第115話 組み合わせろ、持ち味!
「ってことでスパーをやった配信を流しまーす」
※『同時視聴形式なのね』『あ、動画がプレミアム公開されてるw』『どれどれ……』『序盤は二世にやられてるなあ』『積み上げた技術が違うぜ』
この間の、二世さんに付き合ってもらって行った特訓の光景を編集し、動画にしてあるのだ。
あたし視点の動画ね。
んで、二世さんのとこでは二世さん視点の動画が流れている。
「俺もかなりやられてさー。ここ。ここで二世さんに教わったんだよね。持ってるもの全部使ってやんなきゃって! そうそう、まさにそれ! 二世さんから格闘技の基礎を教わり、さらに法術を組み合わせ、魔法を組み合わせ、ガッシーを組み合わせ」
『もがが!』
※『ガッシーがテーブルの上を走ってる!』『一人大運動会だ!』『かわいい』『グッズ販売しないんですか!』『ガッシー欲しい!』
「えっ!? そんなにガッシーが人気!? わかった。こんどなんか出せないか聞いてみるわ。意外な人気……」
『もが~』
※『きゃーかわいい!』『画面に向けてファンサしてる』
「おいガッシー、俺の配信なんだぞ。主役を喰うやつがどこにいるんだ。あーっ、みんながガッシーに注目している間に、紫電空中六連脚が終わってしまいました」
※『サンダーが空を飛びながら足に紫色の放電を纏ってた』『二世がめちゃくちゃ蹴られてガードごと吹っ飛んでたな!?』『なんだあれ』
ちゃんと見てたか!
「俺の新必殺技です! 空中移動は、ガッシーが蹴りの反発の度に押し返してくれるし、打撃はリズムに合わせて蹴る場所が分かる。そこに電撃を纏って攻撃すると、なんと紫色に輝くんだなあ。あ、フェイントや牽制は流してるBGMの音楽が発生しないところでやるし、当てないからコンボが途切れないことを確認済み」
※『なんでw!?』『そうはならんやろ』『なっとるなあ』『見た目は超絶ド派手だな!』『これがサンダーの技を全部合わせて使ったやつってこと!?』
「そういうこと! この系統で技を色々開発してるんだ。基礎の訓練は毎日やってるけど、その合間にこれを混ぜる! 俺だけの戦い方を作っていくぞ!」
二世さんにスパーで転がされた時も、ベルゼブブに攻撃が通じなかった時も、なかなかショックだったからなあ。
世界は広い。
あたしの付け焼き刃じゃ、通用しないようになってくる。
なので、きちんとした基礎と、そこから来る応用を身に着けて行かねばなのだ。
幸い、ダンスの素養が役立ってる。
そしてダンスと言えば……。
「ところで俺のアイドル化の話なのだが」
※『うわあ、激しい打撃戦動画見てる時にぜんぜん違う話をするなw!』『そう言えばサンダーはアイドル志望だったな』『魂がアイドルなのに、すっかり格闘マンガの主人公みたいな生き方してる』『すっかり忘れてた』
「俺は魂のレベルで歌と踊りが好きだからね! んで、せっかく男の体になったということは……。超かっこいい男性ボーカル曲を歌いまくれるってことでは? と気付いたのだ」
※『ポジティブ~!!』『天才か?』『ニーズしかない!』『みたい!』
女子リスナーのコメントがワーッと流れてきた。
どうやらあたしの配信、リスナーが男女半々なんだよね。
放課後プレデターズの時は、女性ファンのが多かったけど。
「おっ、マネージャーから既に曲の使用許可はもらってるって来てる! じゃあやるわ。一週間後な」
※『急な供給!!』『一週間ということは……』『ガッツリ練習するつもりだな!?』『流石は元アイドル』
「ふっふっふ……。魂がアイドルだった女……男……? その本気と実力を思い知るがいい」
※『本人が男か女か曖昧になってるじゃん』
そろそろ三ヶ月目だからな……。
男子の生理現象にも慣れてしまった。
万一元の体に戻れたら、ちゃんとやっていけるか怪しくなってきたぞ……!
明も凄く女子らしくなってるし。
ふうらいエレメンツの明日はどっちだ。
同時視聴の配信が終わり、あたしの日常がやって来た。
大好評だったな。
あたしの歌ってみた予告が。
「せっかくの特訓風景が、ガッシーと歌みた予告で全てスルーされてしまった気もする……!」
『もがー』
ガッシーがテーブルの上で、自分用に取り分けられたヨーグルトを爪楊枝にくるくるまとわりつかせている。
これをあーん、と口の中に入れて、味わう。
二頭身のがしゃどくろは、確かにかわいいキャラクターかもなあ。
配信してすぐに、バンダースナッチさんからグッズ化のオファーが来てるし。
今、夜だよ!?
ちゃんと寝てる!?
「しかしまあ、思った以上に配信者ってのはノンストップだよねえ……。そして目指す目標も果てしない……。鍛錬を続けねば。鍛錬……鍛錬ってなんだ。いつからあたしは戦うことが目的になったんだ」
うおおお、と呻きながら背後のベッドに倒れ込んだ。
強さとか勝利への渇望と、またアイドルやれるぞっていう希望がごちゃまぜになって、脳内はカオス!
なのに全身にエネルギーがみなぎってくる~!!
もう訳が分からない。
「とりあえず、やれる事、やりたい事がめちゃくちゃに増えたってのだけは確かだ。これは……忙しい夏になるぞお……!!」
六月の終わりが見えてきている。
連続してた雨も、そろそろ終わり。
七月の半ば過ぎには期末テストで、その後には夏休みが来る……!!
男として過ごす、初めての夏休みだ。
ここでふと思うのだった。
「明のやつ、ちゃんと水着の配信するんだろうな……? アイドル売りする立場として、そこは通過しておきたいところだからな? ……よし、ちょっと一声掛けてから寝よう」
あたしはそう決意し、隣室に向かうのだった。
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