第114話 役立つ特訓配信!
「つまりな、冒険配信者にとっての戦闘力ってのは二種類あってだな」
借り切ったトレーニングルームで、二世さんが教えてくれる。
「俺みたいに、地道に鍛錬を積んで実力を上げてきたタイプ。これが大半だが、確実に強くなれるし鍛錬の状況すら配信に活用できる。そしてリスナーからのバフが掛かる」
「ふんふん」
『もがもが』
あたしとガッシーで頷くのだ。
「サンダーが目指す方向性はこっちだ。で、もう一方は……。まともに鍛錬しているように見えないのに、次々に新技が生まれてなんだか訳が分からないうちに強くなっていくタイプだ。これはエンタメ特化型か、運命が後押しして英雄になっていくタイプだ。かざりちゃんはこっちだな。多分、鍛錬はしてると思うが、本当に常識的な普通のことしかしてないだろう。なのに配信では不思議な事が起こる……」
「ほんと、それです! 明……かざりはちゃんと体は鍛えてるんですけど、あんな不思議な動きは練習でやってるの見たこと無い」
だけど、本番では相手に通じてしまうんだよなあ。
なんなんだ、あれは。
「いいかサンダー。そういうのは考えてはダメだ」
「考えてはダメ!?」
「そうだ。意味が分からないものは、どんなに考えても意味がわからない。ましてや、真似をしようとしてはいけない。俺達は自分ができることをやるしかないんだ」
「な、なるほど~!!」
含蓄がある!
今回の特訓は、撮影して動画として編集を行い公開する予定。
コツコツ長いこと特訓してるのをずーっと流してても良くないし、リスナーを楽しませるための雑談をすると特訓の純度が落ちるからね。
柔軟運動から、軽く息が上がるまで走り込み、体が温まったところで練習だ。
「俺が教えるのは、総合格闘技になる。かつての総合は人間だけを相手にしてたが、今の総合はケンタウロスやバードマン、オーガと相対することを想定しているからな。相手の重心を崩し、倒す。あるいは自分より大きな相手には全身を使って挑み、床に打ち倒す。そういう格闘技だ」
「基礎のとこは人間相手想定なんですね?」
「そこが一番シンプルだからなー」
そういうことで、練習させてもらった。
あたしは物覚えがいいらしい。
片足タックルの速度を褒めてもらった。
「低い姿勢のまま、バランスを崩さず高速で突っ込む……ってやつだが。サンダー、このタイミング選択が異常に上手いな……? もともと体幹ができてると思ってたが、お前才能があるぞ」
「マジですか!? あざす!」
多分、あたしがアイドルやってた頃のダンスの感覚と、この体が覚えている退魔師としての基礎訓練感覚、それからリズムゲーを戦いに取り込んだ時に得た、彼我のリズムを測る力が相乗効果をもたらしてる気がする。
「打撃は問題ないんだが、サンダーの場合は余計な攻撃がない。牽制やフェイントが無いってことだな。必ず当たれば痛打となる部分を殴ってくるから、サンダーの動画を見てたら予測が容易なんだ。俺はお前の攻撃に一発だって当たらない自信がある」
「な、なるほどー! この間二世さんにいいのを当てられなかったの、それが理由だったんですか!! ……あれ? でも配信をする以上、常に手の内を明かすことにならないですか?」
「なる。だからこそ、基礎を練りに練り上げ、それをフェイントと牽制で虚実織り交ぜ、さらに俺はモデルガンを使った早撃ちなんかも用いて相手を撹乱する」
「な、なるほどー!!」
配信者の人達、分かりやすくこれだけ! っていう戦闘スタイルがない人が多いと思ったら。
本命を当てるためのフェイクみたいなもんだったのか!
そしてフェイクであっても鍛えてるから、弱いモンスターならそっちでもガンガン倒せる。
二世さんの場合、射撃は結構な腕前で、普段はこっちがメインを公言してるから、相手の注意は射撃に向かう。
だけど彼の本命は近接距離での格闘戦だ。
「自分の持ち味を考えることだな。サンダー、お前は全部の攻撃を当てて通すってことにこだわり過ぎてる。だから読みやすい。理論値では俺より強い戦闘力があると思うが、俺は百回やっても百回お前に勝てる。そういうことだ」
「つまり……俺は、これはって攻撃をぶち込むために、他の力を使って戦場をかき回せばいいってこと……?」
「そう言うことだな! 運命が味方してこない凡人がやれることは、手札をひたすら増やして、そいつで本命のための道筋を作ることだ! じゃあ、今やった基礎に持ってる力を加えて、虚実織り交ぜた攻撃ってのをやってみようか!」
「うす!! じゃあこれ、ガッシーも手札ってことね!」
『もが!』
「ガッシー巨大化! 薙ぎ払え! で、すぐ縮小! こっちは……おら! 空中に放電しながら相手に駆け寄って、蹴り! と見せかけてタッチしてそこからも放電!」
「いいぞいいぞ! ってか、サンダーは手札が異常に多いから、その気になれば誰もお前の攻撃を読めなくなる。やれること全部やって、日々新しいものを見つけて付け加えて行くんだ!」
「うっす! なんかやれそうな気がしてきた~!!」
なまじ、音ゲーみたいな能力をしてたから、ひたすら当てることだけに注力してしまっていた。
タイミング良く打撃してくる相手なんか、経験者からするとカモだもんな。
コンボをやめるというわけじゃない。
最高のコンボを叩き込める状況を、自分で作っていく。
これがあたしの戦い方になるわけだ!
……待てよ。
これはもしや、アイドルとしての生き方にも通じるのではないだろうか……?
あたしは真実の一端に触れようとしている……!?
「よーし、じゃあちょっと試合形式でスパーやってみよう!」
「あっ、はーい!」
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