第107話 選べ、曲!
放課後、カラオケにて。
「えっ、選曲のために私たち三人を!?」
「う、うわーっ、特別扱い!」
「ありがたや~ありがたや~! 命燃やして頑張る!!」
撫子さんと楓夏さんと美紅さんが興奮していらっしゃる!
「僕、とにかく流行とかに疎いから、そういうのに詳しいみんなに教えて欲しいんです! よろしくお願いします!」
「きら星かざりにここまで言わせるんだから、やるしかないよねー!?」
「やるぞー!!」
「うおおー!」
「やるやるぅー!」
ファノリーさんに煽られて、やる気マックスの三人なのだった。
頼れる~!!
「今日から三日間、配信の日まで選曲の後、みっちり練習です。僕ばっかり歌うけど本当にごめんね」
「全然いい! むしろご褒美!!」
「花咲里さんめちゃくちゃ声がいいんだもん」
「音感も凄くよくてビリビリ~!とくる! 歌ってー!!」
ありがたい。
持つべきものは友達だなあ。
まさか、こんなに親しくなれる友達が、全員女子になるだなんて思ってもいなかったけど。
撫子さんが無難そうなのをワーッとピックアップしていき、これを実際に一番だけ歌ってくれる。
知ってる曲も多い。
次に楓夏さんは、ポイントポイントで入れる盛り上がる曲をチョイス。
なるほどなるほど、確かにこれは盛り上がりそう。
サビが凄いんだね?
そして美紅さんは、ドヤ顔でとある曲を出してきた。
「あっ、これ……きら星はづきさんの『きら星!』でしょ。僕も聞いたことあるかもー」
「かざりんはこれ歌わなくちゃダメ! ってゆーかラスト! みんなアゲアゲー! ってなってる時にこれ叩きつけてエモエモで終わろ!!」
ムフーッと鼻息も荒くプレゼンしてくる。
なるほどなるほどー。
僕とどういう繋がりがあるのかはさっぱり分からないけど、きっと歌ってみた配信というのはそういうものなんだろう。
その辺のお約束に疎いから、ここは従っておこうかな。
ファノリーさんが、妙に生暖かい目線でこっちを見てるんだけど。
「なんでまだ気付かないかなー……。そこがもう才能過ぎる……。間違いなく彼女は二代目だわ」
なんだなんだ?
何の話をしているんだろう?
こうして曲を提示してもらい、僕は三日掛けて練習することになった。
間にトークを交えて、一時間ちょっとくらいの配信で五曲……。
ふむふむ。
初めてならちょうどいいかも知れない。
僕、歌い慣れているわけでもないし。
「ちょっと少なめだけど……花咲里さんの負担を考えるとこんなもんでしょうね」
「撫子の判断は的確だからね。信頼していいよ!」
「早く歌の体力つけてたくさん歌えるようになってね! そして目指すは~、コンサート~!!」
美紅さんがなんか凄いことを言うので、ハハハと笑ってしまった。
大きな話になったなあ。
で、僕が歌ってみると、ファノリーさんも三人も目を閉じて、うんうん頷くのだ。
「明日奈は声からアルファ派が出てるんだよねー!」
「すごく綺麗。ラーテル花咲里だった頃と声は同じなのに、耳に届く歌が全然違う」
「心がふわふわする……あたしの中のギラギラしたものが消えていく……」
「耳が幸せになりそう……。歌いこんでどんどん上手くなって~!!」
「そ、そんなに!?」
なんか評判がいいのだった。
帰ってから、花咲里さんに話を聞いてみる。
「歌ってみた配信のために、みんなに付き合ってもらってカラオケで練習してるんだけどさ」
「明が!? ほー! いいじゃないいいじゃない。やっぱりあたしの体は、アイドル活動もしていくべきなのよ」
「うん、すっごく歌ったら受けた。それでね、花咲里さんが放課後プレデターズにいた頃と全然違うって言われたんだけど」
「ああ、あの頃と? 歌のスタイルが違うからかしらねえ。魂が変わったくらいで、歌の印象が変化するとは思わないけど……」
放課後プレデターズの動画がアワチューブにアップされているということで、見せてもらった。
画像があらーい。
お客さんが撮影したやつなの?
プレデターズのオリジナル楽曲で、今は版権も曖昧になってしまった幻の曲らしい。
凄く激しいノリのアップダウンがある曲だ。
うわーっ、盛り上がってる。
撫子さんが選んでくれた曲と、ノリが全く違うなあ。
花咲里さんも歌ってる。
あれー?
僕がカラオケで歌った感じと全く違う……。
「なにぃーっ!? あたしと全然スタイルが違うだとぉ!? そんなバカな」
認めてくれない花咲里さんなのだった。
そんな彼女は、アイドル活動できる可能性が出てきたぞとか言いつつ、ずっとがしゃどくろのガッシーとコンビネーションを鍛える配信をしてる。
その合間に雑談。
すっかりガッシーは人気になったみたいだ。
骨だから喋れないけど、タブレットに文字を書いて意思疎通してくる。
書き文字が丸文字でかわいいと評判。
そして、花咲里さんが僕の部屋に来る度に、その肩の上に乗ってガッシーも遊びに来る。
今日も花咲里さんの肩から飛び降りて、部屋の中をトテトテ走っている。
「まさか、僕の部屋に妖怪を招き入れることになるとは……」
「今ダンスも仕込んでるんだよ。こいつなかなか筋がいいぞ」
「何百年も存在してる大妖怪に何してるのさー!?」
恐れを知らない花咲里さんなのだった。
とにかく!
こうして僕の三日間が過ぎていく。
もうすぐ、歌ってみた配信の日だ。
うう、緊張する……!
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