3 ガン・ショップでの出逢い
「さてと……とりあえず、なにをすべきかね」
いかんせん、目的がない。カネもないし、スマホすらない。異世界転生というからには、なにかミッションを受けて何者かを討伐し、それでカネ稼ぎ……と思っていたが、このビーチ街にそんなものはなさそうだ。
「ま、散歩してるだけでも楽しそうだ」
とはいえ、見知らぬ土地を歩くのはそれなりに楽しそうではある。龍希は、ヤシの木が植えてある道路をダラダラと歩いていく。傍らにはヘーラーがいるが、彼女は恐怖でなにも言ってこない。
「お、ガン・ショップだ」
日本にいたら、銃なんてまず撃てないし持てない。だから自ずと、ガン・ショップが目に入る。龍希はヘーラーのほうを向き直し、
「おい、身分証」
乱暴な指示を送る。
「は、はいッ!」
さすがに身分証明ができなければ、銃火器を扱える店へは入れないだろう。カネがない以上、試し撃ちしかできないが、とりあえずそれで良い。
「で、できましたッ!!」
龍希は身分証を見ておく。
『佐嘉龍希:2002年生まれ
性別:女
日本及びアンゲルス国籍持ち』
簡素なものだが、問題なかろう。
「どうも……ヘーラー」
龍希は素直に礼をいう。
「りゅぅぅぅぅきさぁぁぁん!!」
そうすれば、〝待て〟を強要されていたイヌのように、ヘーラーは龍希に飛び込んでくる。それを躱し、アスファルトにヘーラーがぶつかった頃、ガン・ショップへ足を踏み入れるのだった。
「すげェな……」
思わず感嘆の声を漏らす。
辺り一面、銃という銃が設置されている。試し撃ちするコーナーもあるようだ。龍希は店員に、
「ハンドガンでオススメありますか? 試しに撃ってみたいんです」
と言ってみる。いかにも元軍人っぽいおじさん店員は、
「身分証を見せてくれ。最近、警察がうるさいんだ」
「はい」
「よし。お嬢ちゃん、初心者なんだろ? まずはこの〝HG2022〟を、撃ってみたらどうだ?」
「そうします」
「弾はあっちにある。9ミリ弾だ」
「オッケーです」
進まれるがままに、ハンドガンを貸してもらう。弾は射撃場にあるようだ。乱射されても困るからか。
(そういえば、言語が通じるな。英語なんてからっきしなんだけど」
転生特典というものなのか、言語が通じるし読める。変に苦労しなくて良い。
射撃場につき、イヤーカフをつける。9ミリ弾を装填し、置かれていた説明書通りに引き金を引いてみる。
すると、
ポコンッ、と小気味良い音がイヤーカフ越しにも聞こえてきた。マトには穴が空いている。これは楽しいぞ、と龍希はハッピートリガーになるのだった。
「ん? 邪魔するなよ、ヘーラー」
そうして連射していると、肩を叩かれた。ヘーラーが邪魔しに来たのだと思い、振り向く。
しかし、そこにヘーラーはいなかった。代わりに、銀髪碧眼の少女がいる。整った顔立ちで、ツリ目。長い髪の毛はツルッとまとまっていて、身長は160センチくらい。そんな少女である。
「あ、ツレだと思ったんで。こりゃ失礼」
「気にするな。なにせ、あのバカ天使は私の付き添いでもあるからな」
「へ?」
「ま、とりあえず銃を置け。そこでジュースでも飲みながら、ガールズトークに花を咲かせよう」
「あ、うん」
謎の少女にリードされるがまま、龍希は休憩コーナーの椅子に座る。
「ほら、奢りだ」彼女はコーラを渡してくる。「あの独善天使の相手は疲れるだろう? まぁ、憑いてしまったものは仕方ない。私はルーシ。オマエは?」
「佐嘉龍希」
「日本人か」
「そうだね。言って良いのか分かんないけど、転生してきたらしい」
「そりゃあ、あの天使が憑いているからな。転生してなきゃおかしい。さて、龍希。これからどうするつもりだ?」
「どうするって……、どうしようもないでしょ。生活保護でも受けてみる?」
「それじゃ退屈だ」彼女は手を広げる。「ちょうど頼みたい仕事がある。簡潔にいうと、賞金首を確保して指定の場所へ連れてきてほしい」




