表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
94/118

仲間

「さすがにやべえな……こりゃぁ」

地平線を埋め尽くす魔物の大群と、不気味な笑みを浮かべる魔神たちを前に、ドラコが冷や汗を流しながら呟いた。

「あの魔物たちを止めないと……一気にユグドラシルが落とされる」

奏多が刀の柄を握る手に力を込める。

「おいおい。必死なところ悪いが、そのまえに俺たちがいるのを忘れてねえよな?」

ダウラが禍々しい赤色の瞳をぎらつかせ、愛用の槍を肩に担ぎながら前に歩み出てきた。

「ダウラさん……本当に、私達と戦うんですか……?」

かつての戦友の姿に、アリスが悲痛な声をあげる。

「あらあらアリスちゃん。私たちと戦うのが怖くなっちゃったの?」

アウラがクスクスと、洗脳特有のうつろで歪んだ笑い声を響かせる。

「アリスちゃん……キュレム様のために、ここで大人しく死んでくれ」

ロウラもまた、感情の消えた声で淡々と死を告げた。

「アウラさん……それにロウラさんまで……っ」

アリスが唇を噛み締める。

「俺としては誰が相手でもどうでもいいけど、早くやろうぜ? 身体が疼いて仕様がねえんだ」

ギガスのジリアンが、首の骨を鳴らしながら凶暴な笑みを浮かべた。

「ふん、俺様もお前みたいな強い奴と戦うのは大好物だが……それよりもまず、あのワラワラいる魔物の大群が邪魔で仕方ねえな」

ドラコが忌々しそうに森の奥を睨みつける。

「……なんであんたがそこにいるんだよ、ガイのおっさん!」

太一が大剣を構え、操られたグランドマスターの姿に向かって叫んだ。

ガイは静かに剣を抜き、冷酷な視線を太一へと向ける。

「剣聖よ。何も出来ないお前に、その剣の基本を教えたのはこの私だ。ゆえに、お前の剣筋などすべて見切っている。攻略するのは容易い」

「先にこいつらをどうにかして、一刻も早く魔物を止めないと国が終わる……!」

奏多が覚悟を決め、静かに刀を抜き放とうとした、その時だった。

「ずいぶん楽しそうであるな、主よ」

威厳と神秘に満ちた声が響き、奏多の影から、漆黒の髪を揺らす精霊王オウがいきなり姿を現した。

「オウ……!」

驚く奏多に、オウは腕を組んで不敵に笑う。

「状況は影の中から見ておったゆえ、すべて把握しておる。奏多よ、今すぐアリスティアの皆をこの場に転移させるのだ」

「はあ!? お前何言ってんだ、そんなことできるわけねえだろ!」

「できるできないではない、やるのだ。我が主、アリスティアの王たるお前ならば、それくらいやってのけるであろう?」

オウがニヤリと主を試すように笑う。

その言葉に、奏多の脳裏に電撃のような閃きが走った。

(そうだ……俺の『空きスロット』なら……!)

極限の窮地の中、奏多は全神経を集中させ、自身の魂の奥底にあるシステムへと強く願いを込めた。

『望むんだ。みんなを、アリスティアの仲間たちをここに転移させるスキルを……!』

パッ、と奏多の視界の端でステータス画面が激しく明滅し、書き換わっていく。

【スキル:転移(極級)を獲得しました】

そのシステムログを確認した奏多の目に、確かな闘志が戻る。

「よし……!!」

奏多は天に向かって、全力でその名を叫んだ。

「――スキル、『転移(極級)』!!!!」

……シーン。

一瞬の静寂。周囲の光景には何の変化も起きない。

「ん? あれ……? なんも起きない……か?」

奏多が拍子抜けしたようにポツリと呟く。

「おいおい奏多、一体何やってんだ? 絶望的な状況すぎて、ついに頭がおかしくなっちまったか?」

ドラコが呆れたようにツッコミを入れた、その直後だった。

「おいドラコ! あんた、さっきから奏多殿を馬鹿にしてんじゃないよ!」

いきなり、ドラコのすぐ真後ろから凛とした怒声が響いた。

「ん?」

ドラコが驚いて勢いよく振り返る。

「あ、アルマ!? な、なんでお前がここにいやがる……!?」

そこには、鳥人族のアルマが、白い羽を羽ばたかせて飛んでいた。

「奏多殿が新しいスキルで、私たちを丸ごと転移させてくれたんじゃないか。これこそが、アリスティアの王の力だよ!」

アルマが美しく力強い翼を少し羽ばたかせ、誇らしげに胸を張る。彼女の背後を見渡せば、いつの間にか地平線を埋め尽くさんばかりの、武装したアリスティアの民たちが、視界いっぱいに立ち並んでいた。

