第116話 授業のレベルが高い
「この学校、授業のレベルが高いと思う」
「どしたん明日奈。深刻な顔しちゃって」
「ファノリーさん! 中間テストあまり良くなかったのに、そのまま配信に力を注ぎ込んでたから期末テストが怖いんだよー。あああ~、補習はいや~」
「意外や意外! 明日奈、勉強はあまり得意ではなかった!?」
「入れ替わる前は、向こうの学校では普通だったんだけど……。この学校のレベルが高い」
「まあねえ。塾行かなくていいようになってるからねえ」
そうなのだ!
花咲里さんの通っていたこの女子校、かなりレベルが高い。
一年生の始めは易しいらしいんだけど、そこで進行度合いが遅い子を見極め、特別補習でガッツリ鍛え上げる。
結果的に脱落者無く二年生に進級するのだとか。
聞いてないよー。
二年生の今、みんな歴戦の女子高生なのだ。
「仕方ない……。まさか明日奈が苦戦していたとは知らなかったから、うちが勉強に付き合ってあげよう」
「助かる~!」
「だがうちも、実はクラスで最底辺の成績!」
「えっ!?」
衝撃を受ける僕。
そこにさっそうと現れる救いの神……撫子さん!
「私が二人を助けましょう!! 今日の午後から勉強会です!!」
「な、撫子さーん! 助かる~!」
「いつも真っ先に歌を聞かせてもらえてるお礼だよ~! 私こそかざりんにはいつも心を救われている──」
「持つべきものは友だねー! じゃ、うちも一つ、お願いします……!!」
ということで!
事務所に集まって勉強することになった。
なぜ事務所かと言うと、近場の喫茶店やバーガーショップは勉強禁止で、30分以上勉強していると店員が帰れ帰れと言ってくるからなのだ。
コーヒー一杯で延々と粘られたら、大損だもんね。
だけど事務所は大丈夫。
社員の人達もめいめい勝手な時間に出勤してくるし、ドライアドのパラスさんは、夕日と朝日を職場で浴びたいということで大体宿泊してる。
いいのかな……?
なので、事務所で勉強する分にはOKというわけ。
「い、い、いいの!? 部外者の私が!?」
「撫子さんがめちゃくちゃ緊張してる!」
「そりゃあねー。部外者なのにちょこちょこ行ってるうちが異端だと思うよ」
「社外秘とか大丈夫なの!? わ、私が何かを知って世間に漏らしてしまうかも……」
「撫子さんなら大丈夫!」
「ああ~!! かざりんの信頼が全身に染み渡る~!」
黒髪清楚な女の子が、道端でのけぞってガクガク震えるのはインパクト強いなー。
撫子さんは大人しそうな見た目に反して、なかなかのリアクション芸人なのだ。
「社長に電話したら、いいよーって言ってくれたし。行こう行こう」
「明日奈がいいって言ってるんだからセーフ! 行くよ撫子~!」
「う、うおお~! 推しの事務所に、今! 私は突入~! いや、いつも一緒のクラスで一緒に授業受けてるんだけど」
こうしてエレベーターに乗り込み、事務所にやって来たのだった。
「ちなみに昔のイカルガエンターテイメントでは、きら星はづきの同級生三人を配信者としてデビューさせてたらしいね!」
「ぎえーっ! 私にはむーりー!!」
と騒いでたら、社長がひょこっと顔を出した。
「いらっしゃーい。大丈夫、デビューさせることはしないよ! うち、配信者三人でいっぱいいっぱいなので!」
それだけ告げて、また仕事に戻って行った。
事務所が軌道に乗って、どんどん仕事が舞い込んでくる環境だ。
社長は忙しくも、やりがいに満ちてて生き生きしている。
「良かった……。女子高生をいきなりデビューさせる環境なんて無かったんだ」
撫子さんが本当にホッとしている。
事務所がなんか恐ろしいところだと思ってた?
多分、昔の冒険配信者ってとにかく人が足りてなかったのか、今聞くと無茶苦茶なデビューが多い気がする。
サンダーとたまに模擬戦してる、イカルガのバングラッドさんなんか、もともとはこの世界を侵略に来た魔王軍の幹部だったそうじゃない。
きら星はづきと戦い、現地のゲーマーたちと戦い、あまりにこっちの世界が面白いので寝返って、それを即座に配信者デビューさせたとか……。
あ、ありえない。
自由過ぎる。
社長的には、この会社のキャパシティを考えるとそんなむちゃくちゃは無理っていうことで、デビューはきちんと人となりを見てやっていくつもりらしい。
その割には、刑部さんは即座にデビューさせてたような……。
「エイミーはいいの! 宇宙さんからの推薦だし、しかもあんなにレアな能力で本人も面白いんだよ? よそに取られる前にうちでデビューさせるのが一番でしょ!」
「な、なるほどー」
「社長さん、ちょこちょこ会話に入ってくるね……! 見た目は怖いけどフレンドリーな人」
オーガっていう種族は見た目は威圧感あるもんね。
みんな2mくらいあるし、角が生えてるし、筋肉質だし、肌の色も赤かったり青かったり緑だったりするし。
社長は割と人間に近い方じゃないかな。
「えー、こほん。では、勉強会を始めていきます。今回の目的は、かざりさんの補習を防ぐこと。ついででファノリーもテストの点を上げること。毎回補習の常連だもんね?」
「うちは人格を認められて入学したので……」
ファノリーさんが分が悪い状況だ!
珍しい!
勉強会は粛々と始まり。
だけどうちの事務所の人達は好奇心旺盛なので、みんながちょこちょこ覗きに来た。
ルンテさんなんか、お茶を入れて持ってきて、僕たちの後ろからテキストを眺めたりしながら「ふーん、ほーん、この世界の若者はそう言う勉強を……ほほーん」とか言っているのだけど、本当に気が散るから勘弁して下さい。
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