第105話 ガッシーコンビネーション合宿
「サンダーが面白いことをやると聞いて」
「二世さんフットワーク軽いですよね……」
「おう! 後輩男子の成長を手伝うのは、先輩男子の役目だからな! 俺の方でも配信するし、美味しい美味しい」
本日、あたしはガードマスク二世さんと一緒に山のキャンプ場に来ているのだ。
今日明日と、奇跡的に晴れが連続する天気予報。
バッチリ特訓するぞ!
特訓の内容は……。
「よしガッシーでてこい!」
『もがー!』
あたしのカバンからピョーンと飛び出してくる、ミニガッシー。
「あらかわいい」
二世さんがにっこりした。
ムキムキの大柄な人だけど、可愛ものも好きらしい。
「こいつと俺のコンビネーションを高めるべくですね、二世さんにはシミュレーションの相手をしてほしいんですよ」
「いいねいいねー。男の子なら燃えるシチュエーションだ!」
そうなのか……!?
あたしとしては、こういうの必要だろって思って提案しただけだし、それに乗ってきてくれた二世さんには感謝しかないんだけど。
「それよりサンダー、十万人おめでとう! すげえじゃん! デビュー三か月で!」
「ありがとうございます! 皆さんに手伝ってもらえてどうにかです!」
「いやいや、大したもんだよ。最近は世の中が平和になったからって、配信者も小粒になってなあ。俺みたいな地味なのが登録者五十万だぞ? 同じ登録者数なら、過去にはもっと凄いのがたくさんいたからな。俺達もそうありたいよな」
「うす!」
過去の配信者はまさに、レジェンドみたいな人がたくさんいる。
今は経営や指導に回ったり、あるいは日常に戻っていったりで現役を続けてる人は少ないけど。
「よし、そんじゃあまずは……釣りすっか!」
「うす! 釣りますよー」
『もがー!』
ガッシーもミニ釣り竿を使って釣りを始めた。
三人で並んで渓流を眺めつつ、まったりと釣る。
流石に毎回釣れるわけじゃないか。
『もがー!』
「おっ、ガッシーサワガニ釣ったじゃん!」
「すげえなあ。がしゃどくろって器用なんだなあ」
二人で褒めると、ガッシーが嬉しそうにぴょこぴょこ踊るのだった。
「そろそろ始めましょう! 特訓配信!」
「おう、やるか!」
二世さんがマスクを被る。
普段はワイルドで豪快な印象の人なのだが、マスクを被ると印象がピリッと引き締まる感じ。
上着は今所属してるチームのロゴ付きタンクトップだ。
この人はフリーランスで、あちこちの配信者チームと数年ごとに契約を交わして所属してる。
「今日はハンドガンで行くぞ。弾は当たったら砕けて自然に還るタイプ。で、配信前にお約束をリスナーと共有だ。ガッシーは仲間だからな。これはあくまでスパーリング」
「うっす!」
配信って面白いもので、概要欄でお約束を提示し、これをリスナーと共有すると……。
配信者同士の攻撃が当たっても、ダメージにならなくなるのだ。
どういう仕組なんだろう……?
きら星はづきの時代以降に、そういう技術が整備されていったらしいんだけど。
世界に、これはエンタメとしてのデモンストレーションです、と記録することでダメージが発生できないようにする。
一種の魔法的な儀式なんだとか。
「おーっす! サンダーマスクだ! ガッシーもご挨拶!」
『もがー!』
※『おーっす!』『サンダー&ガッシーだ!』『すっかりガッシー馴染んできたな』『まさかSDドクロが可愛く見えてくるなんて』『肩乗りガッシーかわいい』
「ありがとーありがとー。ガッシーもお礼な」
『もが!』
「で、今日はガードマスク二世さんに付き合ってもらって、戦闘訓練です! 俺もまだまだ強くなんないといけないからさ! あと、登録者十万人ありがとう! 感謝! 本当なら歌と踊りで応えたいがニーズがな……」
※『サンダーが歌って踊る!?』『みたい!』『すごくみたい!!』
な、なにぃーっ!?
明の体に入ってから、アイドルルートは潰えたと思っていたのに。
ま、まさか男の体でもアイドル的なニーズがあると言うのか……!!
あたしは衝撃を受けた。
「うおーい!」
「あ、そうだった! 自分の世界に入ってたわ! じゃあ二世さんとスパー始めます! レッツ・スパーリング! ガッシー巨大化!」
『もがーっ!!』
ビッグになるガッシー!
あたしもその前に立ち、体から電撃を放ちながらの戦闘モード。
二世さんは今回、ハンドガンとグローブのついた拳。
「いきます!」
「おう!」
※『サンダーが仕掛けた!』『いつものすげえ連打!』『いや、ガードマスクやばいって! 片手で捌いてる!』『あの人格闘技やってたっけ!?』『二世は総合やってるはず』
総合格闘技!?
打撃が全然通らないけど、二世さんの目は油断なくあたしの足元を見ている。
もしかして、踏み込みを見て弾かれてる?
つえー!
そして一瞬距離が離れたと思ったら、二世さんがすごい速度でタックルしてきた。
「ヤバい!? うわーっ!」
あっという間にテイクダウンを取られた。
対人でグラップル用の練習なんか全然やってないもんなあ!
あわや、というところで、ガッシーが手を伸ばしてきて二世さんをコツンと突いた。
「ナイスコンビネーション!」
二世さんが離れて、モデルガンを構える。
そしてガッシーに連射だ。
BB弾がピチピチ弾ける。
『もがー!』
当てられたーと宣言して、ガッシーが後退した。
がしゃどくろは、ダメージを受けてもどんどん再生するらしい。
だけど、再生時間はあるのでそれ相当の時間、ガッシーは攻撃しないことになっている。
次はあたしの番!
「よっし、タックルさせないなら、飛べばいいんだ! おららららーっ!」
「うおっ! 連打からの飛び上がっての回し蹴り! ぴょんぴょん跳ねて蹴って来やがる! だが、そういうのは足を掴めば……」
「おらーっ!!」
「ぬおお! 掴んだ腕をもう片方の足で蹴る!? 呆れた身の軽さだな!? だが、こっちは年季が違うぜ!」
「ぎゃーっ! 両足掴まれた!! うーわーッ! 振り回される!!」
ジャイアントスイングを喰らって、フラフラになったところを再び押し倒しされてしまった。
つ、つえー!!
「二世さん、退魔師より強いっすよ」
「ははは、こちとら最前線でデーモンと殴り合ってんだぞ? 俺は体格もデカいし、きちんとした鍛錬も積んでる。その上で頭を使って対策も考える。強い相手ってのはそういうもんだ」
「すげー」
※『二世って本当に強かったんだな……!!』『サンダーが子ども扱いされてたわ』『センスだけではたどり着けない領域だな!』『あ、だけど復活したガッシーがデコピンしたら「ウグワーッ」って転げていった』
あたしもまだまだ未熟だなあ!
だけど、どんどん強くなれるってことでもあるのだ!
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