第109話 神セトリと乱入者
セットリストというのは、ライブなんかで歌う曲を順番に並べた目録のことなんだけど……。
配信者が歌みた配信する時、これは隠して歌った順に表示してく場合が多いみたい。
サプライズなんだね。
略してセトリだって。
勉強になる……。
「ということで、エルフたびのOPだった、風の道中・エルフ二人旅でした!」
「ううう~っ、こんな透き通った声でこの歌を歌われたら涙腺をぶん殴られたようなもんじゃない~。蘇る仇を求めてママと全国を旅して、その土地の人々と交流して癒された記憶……」
※『ルンテさん泣いちゃった!』『初手で伝説のマネージャー泣かせてるのよw』『ほんとに歌良かった!』『耳が幸せすぎた』『切り抜き禁止なのが惜しい』『アーカイブガンガン回しまくるぞ!!』
「好評みたいで嬉しいです! これはですね、これからお世話になるルンテさんのために、僕が友達みんなと考えたんです。こんな感じで、あと五曲。全部配信関連の歌になってるのでよろしくお願いします」
ぺこっと頭を下げた。
そうしたら、画面に拍手の絵文字と888888のチャットが溢れた。
パチパチパチパチってこと?
なるほどー。
ちょっとずつ雑談を交えながら、歌を歌っていく。
バラードみたいなのとか、ポップスっぽいのとか、電波ソングとか。
みっちり練習してきて、歌い方まで教わったからね!
僕の中でイメトレしてるから、教わったのとはちょっと違う感じになってると思うけど。
※モチョチョ『耳がずっと幸せなんだが!?』回転『聞くものの心を暖かくするような魅力に満ちていると言うか……つまりすごくいい』御座候『拙者昇天』『歌い方のスタイルが多彩だ!』『ちょっとぎこちないのかわいい』
みんな喜んでくれているから、まあいいか!
こうしてどんどん曲を消化していき……。
「凄い……。同接数15万人……!? 三ヶ月前にデビューしたような、小さい事務所の配信者だよ……? それの初歌ってみたとは言え、ここまでとは……。あっ、ツブヤキックスでトレンドになってる!!」
ルンテさんが驚いてる。
なんか凄いことになってるのかな?
僕はもう、曲を消化するのに必死で!
だけど一曲一曲、心を込めて歌わねば、集まってくれたリスナーたちに失礼というもの!
入魂の五曲のあと、最後に一曲。
結局、全七曲になってしまった!
「それじゃあ、僕が葉月ママからもらったファミリーネームにあやかって、同じ名前の曲を見つけたのでこれを!」
※『ま、まさか……』『マジか!』『偶然みたいに言ってるけど、そのものだからな!?』『うおおおおお!!』『かざりん、本当に知らないんだろうか?』『フリだろ』『いや、明らかに天然だろ……』
「きら星!」
※『うおおおおおおおおおおお』『うわあああああああああああ』『ぬわあああああああ』『きたああああああ』『やったああああああ』
イントロなしで、まずサビの一節をアカペラで歌ってから、演奏スタート!
※葉月『ひやああああ幸せー!!』ベルッち『やばーい!』アクア『<◎><◎>』『今なんか凄いメンツが流れていかなかった?』
チャットが流れるのが早くて、全然追いかけられない。
それに僕は歌を歌いこなすのに必死で、そもそも追いかけられても文字が読める状態じゃないし。
……と、そこで突然、スタジオの壁がドカーンと砕けて、何者かが現れた。
「上鳴明ではないのか! だがまあいい! ここで奴の仲間の女を血祭りにあげ、己がやったことを後悔させてやろう! 我ら退魔の一門は、堕落したこの世界に進出し、力を示す! 今こそその時代よ!」
ちょうど間奏の辺りで、なんか刀を持った人が来た。
あれ?
上席の人だと思うんだけど、誰だったっけ。
歌で頭がいっぱいで思い出せない……。
「かざりさん!!」
ルンテさんの声を聞きつつ、僕は歌いながら身構えた。
武器はなし!
だって歌ってるからね!
「いええええええええっ!!」
その人が切りかかってきた。
ここで、また歌唱パート再開!
刀を拳の甲で弾きながら、もう片方の拳で相手を打つ!
歌は止めない!
「ウグワーッ!? 鎧袖一触!?」
ぶっ飛んでいくその人。
※『歌いながら!』『戦ってる!』『全然歌声がブレない!』『どうなってんだ!?』『歌声とともにかざりんが輝いてる~!!』
「ぐ、ぐおぉぉぉぉ……なんという力だ! だ、だが、火車を失ったとは言え、俺は新たな力を得た! 天の御使いよ! その力を示せ!!」
吹っ飛んだ男の周りに、ラッパや太鼓の形をした、羽人間が現れた。
その奏でる曲が、なんか讃美歌みたいな感じでこっちに流れてきて……それに合わせて、翼の生えた怪物みたいなのが出現。
次々襲いかかってくる。
※『歌みたのクライマックスなのに!』『かざりーん!!』『なんだこれ、なんだこれ』
ここで、二番のサビです!!
なんか、僕の全身が強く光った。
讃美歌みたいなのが、きら星のBGMで一気に押し流されて何も聞こえなくなる。
聞こえるのはきら星と、僕の歌声だけ!
拳が、キックが、肘打ちが、当たる度に羽人間を『ウグワーッ!?』と一撃で消し飛ばす。
「バカな! バカなーっ! 来るな、来るな化け物ーっ!」
僕のパンチが太鼓羽人間を消し飛ばし、キックがラッパ羽人間を粉砕した。
最後にチョップで、その人が白目を剥いて倒れる。
『汝罪あり! 天なる使いをその手にかけ……中位天使なる我が断罪を……』
光り輝く巨人みたいなのが出てきたところで、きら星最後のラストサビ!
※モチョチョ『うおおおおおおおやっちゃえかざりーん!!』葉月『思い出すねー』ベルッち『うちらの頃もこんなんだったねー』
たくさんのチャットの声援を背負って、僕は前に進みながら飛び上がる!
最後の一声とともに、回し蹴り!
巨人の頭がスコーンと吹っ飛んで『ウグワーッ!? こ、この能天使がこんなばかなーっ! 消滅するーっ!!』歌が終わり!
最後には、凄く壊れたスタジオだけが残された。
「……」
放心状態のルンテさん。
ハッと我に返って、
「ダンジョン保険入ってるでしょうから、セーフ」
と呟くのだった。
歌い終わった僕、汗だく!
チャット欄から大歓声が流れてくる。
「みんな、ありがとー! ありがとー! いやあ、歌って疲れるねえ……」
※『途中からずっとアクションしながら歌ってたからねw』『あれだけ動いて、最後まで歌声がブレなかったの凄いのよ』『今も汗かいてるけど、普通に喋ってる』『きら星かざりの肺活量は化け物か!?』回転『襲ってきたのは退魔師と天使だったようだな……。今までで最大の布陣だったが、鎧袖一触とはこのことだ』
なんか分からないけど、みんな喜んでくれたならよし!
歌ってみた配信は、大成功ということで。
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