第103話 必殺技とかないの? あった!
「エイミーさ。必殺技とかないの? せっかく魔眼使いなんだから」
「そ、そんな事を言われても、ここは現実ですぞ? 都合の良いものがホイホイ出てくるわけは……」
※『せやな』『エイミーも人間だもんな』『魔眼って言っても演出かもだし』『ここは地道に』
「あるっちゃーあるけど」
※『あるんかい!』『あったのかい!』『ズコーッ』
リスナーのノリがいいな!
エイミーがリアクション芸人みたいな芸風なので、リスナーもなんだか乗ってきちゃってるみたいだな。
「よし、じゃあその必殺技使っていこう!」
「ヒギィー! で、ですが私の体力を著しく消費するので……!」
「ちょい出しとかできないの?」
「出来ますが効果が……」
「いいかエイミー、ちょっと耳を貸せ」
「うひょー! こ、これは危険な密着距離! いけませんサンダー、世界のみんなが見てる……」
「そんなんじゃねえー!!」
※『なんだこれ^^』『イチャイチャし始めたぞ!』『だがサンダーの中身は女子である』『実質百合ってことぉ!?』
チャットがざわめいているうちに、作戦を伝えねば。
「いい? 同接パワーってすっごいから。ちょい出しでも、これはすごい技なんですーってアピールして使うと、ほんとうにすっごい威力になるから。そう言う感じでよろしく!」
「な、な、なるほど……!? ずっと耳に上鳴くんの息がかかって至福でしたが情報も耳寄りでしたな」
※『二人でいちゃいちゃしてる間に……』回転『うおお、かざりんの大根が天使と三角覆面をまとめてふっ飛ばしていく! きら星かざりのホームランダービーだ!』
「あ、どうもどうも。羽の生えてる人はランダムっぽく飛んでくるんですが、廊下の広さの都合上十秒に三人までなんです。そして覆面の人達が十秒に五人来ますので、ここでタイミングを合わせて……あちょ!」
カキーン!
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
※『お見事!』『新世代のきら星は理詰めだ!!』『ゲーム理論でダンジョンを攻略していくぞ』『これもある種のリズムゲーか……!?』
明もかなり実力を身に着けてきてるな……。
リズムのやつは、あたしのゲーム機でちょこちょこ遊んでるので、あれを活かしたんだと思う。
体験したこと全てを武器にする男、明!
あいつどんどん強くなるぞ。
「あた……俺も負けちゃいられない! エイミー、俺達が隙を作るからぶっ放せ! 行くぞガッシー!!」
『もがーっ!』
あたしのポケットからがしゃどくろのガッシーがピョーンと飛び出て、デフォルメマスコットみたいな姿からもりもりと大きくなっていった。
見上げるほどのサイズになったところで、これを見ておののく天使と覆面たち。
それを~!!
「薙ぎ払えガッシー!!」
『もがーっ!!』
壁や廊下を透過しながら、しかし敵だけは的確に捉えつつの超大規模なビンタ!
明は素早く床に寝転がって、これを回避した。
絶対避けてくれると思ってたけど、想像以上に動きがキレてるなあ!
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』
まとめてぶっ飛ばされる敵!
あたしはガッシーが伸ばした腕を伝って走り、その先にいた天使に飛び蹴りを食らわせた。
「おらあーっ!!」
『ウグワーッ!!』
キックと電撃を同時に浴びて、吹っ飛びながら爆散する天使!
あたしたちが狼藉の限りを尽くすので、ついに怒ったボスみたいなのが登場した。
巨大なラッパに翼と腕だけが生え、マウスピースの真上に口だけがある。
そんな妙な見た目の奴だ。
『不敬なり! 主の御前である! 偉大なる御方の前に頭を垂れよ! あるいは異端と異教徒ならば死ぬがいい!』
「とんでもないこと言ってる」
※『この敵、風評被害すぎるぞ!』『こんなんうちの宗教じゃないですからね。異端も異端ですからね』
そりゃそうでしょうよ。
で、ここでやっとエイミーの覚悟が決まったらしい。
「じゃ、じゃあ私のとっておき、行きますぞ! 魔眼は色々な種類のものを使うことができるんですが、これは攻撃タイプの魔眼で……絞ることでビーム状になるので、皆さん応援していただけると……」
※『目からビームが!?』『みたい!』『いい女は目で殺すのだ』『撃てー!』
「じゃあ、行きます!! すうーっ!! はいっ!!」
エイミーがウインクしたら、開いた片目から紫色の光線がほとばしった!
太いホースから飛び出した水流みたいだったそれが、どんどん細くなって一つになり、光線に!
それはラッパ型の天使の腹にぶつかると、ドカーンと爆ぜた。
『ウグワーッ!? 不敬~!!』
「はあ、はあ、破魔の魔眼ですぞ! あらゆる魔術を相殺する魔眼で、人体には影響がありませんからな」
※『天使が破魔の力でやられた!?』『あれは偽物なのでは?』『ラッパ野郎、フカしやがって!』
『くおおーっ!! 御使いに対する数々の狼藉! 許しがたし! 許しがたし! 神曲を奏でて天よりの兵を召喚する~っ!!』
ラッパが、プップカプーと音を奏で始めた……ところで、もう天使の眼の前に明がいた。
エコバッグから取り出された大根が二本、ラッパに差し込まれ、音が出なくなる!
『もがーっ!?』
「そこに俺が! おりゃあ!!」
電撃を帯びた一撃を、あたしが叩き込む!
ラッパは金属の性質を持っているみたいで、いい感じで通電するなあ。
大根がちょっと焼けてきた。
「今だ、エイミー!」
「も、もういっちょ行きますぞー!」
※『いけ、目からビームおかわり!』『魔瞳ビームだ!』『いっけー!!』
エイミーの目が輝いたと思ったら、極太ビームがぶっ放された!
それが天使にぶち当たると、その体を半分ふっ飛ばして貫通した。
『ウグワアアアアアアアアアアアアアアッ!! ポフ~』
最後に間の抜けたラッパの音を残して、天使が消滅する。
ダンジョンもすぐに消えていった。
「ウグワーッ! 目が、目がぁぁぁぁ」
なんかエイミーがのたうち回っている。
「大丈夫? あ、充血してるじゃん!」
「使いすぎると充血するんですぞ! これでもう一日は使えませんぞ……」
※『一日休むだけでいいんだ……!?』回転『魔眼、生来の力だから肉体の回復能力があれば再装填が早いんだな?』『いい目薬知ってるよ!』
こうして、恵美奈のデビューは鮮烈に飾られた。
多分世の中で、魔眼使いに対する印象ってのが大きく変わったんじゃないだろうか。
ビームを撃つ人、みたいな感じで……。
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