第113話 なんだこの対戦!?
「それでは僕が……」
「これこれ。これがメインディッシュなんだから。さあ、天使をぶん殴った腕前、見せて欲しいなー」
明がベルっちの前に立った。
なんだ……?
いつもの気弱でほわほわした明じゃない。
なんというか……覇気は無いんだが、妙な迫力を感じる。
最近、踊ってみたり歌ってみたりしつつ、独自の特訓を積んでいた明。
あたし同様に我流じゃないかって思ったんだけど、よく考えたら明が向かう方向はあたしと全く違うのだ。
きら星の系譜。
なんか意味がわからないけど、勝つ系譜。
「行きまーす!」
ぽてぽてっとした動きで走ったと思ったら、一瞬で間合いが詰まっていた。
「あれっ!? はづきよりも早」
ポコーンと音がして、明の両手がベルっちを突き飛ばした。
「うわおーっ!?」
吹っ飛ぶベルっち。
防御は間に合ってた。
腕を使って明の攻撃を、正確に食い止めてたんだけど、そんなもの無視してベルっちごとふっ飛ばしたのだ!
はあー、防御が意味なくなる攻撃!
なんだそれ?
「いや、力の流れみたいなのは全くありませんぞ。無です。無なのに、いきなりベルゼブブさんの魔力の流れが乱れましたな」
「明らからは何も感じないの!?」
「無いですなー。気とかそういうのも無いです。目で見たまんまですぞこれ。こ、これ、視認する以外の感覚で相手を認識する相手には無敵ですぞ……!!」
「なんだそれ!?」
「上鳴くんは、とても目がいいから気にならないんですな……。私みたいに魔眼があると、目で見えてる以外の情報が一切入ってこないあの動き、恐ろしくて堪りませんぞ。ほら、ベルゼブブさんが戸惑ってるのはそれですな」
ベルっちも攻撃に移ってるんだけど、彼女のチョップとかキックとかは、明に的確に受けられている。
端々の動きはちゃんと訓練された体術なんだけど、途中途中でぬるっと変な動きが入るんだよな……。
で、それは必ず相手にヒットする。
「や、や、やりづらい!! 手加減してたけど、加減やめたいくらいやりづらい! あと、なんか体の芯に響いてくる! 分かった! よーく分かった!」
「あ、はい!」
これで対戦は終わりらしい。
あたしたちとのやり取りでは汗一つかいてなかったベルっちの上着が、びっしょり濡れてる。
すごい下着付けてるな……!!
あと、でかいな……!!
明の体を使っていると、大きなものを見ると反応してしまう。
くう~!
だんだん、心まで男になっていっているのを感じる。
いいのか、あたしよ!
なお、それは明も同じらしく。
同じというのは、ベルっちの汗で浮いた下着とかを見てハッとして、赤くなってもじもじする辺り。
おい。
お前はずっと魂が男なのか!
「間違いなく、かざりさんははづきの後継者だわ。全く違う方向からアプローチして、全然違う答えに向かっているのに、やりづらさがはづきと同じだから」
「な、なるほどー」
「ベルっちさん、明が全然理解してません」
「そういうとこは一緒かあ」
なんか納得されたぞ。
でも、あたしもやってみて、手応えはあったんだよな。
あたしはとにかく正統派だ。
戦うための動きってのを完璧にマスターしていく。
二世さんに連絡して、コーチングをお願いしよう……!
「それでかざりさん、天使と戦ってみて感じたイメージは?」
「なんか多分、特別な技がたくさんありそうなんですけど……それに自信があり過ぎて隙だらけで、懐に歩いて入っていけるっていうか……。全然僕のこと見えてなかったっていうか」
「天使の知覚は視覚以外にもあるから、それで騙されるのかも知れませんな……。はあー、人間の側についてよかった。かざりさんというか、元祖上鳴くん、これで成長途上って言うんだからやってられませんわ」
「あれ? 僕、刑部さんに褒められてる?」
「褒めてますよ褒めてますよー」
「おっ、なんか恵美奈が明の頭を撫でたりしてイチャイチャしてるな」
ベルっちはその後、周囲からワーッと集まってきた迷宮省の人達とああだこうだ話し合いをしていた。
そしてまたワーッとどこかに散っていく迷宮省の人達。
どこに隠れてたんだ。
「ってことで、私はこれで! みんなはまた元のところに戻すからねー。今日はありがとうー! 後で会社にはお礼のお菓子を届けておきます。噂のあそこのフルーツケーキだぞ」
「フルーツ!」
「ケーキ!」
明と恵美奈の目がキラキラ輝いた。
腹ペコ娘どもめー!!
とりあえず、あたしはちょっと改善点が見つかったな。
明みたいな異様なアクションは無理だ。
というかあれは、魔力とか法術とか、そういう特別な力を全部なくしたところでたどり着いた良く分からない境地。
対してあたしは、魔力あり。
法術あり。
「ガッシーあり」
『もが?』
呼ばれて顔を出すミニガッシー。
手のひらに乗せて眼の前まで持ち上げ、
「あたしは色んな物を持ってるから、この圧倒的手札の数を組み合わせて戦っていく感じだよね。これは。で、そこにきちんとした格闘技を加える! やっぱ二世さんでしょ、頼るべきは! ご迷惑でなければ!」
『いいよー』
連絡したら二つ返事でOKをもらえた。
な、なんだってー!
『サンダーが俺に弟子入りみたいなシチュエーションの配信がさ、すげえ受けがよくって。俺はまあまあ仕上がってるだろ? だけどやっぱ、成長コンテンツって受けるのよ。師匠の視点から成長する弟子を見たいという欲望が、人にはある』
「そ、そんな欲望が!!」
どうやらあたしが二世さんに特訓してもらうのは、お互いにとってウィンウィンだったらしい。
それじゃあ、遠慮なくお願いしちゃおうかな!
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




