表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/118

暗躍する執事

萌は、自分の目の前で繰り広げられている超次元の光景を、まったく理解できていなかった。

「うっ! ぐえっ! ぶっ!!」

知的なイメージなど完全に崩壊したリアーナが、アリスの横から伸びる神力の腕に、なす術もなくボコボコに殴られ続けている。

『も、もうやめ……ぶえっ!!』

最後は容赦のないアッパーを食らい、リアーナの巨体は派手に吹き飛んだ。

アリスは聖母のような満面の笑顔を浮かべたまま、リアーナが倒れている方へと軽やかな足取りで歩いていく。

「もうそろそろ、観念しますか?」

アリスのその優しすぎる笑顔に、リアーナは心の底からゾッとした。逆らえば確実に消される――そう本能で理解した彼女は、何も言わずに高速で何度も、何度も首を縦に振った。

「よかったです!」

アリスが嬉しそうに言うと、フッと横の巨大な腕が消滅する。リアーナは緊張の糸が切れたように、そのまま地面にぶっ倒れて白目を剥いて気絶した。

「これでおしまいです」

アリスはパチパチと手を叩きながら、衣服の埃を払う。

「あ、え……」

萌は杖を握ったまま、言葉も出ずにただ唖然と立ち尽くしていた。

その時だった。萌たちのすぐ近くの空間が、いきなり目も眩むような光を放った。

「え?」

萌が思わず振り向くと――

タッ。という小気味よい着地音とともに、光の中から二人の人影が現れた。

「萌!」

そのうちの一人が、萌の姿を見つけるなり全力で走ってくる。

「え? 愛多!? なんで!?」

萌が驚愕する間もなく、愛多は勢いよく萌の身体に飛びつき、ぎゅっと抱きしめた。

「よかった……! また会えて……!」

愛多の顔は、すでに涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。萌はその泣き顔に少し苦笑いしながらも、親友が生きていてくれた安堵感から、愛多の背中に腕を回して強く抱きしめ返した。

