5 いざ初仕事へ
「そりゃ良いね。変われるヒトって素敵だよ☆」
「その果てがバウンティー・ハンターだったら、どうかと思いますけどね」
「別に、悪いことをするわけじゃないじゃん。賞金稼ぎはこの国じゃ合法だし、相手は法による保護を受けられない無法者。なら、遠慮することなくね?」
「そうかもしれないですね」愛想なく表情を変えない。「ところで、敵は誰なんですか? まぁ、名前聞いても分かんないけど」
「うん、ナポリタンって名前」
「ナポリタン?」怪訝な面持ちになる。
「コードネームだよ。ヤツの本名は、プレジデントのルーシさんも知らない。最近、3件の殺人事件で指名手配されてる。しかも、その3人はウチの社員。そりゃあ、プレジデントも怒るよね」
「顔は?」
「眉間に傷跡がついてる。スカーフェイスってヤツ? ま、居場所は突き止めたから、行けば分かるさ」
車に揺られながら、龍希は目的地へと向かっていくのだった。
*
「気持ち悪りィ……」
久々に車に乗ったからか……いや、元々車酔いがひどい龍希は、めまいと吐き気を感じつつセダンから降りる。
「そんなので闘えるの?」
カプリが当然の疑念をぶつけてくるが、ここまで来たらやるしかない。「いけます……」と消え入るような声で呟き、龍希とカプリは小汚いモーテルへ歩いていく。
「銃、使う?」
「使えないです」
「それもそうか」
カプリがハンドガンを渡そうとしてきたが、日本生まれの元日本人が、たった数分の射撃訓練で銃など扱えない。この場で唯一生きるのは、自分の腕力のみだ。
そんな最中、
「龍希さん! たとえ悪党であろうとも、赦すことが大事です!!」
面倒な天使が、どこからか現れる。龍希は溜め息をつき、
「なら、力返すよ」
そう淡々と返す。
「あ、いや。一度ヒトに与えた力は回収できないので……」
「なら、もう話しかけてくれるな」
カプリは怪訝そうな顔で、ピンク髪の女を見る。
「なに、コイツ」
「たとえるなら、ガムラン将軍かな」
「えー、梅毒持ちってこと? 近づかないでほしいな」
「ば、梅毒ッ!? この私がッ!?」
「むしろ梅毒であってほしいくらいだよ。オメェ、なにしたか覚えてる?」
「もちろん! 貴方を可愛らしい──」
「カプリさん、行こう」
「うん」
ヘーラーは、ぞんざいな扱いをされ、涙目になりながらこちらを睨んでくるのだった。
「さて、何号室ですか?」
「201号室だね。魔力からして、あそこにいるのは間違いない」
「そうですか。なら、さっさと済ませましょう」
階段を上がっていき、カプリはどこからか手りゅう弾? みたいなものを取り出す。そして、ドアの鍵を銃で破壊し、それを投げ込む。
「うぉッ!?」
飛行機で急上昇したときみたいに、耳がキーンと痛む。いや、それ以上のインパクトだ。ただ、散らかった部屋がそれ以上ゴミ屋敷になることはない。フラッシュバンかなにかか? ともかく、龍希は部屋に押し入る。
「うるせェなぁ……」
しかし、部屋の主は何事もなかったかのように立ち上がる。カプリは、「やっぱりか」と納得したような口調だった。
「テメェら、誰?」
「アンタを捕まえに来た。社員の仇、とらせてもらうよ」
「捕まえる、ねェ」
眉間に傷。間違いない。コイツが〝ナポリタン〟だ。真っ赤な髪の毛に、緑の目。だからナポリタンなのか? いや、そんなことはどうでも良い。問題は、爆発的な風圧とともに、カプリが部屋から落ちてしまったことである。
「全く、目上のヒトを敬えよ。ガキが」ナポリタンは気だるそうに続ける。「で? なんでオマエは、おれの風力操作に負けてねェの?」
龍希は、内心恐怖で心臓が口から飛び出しそうになりながらも、
「こっちのほうが強いからだよ、おっさん」
啖呵を切るのだった。




