7 このおれだ!!
「冷凍保存で未来へ行く気はねェぞ、おれァ!!」
龍希は、すでに倒壊しているモーテルから、彼方へと投げ飛ばされる。頭から壁に激突し、クラクラとめまいを覚えるが、同時に自身の頑丈さに驚く。
「壁にぶつかっているのに、頭が痛いで済むのかよ……」
そうボヤくと、
「やぁ……、生きてたみたいだね」
満身創痍で、その場に仰向けに倒れるカプリがいた。会話はできるようだが、それ以上は難しいように思える。
「カプリさん、救援は呼べないんですか?」
「もう呼んである……。けど、あの野郎を倒すには、相応の実力者をひとりぶつけたほうが、早い」カプリは息も絶え絶えな状態で言い切る。「その実力者は、君だよ……。良い? この世界は〝数より質〟だからね。それに……もしも生きて帰ってきたら、いっしょに行きたいところがある」
「……死亡フラグですよ」
「それすらもひっくり返して。お願いね、転生者ちゃん」
カプリは意識を失う。息はあるようなので、ここは応援に介護を任せるべきだ。
そして、龍希が再び気合いを入れ直すと、
「クソガキィ!! やはりへばらねェか!?」
近くの一軒家の屋根上から、怒号が聞こえる。間違いない。ナポリタンだ。
手をギュッと握り、龍希は叫ぶように言う。
「へばる、へばらないの問題じゃない!! 今しがた、約束ができたからね!! ここでオマエを倒すぞ! かかってこい!! 相手してやる!!」
ナポリタンは、先ほどと同じように不敵な笑みを浮かべる。
「良いねェ! おれの女にしてェくらいだ!!」
龍希とナポリタンの最終決戦が、今始まる。
*
「おい、梅毒」
「ルーシさんはいつもひどいですッ!! 私は人間の性病なんかに罹りません!!」
「なら、未知の病原菌。オマエ、龍希になんの力を渡した?」
「未知の病原菌でも──!「良いから答えろ。それともなにか? 言えない理由でもあるのか?」
「龍希さんは、鬼と龍のハイブリッドです! その力は、まさに無限大! 腕力だけでビルやマンションを引きちぎり、炎は都市区画を燃やし尽くす!」
「天使が与えるべき力じゃねェだろ。で? なにかデメリットもあるんだろ?」
「あ、はい。鬼や龍の力に頼りすぎると、精神がおかしくなります。サイコ・キラーになる、と言えば分かりやすいですかね」
「殺人鬼になるってか……。こりゃまずいな」
「なにがですか?」
「オマエには関係ねェ」
ある高台の公園の崖から、ルーシは飛び降りる。ただし自殺ではない。空を飛ぶためだ。彼女は鷲のように黒い翼を背中から生やし、本物の鳥のごとく空を駆け抜けていく。
*
「はぁ、はぁ……!!」
血で血を洗う闘い。だが、龍希もナポリタンも分かっているのだ。この消耗戦が長く続かないことを。もって5分が限界だとも。
「テメェ、まるでオーガみてェだぞ……!?」
爪に引っかかれ、白いスーツがすっかり赤黒く染まっているナポリタンは、龍希の変化に気がついていた。
「オマエには言われたくねェよ……。どんな体力してるんだ」
龍希も軽装故に、紫色の内出血や切り傷が目立つ。目もかすんできて、いよいよ打てる手段はひとつだけ、というところまで追い込まれた。
「野球でたとえれば、一発サヨナラって場面だな。だが、どちらが打者で、どちらが投手なのかは決まってねェ」
龍希は静かに拳を握りしめ、先ほどから身体を支配し始めている〝なにか〟を右手に流す。
龍希は静かに言う。「そんなのは、決まってるだろ。ここでホームランをかっ飛ばすのは……!!」
「あぁ、そうだな。決まってる。格好良くサヨナラを打つのは──!!」
龍希は迫撃してくるナポリタンに向かい、極限まで集中し、確かに彼の腹部諸共撃ち抜こうと、
「「このおれだ!!」」
交差は一瞬。ひとりが勝ち、ひとりが負ける。




