。
……あれ?
女子を大量に部屋にあげて、その上でエッチな本を見られたのに僕は平然としているぞ……?
まあいいや!
「みんな! 勉強をしないと明日は恐ろしいことになるよ! 補習は怖いかー!」
ハッとする友人たち。
「私は問題ないけど、一人で夏休みはエンジョイできない!」
「怖い! 成績が悪いと夏期講習行かされる!」
「勉強だけで夏休みを終わりたくなあーい!」
「うちの一族も留年とかは絶対許してくれないから……!!」
顔つきが変わった。
なお、撫子さんは今回も指導側。
うちの学校、授業の進みが早いし合間合間で大学受験を模擬的に体験できる小テストがよくあるんだよね。
論理的思考を養いつつの、実践形式での受験対策。
本気で挑めば塾いらず。
理事長が日本全国から集めてきた教師が、なんか凄い授業をやってくれるのだ。
置いていかれても、とても豊富な補習ですぐ追いつかせてくれる……。
恐ろしいところだ。
で、撫子さんは補習一切なしでこれをクリアする猛者。
頼れる!
こうしてみんなで雑談もせず、無言でテスト範囲を勉強していると……。
「おーっす。明、もう帰ってるでしょ? 今後の配信について……」
入ってきたサンダー!
それを射抜く8つの女子の目!
「お、お、男ーっ!?」
「当たり前みたいな顔して男が入ってきた!」
「かざりん、まさかまさかーっ!!」
「あ、サンダーマスクじゃん」
ファノリーさんの一言で、僕とサンダーの貞操に関する話題は発生を避けられた。
「そもそもあたしが元々の花咲里明日奈なんだが……。全員の顔知ってるし。しっかし、あの学校の勉強、二年になってからさらにレベルが上がってんのね。恐ろしい。週ごとにオンラインで提出する宿題があって、出さないと補習になるんでしょ? やばいって」
「毎日少しずつやって、勉強の勘をなくさないようにすればいいだけだからね」
撫子さんが強者のオーラを見せつける。
こうしてサンダーにちょこちょこ覗き込まれながら、勉強を進めた。
なんか美紅さんがドキドキしてるみたい?
落ち着いて!
中身は花咲里明日奈だよそいつ!
約束の時間がやって来て、僕らのマンションの前に次々に車が停まった。
女子たちをお迎えに来たんだなあ。
撫子さんの家は、軽だけど明らかに良さそうな車。
メガネを掛けた優しそうなお父さんだった。
ペコっと会釈して去っていく。
美紅さんの家は、なんとトラックで来た。
「お嬢さん、乗った乗った」
「ういー。お迎えありがとうございます! ほんじゃね、かざりん!」
お嬢さん……!?
彼女、大きな工務店の社長令嬢らしい。
そしてファノリーさんは、黒塗りのバンがやって来て、それに乗り込んでいった。
相変わらず彼女の一族は怪しい車に乗ってるなあ……。
みんないい人で、一斉に外に出てきて僕に手を振ったり会釈したりしてくれたんだけど。
最後に楓夏さん。
ごく普通の軽自動車が来て、そこからちょっとオシャレなメガネをした男の人と、銀髪のエルフの女の人が降りてきた。
やっぱりお母さんがエルフ!
そして男の人が僕を見て、
「あなたが二代目きら星だね。いつも娘と遊んでくれてありがとう。しかし……僕と妹ばかりでなく、娘まできら星と関わるとは……。運命的なものを感じるなあ」
なんて言っていたのだった。
なんだなんだ。
「あ、僕はこういう者です。フリーランスで冒険配信者のエフェクト設計をやっているから、是非声を掛けて下さい」
「あっ、どうも! TAGO・EFFECT……。あっ、見たことあるかも」
どうやら、有名な配信者さんのエフェクト設計なんかもやってるらしい。
ダンジョンで使うエフェクトは、見た目の効果ばかりでなく、実際に攻撃の威力を底上げしてもくれる。
それにリスナーに提供するエンタメにもなるから、大切なものなのだ。
「お父さん、かざりんと知り合いなの?」
「まあ、ちょっとね! それじゃあ、きら星かざりさん、また!」
そう告げて、楓夏さんのお父さんは去っていったのだった。
ふむふむ、これはちょっと仕事をお願いしてもいいのかも……。
こうして僕らは再びテストに臨み、幾度もの戦いを経て無事に走りきったのだった。
いやあ、激戦だった……。
ちょっとずつ遊んだけど、勉強漬けの5日間だった。
そして週明け半ばにやって来たテスト結果の発表は……。
「中くらいよりちょっと上! よしっ!!」
「うおおー! うちもテスト補習は免れたー!! というか、今年は全員補習回避できたっぽい? みんな頑張ったんだなあ……」
一番の危険域だったファノリーさんも無事に期末テストを突破し、何の憂いもなく僕らは夏休みに突入することになるのだった。
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