第119話 始まるぞ、期末テストが
期末テストまでの期間で、一番変化があったこと。
それは撫子さんの顔色がツヤッツヤになったこと。
「撫子、最近すごくニコニコしてんだけど。なんで……?」
「グフフフフ……」
「うわーっ、撫子が不気味な笑い方してるし!!」
楓夏さんと美紅さんが不気味がっている。
あれは優越感を隠しきれない笑みだよ。
「かざりんなんか知ってる?」
楓夏さんに尋ねられて、そこは素直に答えちゃう。
「実は僕とファノリーさんの勉強を見てもらったんだー」
「なんだとぉー!? 抜け駆けぇ!」
楓夏さん、怒髪天を衝く!
普段は明るくて太陽みたいなイメージのハーフエルフの女の子が彼女なんだけど、それが憤怒に染まるさまを見てしまった!
「撫子おまえ~~!! あたしを呼べよー! 美紅も一応呼べよー!!」
「ぎやー!」
「美紅が一応って何!? ちょっとプンプンなんですけど!!」
楓夏さんにぶんぶん揺さぶられ、撫子さんが野太い悲鳴をあげ、ちっちゃい美紅さんが周りとぴょんぴょん跳ね回っている。
楽しい光景だなあ。
なお、ファノリーさんはうんうん唸りながら勉強した範囲を読み返している。
「補習になって、明日奈と遊ぶチャンスを減らしたくない……。これは必死だよ……。うちにとって最大の試練だ」
「真剣過ぎる」
なお、僕は一通りのテスト範囲を把握してバッチリ。
平均点以上は取れそうな手応えがある。
こうして、期末テスト週間が始まった!
この期間はリスナーのみんなに連絡し、配信をお休みさせてもらった。
「僕のテストのために、配信は一週間お休みです!!」
※モチョチョ『テスト週間!!』『青春だなあ~』御座候『拙者もこの間までは学生であったからなあ』今川『うっ、子どもがテスト期間でおじゃる……』
僕と同じくらいの年頃の子どもを持ってるカザトモもいる!
色々な人達が登録してくれてるんだなあ。
そんなみんなへの報告を経て、今僕は立っている。
この明らかに育ちがいい人達のための女子校で、初めての期末テストという試練の場に!
中身が入れ替わった当初は、勉強についていくのも大変だったけど、今はすっかり追いついていると思う。
やるぞ……!!
一日に二教科ずつのテストがあり、午後には帰れる。
学校としては家で勉強して欲しいという気持ちなんだろうけど、そこは遊びたい盛りの僕らなので、帰りにどこかに寄ったりするわけで……。
「うおおおおおおおおおおおおお!! あたしも!! かざりんと勉強会したかったあああああああああ!!」
カラオケボックスで魂のシャウトを響かせる楓夏さん!!
思えばハーフエルフの彼女、ルンテさんに近いんだよね。
全然そういうのイメージしてなかったけど不思議な気分。
彼女のお母さんは、こっちの世界に来てすぐに人間社会でピンチになり、それを助けてくれた一般人のお父さんと付き合い初めて、一ヶ月でスピード結婚したそう。
人にドラマありだなあ。
「まあ、一般人とは言っても配信者出してる会社でエフェクト関連のチーフをやってた人ではある……」
「配信に関わりがあったんだね」
「そうそう。今はフリーだけど、お父さんって昔はあのきら星はづきのお手伝いもしたことがあったって。ほんとかなーって思うけど、今のあたしはきら星かざりの友達だからねー!」
そんな話をしてたら、注文していたたこ焼きが来た。
僕たち五人で歓声をあげて、たこ焼き山盛りを食べる。
みんな食べ盛りなのだ!
「ああ~、まだ序盤とは言え、試練を一つくぐり抜けたあとのたこ焼きは染みるぅ」
ファノリーさんが目をうるうるさせているのだ。
本当に勉強が苦手なんだな……。
そしてこの高校、間違いなく人を見て、人柄だけを見て入学させてるんだなーと思う僕なのだった。
あの謎の魔女みたいな人が関わってるんだろうな。
以前、東屋で出会った彼女を思い出す。
「ま、今度は撫子に、あたしも誘うように言い聞かせておいたからね」
「美紅は?」
「美紅はついでで」
「なぁにぃ~!!」
「うわーっ、恐るべき跳躍力で飛びかかるのをやめろ美紅~!!」
おお、楓夏さんと美紅さんがわちゃわちゃしてる。
じゃあ、ここで僕が歌う番なので。
まさかテスト期間中に、友達と制服でカラオケボックスに行くことになるとは思わなかったなあ。
うちの学校、そういうところはとてもゆるいと言うか、ほぼ校則らしい校則なんか無くて、実は制服すら着ずに普段着で来てもいいくらいなのだ。
なのにみんな全く問題を起こさず、制服で遅刻もせずにきちんと登校してくる。
謎だ……。
僕がもともといた学校なんか、校則がそれなりに厳しかったのに。
それでも変なことをして問題を起こす生徒がちょこちょこいたのに。
とか余計なことを考えながら歌っていたら、みんな真剣に僕の歌に聞き入ってるんだけど。
なんでだ……?
「はあ~、かざりんの生歌が聞けるだけで私たちは今この世界のトップ・オブ・ザ・ワールドにいるよねえ」
「それは同感だわ……。テスト勉強でささくれ立っていた心が潤う……」
「美紅はもう耳コピしたからね。お風呂でいっつも真似して歌ってるし、声マネがかなり上手くなったし」
「おい美紅に声マネで歌わせよう」
ファノリーさんの提案で、次は美紅さんが僕のマネをしながら歌うことに。
なにーっ、僕ってそんな歌い方してるのかー!?
みんな、ワーッと盛り上がっている。
その後、美紅さんがファノリーさん、撫子さん、楓夏さんのマネをしながら歌い、そのどれもが大変良く特徴を捉えていたのだった。
うーん、凄い一芸かも知れない。
明日からのテストのことを、すっかり忘れてしまいそうになる僕なのだった。
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