「大成功じゃねえか……!」

奏多が自分の手のひらを見つめ、歓喜の声をあげる。

「奏多殿。オウ殿から事情は聞いておったゆえ、皆、武器を持っていつでもいけるよう待機しておったのじゃ。ワシらアリスティアの民も、共に戦わせてくれ」

エンシェントエルフのクルスが、静かに、しかし圧倒的なマナを身に纏って不敵に笑う。

「みんな……っ」

予期せぬ最強の援軍の登場に、アリスの瞳に涙が浮かぶ。

「アリスさん、なに泣きそうになってんだよ。俺たちはアリスティアの住民だぜ? 王がピンチなら、国を挙げて駆け付けるのは当たり前だろ」

獣人のレトルが、牙を覗かせて不敵に笑った。

「――よし。じゃあ、行こうか!」

奏多の鋭い一言が、反撃の狼煙となった。

「ちょっとぉ! なんなのよそれ! そんなのあり!? もうやだぁぁぁ!」

予想外すぎる大軍勢の出現に、上空のキュレムが手足をバタバタさせて発狂する。

「嫌なのは、俺たちも一緒だ」

「――ッ!?」

突如として、自分のすぐ真後ろから冷徹な声が聞こえ、キュレムの背筋に極大の戦慄が走った。

振り返ると、そこにはいつの間にか空間を転移し、刀を抜いた奏多が宙に立っていた。

「な、なにお兄ちゃん、なんでここにいるの!?」

「下の奴らは、信頼できる仲間にすべて任せてきた。だからお前は……俺がここでぶっ倒す」

「あー! もうほんっとうに怒った! ぜったい、ぜったい、ぜったい……!!! 殺してやるぅぅぅ!!」

キュレムが顔を般若のように歪め、狂暴な魔力を爆発させる。

その空中の一騎打ちを下から見上げる中、地上ではクルスがアリスティアの全軍に向けて声を張り上げた。

「全員に告ぐ! 目の前の忌々しい魔物どもを、1匹残らず打ち滅ぼすのじゃぁぁぁ!!」

クルスの号令が響き渡ると同時に、「うおおおおお!」と地鳴りのような雄叫びをあげて、アリスティアの住民たちが一斉に飛び出した。

「おっしゃぁ! ひっさしぶりの大祭りじゃぁぁ!」

小柄ながらも頑強な肉体を持つドワーフのボンドが、巨大な斧を豪快に振り回しながら爆走する。

「お前には負けんぞ、ボンド!」

獣人族のゲルドも、野生の俊敏さと大盾を構えて負けじと前線へ飛び出していく。

「ドラコ! あいつらの相手はわっちたちに任せな! あんたはそこの、いけ好かないデカい人間をやりなよ!」

鳥人族のアルマが数人の戦士を引き連れ、大空から魔物の大群を引き受けに飛び去っていく。

「ふん。じゃあ、俺様も自分の仕事を片付けなきゃなあ!」

ドラコがジリアンを鋭く睨みつける。

「面白そうなじゃねえか、トカゲ野郎。どっちが上か、白黒つけようぜ」

ジリアンが狂気的な笑みを浮かべて受けて立つ。

「我は少し、全体の様子を見ておくとするか」

オウが静かに後ろに退く。

「そうだな。師匠はそこで、俺の成長した戦いを見ててくれよ」

レトルがそう言うと、槍を器用に回しながら、一人の男の前へと歩を進めた。

目の前に立ったレトルを見て、ダウラが眉をひそめる。

「なんだよ。てっきり奏多が来るかと思ったが……。でも、お前が相手なら話は別だよな、兄弟?」

ダウラは、かつて兄弟と呼び合ったレトルに向け、槍の先を突きつける。

「強くなった俺の、最初の相手になってくれよ、兄弟」

レトルは寂しげながらも、戦士としての喜びを瞳に宿して嬉しそうに微笑んだ。

「ダウラ、負けないでよ! ……じゃあ、私はアリスちゃんを倒しちゃおうかしら」

アウラが優雅に歩み寄る。

「アウラさんたちの暴走は、私が絶対にここで止めてみせます!」

アリスがレイピアを引き抜いて構える。

「俺も……悲しいけど、アリスちゃんを倒すよ」

ロウラが背後から回り込む。

「2人まとめて、かかってきてください!」

アリスの瞳に、もう迷いはなかった。

「ガイさん、俺はあんたを本当に尊敬してたんだぜ……? だけど、今のあんたは斬らなきゃ進めねえんだもんな」

太一が大剣を強く握り直し、かつての師と対峙する。

「やってみろ、若き剣聖よ。グランドマスターまで上り詰めた、私の本物の実力を見せてやろう」

ガイの剣が、鋭いキィンという音を立てて構えられた。

こうして――

奏多 VS キュレム。

ドラコ VS ジリアン。

レトル VS ダウラ。

アリス VS アウラ&ロウラ。

太一 VS ガイ。

そしてオウが見守る中、アリスティアの誇り高き民と魔軍の大激突。

それぞれの譲れない想いを懸けた、全面戦争の火蓋が本格的に切って落とされたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