第104話 冒険配信者うぉっちちゃんねる2
いつものオープニングの後、画面に緑色の小人と、とんがり帽子の女の子が現れる。
※『来ちゃ!』『コラボだ!』『画面上では小さい子供同士なのに、実際は配信界の重鎮同士という……』
『どうもどうもなのだ! 冒険配信者うぉっちちゃんねる、始めて行きますのだ! 今回は事前に告知した通り、配信教室のこだま先生との緊急コラボ企画ですのだ!』
「はい皆さん、ご紹介に与りましたこだま先生です。いやあー、うぉっちちゃんねるさんは老舗だから、下手なことは言えないなあ。緊張しますね」
『またまた! 人生の大ベテランはこだま先生の方なのだ!』
ハハハ、と笑い合う二人。
※『配信者情報を配信する二人が牽制し合ってるぜ』『おじさん同士の毛づくろいかもしれない』『二人とも本当はおじさんだもんな』
「私はおじいちゃんですけどね。魔導書を使いすぎて、完全に体が魔女になってしまったんですよ。今は孫が魔導書を受け継いで二代目エコーをやってますけど、初代の私がこのようにずっと現役で。そのうちコラボしようなんてですね……っとと、年を取ると話があちこち飛んでいけません。それではうぉっちもんさん」
『はい! 本日は緊急企画として、最近、冒険配信者が遭遇する羽について話していこうと思いますのだ。これの正体については色々言われていたのだ。だけども、つい最近、羽の持ち主が明らかになったのだ!』
二人のバックに映し出される、とある配信。
この動画は、ファイヤー・アンド・ウインド合同会社の許諾を得て使用しています、とテロップが流れる。
『ふうらいエレメンツさんは使用許可の速度が早くて助かるのだ! それでこの奥なのだ。魔瞳エイミーさんという新人さんのデビュー配信で、先輩配信者であるきら星かざりさんと、サンダーマスクさんが一緒に登場する、とても豪華な配信でしたのだ。そこでは廊下に敷き詰められた真っ白な羽が出てきて……。これが舞い上がったかと思ったら、固まってモンスターになりましたのだ!』
※『うおー!』『白い羽って清らかなイメージなのに、なんでこんな禍々しい造形に変化するんだ!?』『こわーっ』『羽の塊を人の形にこねまわして、さらにでたらめな所から大きな翼が生えたやつだ』
「彼らが自称したのは、天使ですね。天よりの使い。神の御使い。降り来たりて、人に啓示を行ったり、魂を天界へ運んだりする存在。それが天使です。御存知の通り」
※『天使ってあんなグロいの!?』『かわいい赤ちゃんとか美男子の姿じゃないの!?』
「人ならざる存在ですから、人が見て好ましい姿をしているとは限らない……むしろ、人には理解できない姿をしている方が自然じゃないですか。事実、彼らはまだ人の形を保ってはいますが、高位の天使ほど聖典を紐解くと人の姿から離れた異形になっているんですよ。車輪に翼と目玉がついた、座天使とか」
※『クリーチャー!』『これ天使マ!?』『しかも高位の天使なの!?』
『まあ、天使だと言われても構わず殲滅していく辺り、本邦の配信者はとても頼もしいと言えるのだ! 何せ、天使は完全に僕たち人に敵対的なのだ。この、人というのは、人間だけじゃなく異種族のみんな全部を指しているのだ。天使とかのイメージが作り出された頃と比べて、今は多様性って次元じゃないくらい、人って多様になったのだ』
※『多様になった人の姿に天使が激怒したってこと?』『よく考えたら、時代が時代なら悪魔って言われそうなの混じってるもんな』
「まあ、それを言ったら……一番、我々人が苦しかった時に助けてくれたのって、天ではなく大罪と呼ばれる悪魔の力を得た人々でしたからね。人は悪魔と手を取り合って世界を守り、どうにか維持している形になります。これは……天からすると面白くないでしょう」
※『あー』『なるほどw』『確かにそれは……』『全然助けてくれなかったのに今更過ぎる』ベルッち『どの面下げてって感じだよね』
「まあ、これに関しては憶測の域を出ないのですけどね。少なくとも、ダンジョン化が始まって人類がひたすら戦線を後退せざるを得なかった時、天使は信心のない国を助けてくれることはありませんでしたね。奇跡はちょこちょこあったようです。主に彼らを信奉する国で。だからこそ、かの国は今も存在していますが……」
『そこを襲った決定的な危機には、天の力が通じなかったのだなー。アメリカを襲った色欲の大罪とか、欧州の空を覆い尽くした黄衣の王による侵略とか……。これらは、信心とはなーんも関係がない、一人の女の子が粉砕しましたのだ。彼女は歴史上の偉人なのだ』
「人が人の力で、しかも場合によっては悪魔の力も使って世界を救ってしまった。これはねえ。ちょっとメンツが丸つぶれというのはあるでしょうねえ。私だったら逆ギレしてるかも知れない」
ははははは、と笑うこだま先生。
ここで、世界ではどんな事件が起きており、いかに天使は介入してこなかったかという記録。
ダンジョン以前の有史における扱いの解説などが、面白おかしく語られた。
そして配信は、先日の魔瞳エイミー初配信に戻ってくる。
『ということで、配信のクライマックスなのだ。ここで、ラッパに手足と羽が生えた一番異形の天使が出てくるのだ。これ、知ってる人はいるのだ?』
※ベルっち『はいはーい! 権天使!』『プリンシパルってやつだな』『色々な楽器の姿をしてるのかもな』『天界の楽団か』『楽団の一人が、こんなボスキャラみたいな感じで出てくるの!?』
『正解なのだー! 恐らく天使は、一体一体が過去に出てきた魔将クラスと思われるのだ。権天使は下位の天使の中で一番上なので、強いのは納得ですのだ。まあ、三人のコンビネーションで撃破されてるけど……なのだ』
「いやあ、動きが若い。私はもうあんな動きできな……いや、この体ならできるな」
『こだま先生無理しちゃいけませんのだ!』
ドッと笑うチャット欄。
「結局のところなんですが、このように天使を名乗る軍勢による侵攻が本格的に開始されています。ダンジョン化した場に居合わせたら、すぐに迷宮省に連絡してください。そして通信が可能な間、状況を動画で投稿しつつ配信者の到着を待つ。これを徹底してください」
『噂では、最近暴れている退魔師のバックにも天使がいて、霊合教も天使が関わっていると言われてますのだ! みんなー! 注意するのだー!』
配信はまだまだ続き、話題は海外での状況を伝えるものになっていく──。
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