空っぽの器、思案をする
「奏多……。なにかいい解決策はありそうなんですか?」
部族長たちとの話し合いを終えた後、奏多はアリスと共に浜辺を歩いていた。アリスが不安げに覗き込んでくる。
「いや、正直なところ何にも思いつかないな」
「そうですよね。そもそも奏多に意見を求めるのがおかしいですよ。クルスおばあちゃんたちの問題なのに……」
少し憤慨した様子のアリスに、奏多は苦笑しながら答えた。
「まあ、俺もこの島で暮らすことになったんだ。助け合わないといけないだろ? それに、部族長たちも新参者の俺に意見を求めるほど切羽詰まってたんだろうし。何より、そこまで信用してもらえてるなら、それに応えなきゃな」
「奏多……」
真っ直ぐな言葉に、アリスはぽっと頬を赤らめ、奏多の横顔をじっと見つめる。
「……お主も、本当に人がいいやつよのう」
不意に二人の間から声が響いた。
「ひゃああっ!」と声をあげるアリス。
「オウちゃん! いきなり現れるのやめてくださいっ!」
「失礼なやつじゃな。我の主は奏多なのだぞ? 常に奏多と共におるのは当然よ」
尊大に言い放つオウに、奏多は呆れた声を出す。
「おまえら……騒がしいぞ……」
「やかましいのはアリスのほうで、我は何もしておらん。それより奏多、お主、スキルで何か企んでおるのであろう?」
オウの言葉に、アリスが首を傾げた。
「スキル……?」
「ああ。俺のスキルなら、この問題を解決できるかもしれないとは考えてる」
そういえば、奏多は魔法を使うのも、オウちゃんを呼び出したのも「スキル」だと言っていた。アリスは改めて(奏多のスキルって一体なんなんだろう)と思案する。
「こやつのスキルは、『自分の欲しいものを手に入れるスキル』である」
あっけらかんと告げるオウ。奏多が慌てて割って入った。
「あ、おいっ! 勝手に……!」
「別によかろう。アリスはお主の信頼する仲間なのであろう? ならば隠し事など不要だ」
「欲しいものを手に入れるスキル……? やっぱり。奏多の力はそういう類のものだと思ってました。……やっぱり、奏多はすごいです!」
アリスの純粋な称賛に、奏多は少し気恥ずかしそうに白状した。
「アリス、隠しててごめんな。実は、俺自身も自分のスキルについてよく分かってないんだ。例えば、最初に魔法を使いたいと思ったら使えるようになった。塩が欲しいと思ったら出せるようになった。精霊を呼びたいと思ったら呼べた。これを一つのスキルの力だなんて、なかなか説明しづらくてさ」
「確かに……そうですね」
納得するアリスの横で、オウが腕を組み、含みのある笑みを浮かべる。
「奏多のスキルは精霊王たる我にも聞いたことのない力じゃが、なんとなく性質は見えてきた。こやつの強い願いによって、それが一番良い形で『スキル』となって顕現する。――使いようによっては、世界を滅ぼすことさえできるであろうな」
「世界を……滅ぼす……」
オウの放った重い言葉。その響きに、アリスは胸の奥がつかえるような、得体の知れない不安を感じるのだった。




