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12/20

12 僕はもとの生活に戻る。

 フィーネさんとの入れ替わりからもとに戻ることができて、孤児院に帰ってきた。

 二日しか経っていないのにすごく懐かしい。


 院長先生が洗濯物を取り込んでいて、その横でボーイとマリー、リリーがくるくると走り回っていた。



「ただいま、院長先生。ボーイ、マリー、リリーも、いい子にしてた?」


 かがんで手を伸ばすと、子どもたちは一斉に飛び込んでくる。

 


「ジン兄ちゃん、おかえり!」

「ジンにーちゃん!」

「あそんでー!」

「お手伝いが終わってからね」


 やっぱり自分の姿で、自分の声でこの子達に向き合えるのは嬉しい。

 三人の頭をなでて院長先生に向き直る。

 フィーネさんから、先生は僕たちが入れ替わったことに気付いたと聞いている。

 すごく心配かけた。

 もしかしたら一生元に戻れない可能性だってあった。またこうして僕自身として会えたことが嬉しくて、なんだか泣きそうだ。



「おかえりなさい、ジン」


 いつもと変わらない様子で迎えてくれる。たぶん、ボーイたちを不安にさせないようにそうしてくれている。

 だから僕も、いつも通りにしよう。


「……ただいま。洗濯物を取り込むのは僕がやるから、先生は休んでいてよ」

「ありがとうね、ジン」


 洗濯物を取り込んだら、服の収納部屋に運んで一枚ずつたたむ。

 三人が横に座って、僕の真似をはじめた。


「俺もやるー!」

「あたしも、てつだう」

「あたしも。おわったらあそんで」


 自分の服をピンと伸ばして半分に折って、あんまりきれいなたたみ方じゃないけれど、本人ががんばっているのが大事だ。

 ベッドのシーツのようなたたみにくい大物は僕がやって、靴下なんかの小物は三人に任せる。


「ありがとう。助かるよ」

「ジン兄ちゃんここ数日具合悪かったからな。俺も役に立てるようになるんだ!」

「あたしも!」

「あたしもー!」


 甘えん坊だったのにいつの間にこんなに頼もしくなったんだろう。

 僕のためにお手伝いしたいと言ってくれるなんて。涙が出そうだ。


「かくれんぼしようぜ!」

「えー、おままごとがいい」

「あたしは、えほんがいい」

「じゃあ、かくれんぼのあとにおままごとして、寝る前に絵本でいいかな?」


 三人のやりたいことを全部叶える形で提案したら、「はーい!」と元気のいい返事がきた。

 かくれんぼは基本僕が鬼役だ。

 孤児院の建物内から出ちゃ駄目、というルール。

 日暮れが近いし、外で遠くに行ったら見つけられなくなってしまう。


「それじゃあみんな。僕が十かぞえる間に隠れるんだよ」

「はーい!」

「いーち、にー、さーん……」

 


 数え終わり、「もういいかい」大きな声で呼び掛ければ、「もーいーよ!」の声が三人分聞こえてくる。


 ボーイたちを探し出したら、次はマリーの希望のままごと。

 夕食の支度を手伝ったら三人をお風呂に入れて、絵本を読む。

 それから勉強してベッドにもぐる。


 

  日常が戻ってきて嬉しい。


 フィーネさんも今頃は、屋敷のみんなとの再会を喜んでいるかな。

 あの広さでかくれんぼをしたら、探すのも隠れるのも大変そうだ。なんて、もう行くこともないのにそんなことを考えてしまう。

 それに、大変な二日間だったけれど、まともに会話したことがなかったクラスメートたちと話ができて、これまで見えなかったみんなの一面が見えた。貴重な体験だったな。


 フィーネさんがあんなに表情がコロコロ変わる面白い人だったこと、一年同じクラスにいたのに知らずにいた。


 明日からはもとの、顔を見れば挨拶くらいはする、ただのクラスメートに戻る。

 貴族の令嬢として、これからは婚約者探しも本格的になるはずだ。

 フィーネさんが良縁に恵まれるよう、陰ながら応援しよう。

 ボーイたちと過ごした時間を楽しいと言ってくれたフィーネさん。根が優しい彼女は、きっと引く手あまたのはずだから。

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― 新着の感想 ―
ジンくんのほうも無事元の生活に戻れてホッとしたようですね(*'ω'*) フィーネさんだけじゃなくジンくんにとっても貴族の生活を体験したり貴族と交流する機会にもなって、大変でもあり楽しくもあり……だった…
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