12 僕はもとの生活に戻る。
フィーネさんとの入れ替わりからもとに戻ることができて、孤児院に帰ってきた。
二日しか経っていないのにすごく懐かしい。
院長先生が洗濯物を取り込んでいて、その横でボーイとマリー、リリーがくるくると走り回っていた。
「ただいま、院長先生。ボーイ、マリー、リリーも、いい子にしてた?」
かがんで手を伸ばすと、子どもたちは一斉に飛び込んでくる。
「ジン兄ちゃん、おかえり!」
「ジンにーちゃん!」
「あそんでー!」
「お手伝いが終わってからね」
やっぱり自分の姿で、自分の声でこの子達に向き合えるのは嬉しい。
三人の頭をなでて院長先生に向き直る。
フィーネさんから、先生は僕たちが入れ替わったことに気付いたと聞いている。
すごく心配かけた。
もしかしたら一生元に戻れない可能性だってあった。またこうして僕自身として会えたことが嬉しくて、なんだか泣きそうだ。
「おかえりなさい、ジン」
いつもと変わらない様子で迎えてくれる。たぶん、ボーイたちを不安にさせないようにそうしてくれている。
だから僕も、いつも通りにしよう。
「……ただいま。洗濯物を取り込むのは僕がやるから、先生は休んでいてよ」
「ありがとうね、ジン」
洗濯物を取り込んだら、服の収納部屋に運んで一枚ずつたたむ。
三人が横に座って、僕の真似をはじめた。
「俺もやるー!」
「あたしも、てつだう」
「あたしも。おわったらあそんで」
自分の服をピンと伸ばして半分に折って、あんまりきれいなたたみ方じゃないけれど、本人ががんばっているのが大事だ。
ベッドのシーツのようなたたみにくい大物は僕がやって、靴下なんかの小物は三人に任せる。
「ありがとう。助かるよ」
「ジン兄ちゃんここ数日具合悪かったからな。俺も役に立てるようになるんだ!」
「あたしも!」
「あたしもー!」
甘えん坊だったのにいつの間にこんなに頼もしくなったんだろう。
僕のためにお手伝いしたいと言ってくれるなんて。涙が出そうだ。
「かくれんぼしようぜ!」
「えー、おままごとがいい」
「あたしは、えほんがいい」
「じゃあ、かくれんぼのあとにおままごとして、寝る前に絵本でいいかな?」
三人のやりたいことを全部叶える形で提案したら、「はーい!」と元気のいい返事がきた。
かくれんぼは基本僕が鬼役だ。
孤児院の建物内から出ちゃ駄目、というルール。
日暮れが近いし、外で遠くに行ったら見つけられなくなってしまう。
「それじゃあみんな。僕が十かぞえる間に隠れるんだよ」
「はーい!」
「いーち、にー、さーん……」
数え終わり、「もういいかい」大きな声で呼び掛ければ、「もーいーよ!」の声が三人分聞こえてくる。
ボーイたちを探し出したら、次はマリーの希望のままごと。
夕食の支度を手伝ったら三人をお風呂に入れて、絵本を読む。
それから勉強してベッドにもぐる。
日常が戻ってきて嬉しい。
フィーネさんも今頃は、屋敷のみんなとの再会を喜んでいるかな。
あの広さでかくれんぼをしたら、探すのも隠れるのも大変そうだ。なんて、もう行くこともないのにそんなことを考えてしまう。
それに、大変な二日間だったけれど、まともに会話したことがなかったクラスメートたちと話ができて、これまで見えなかったみんなの一面が見えた。貴重な体験だったな。
フィーネさんがあんなに表情がコロコロ変わる面白い人だったこと、一年同じクラスにいたのに知らずにいた。
明日からはもとの、顔を見れば挨拶くらいはする、ただのクラスメートに戻る。
貴族の令嬢として、これからは婚約者探しも本格的になるはずだ。
フィーネさんが良縁に恵まれるよう、陰ながら応援しよう。
ボーイたちと過ごした時間を楽しいと言ってくれたフィーネさん。根が優しい彼女は、きっと引く手あまたのはずだから。