愛多はしばらくの間、萌の胸に顔を埋めて泣いていたが、ようやく心が落ち着いたのかゆっくりと身体を離した。

「萌、あのね……この人が助けに来てくれたんだよ」

愛多は涙を拭いながら、誇らしげに後ろを振り返った。

――しかし、そこには誰もいなかった。

「……愛多? 何言ってるの? 最初から誰もいなかったよ?」

萌が不思議そうに周囲を見回す。

「……え?」

愛多は言葉を失った。つい数秒前まで手を繋いでいたはずの奏多の姿が、影も形もないのだ。

「もー、何言ってるのよ。それより私も、ピンチの時に助けてくれた人がいて……って、あれ?」

萌もまた、自分の後ろを振り返ってフリーズした。

そこには、さっきまでいたはずのアリスとレトル、そして地面に気絶していたはずのゴリラ姿のリアーナすらも、影も形もなく消え去っていた。

風だけがヒューヒューと吹き抜ける岩山。

まるで狐につままれたような顔で、二人はしばらく無言で見つめ合っていたが、ハッと我に返った。

「「早く船に戻らなきゃ!」」

二人は気を引き締め直すと、浮かせた広臣と太一を連れて、今度こそ船着場へと急ぎ走り出した。

「あれ? ここは……」

リアーナがようやく目を覚まし、重い頭を振った。

視界がハッキリしてくると、目の前に見知らぬ黒髪の男が座っているのが見えた。

「き……さま……は……」

言いかけたリアーナだったが、その男の背後に、自分を完膚なきまでにボコボコにした、あの青い髪のアリスを発見した。

その瞬間、リアーナの全身に極限の恐怖が走り、言葉を失ってガタガタと震え出した。

「あ、おい」

黒髪の男――奏多が、アリスの方を向いてジト目で睨みつける。

「そんなに脅すなって。話が聞けなくなるだろ」

「いや、私も本気でやらないとダメでしたし……。それに、奏多さんなんて(バロンを)倒してきちゃってるじゃないですか!」

アリスがプンプンと頬を膨らませて逆ギレする。

「しょうがないだろ。委員長が危なかったんだし」

二人が言い合っていると、横から一人の男がやれやれと肩をすくめて入ってきた。

「おいおい、言い争ってないでお二人さん。この人、完全にビビっちまってるぞ」

「レトルくんはさっき勝てなかったんだから、黙っててください!」

アリスが一喝する。

「勝てなかったわけじゃないよ! 生け捕りにするのには、アリスさんじゃないと無理だっただけだって!」

レトルが必死に弁明する。

「もー……二人とも……」

アリスはプッとおこるフリをしてみせた。

「とにかく、話を聞かないとな」

奏多が話を本筋に戻し、リアーナの正面に立った。

「なあ? あんた、名前は何て言うんだ?」

「私……は……」

リアーナは怯えきった様子で、チラリとアリスの方を見る。アリスが「ん?」と小首を傾げて見返すと、リアーナは「ひいっ!」と小さな悲鳴を上げて視線を床に落とした。

「……リアーナだ……」

「リアーナか。お前、あのバロンってやつの手下なんだろ?」

奏多の問いかけに、リアーナはパッと顔を上げた。

「バロン様!? 貴様、バロン様に何をした!?」

「ほら」

奏多はポケットから、レンズの割れたバロンの眼鏡を取り出して見せた。

「そんな……バロン様が……!」

リアーナの顔が絶望に染まる。

「あいつは俺の知り合いを危険に晒した。お前みたいに捕らえるつもりだったけど、そんな余裕はなかったからな」

「ぐっ……貴様ぁ!!」

リアーナが歯を剥き出して吠える。

しかし、奏多は顔色ひとつ変えずに冷淡に言い放った。

「俺たちは、お前を殺すつもりはない。聞いたことに大人しく答えてくれれば、ここから逃がしてやる」

「誰が貴様らなんかに屈するか!!」

「そうか……。アリス」

奏多が諦めたように少し身を引く。

「ごめんなさい。こんなことはしたくないんですけど……」

アリスが済まなそうな顔でリアーナの前に立つと、その背後に、ぼうっとあの青白く光る巨大な手が再現された。

「ひいいっ!! わかった、わかったから!! 話す、話すからそれを出さないで!!」

リアーナは完全にプライドを捨てて絶叫した。

その様子を見ていたレトルが、「案外すんなり行ったな……」と呟く。

リアーナはガタガタと震えながら、一気に口を開いた。

「わ、私たちは、カオス様に忠誠を誓う魔神だ。私は、四柱いる『魔神将』の直属の部下だった……」

「魔神将……。バロンのことか?」

奏多が聞く。

「そうだ。お前が殺したバロン様こそ、魔神将の一人『風柱のバロン』様。そしてもう一人……お前が助けた人間たちが倒したのが、『雷柱のライガ』様だ」

「広臣たちが倒したのか。ってことは、あと二人いるってことか」

「そうだ。だが、残りの二人は……『闇柱のミリア』様と『炎柱のベノム』様……。あの方々にかかれば、お前らなど……ぶおっ!?」

タン、とリアーナが言葉の途中で、突然大量の血を吐き出した。

「何っ!?」

いきなりの事態に、奏多、アリス、レトルの三人が一瞬で身構える。

「少々、喋りすぎでございます」

どこからともなく、低く、冷徹な声が響き渡った。

次の瞬間、リアーナの身体が「ぶちぶちぶちぶち!」と凄まじい音を立てて、内側から強制的に引き裂かれ始めた。

「はっ……!」

アリスが声にならない悲鳴を上げる。

リアーナの引き裂かれた腹の裂け目から、這い出るようにして「人間の手」がヌッと突き出された。そしてその後に、ググッと一人の男の顔が現れる。

「このような形での登場、大変失礼いたします。私、カオス様と魔神将の皆様方をサポートさせていただいております、執事の『セバスチャン』と申します」

現れたのは、白い髭を綺麗に切り揃えた、一見すると気品ある紳士のような初老の男だった。リアーナの肉体を容赦なく内側から突き破りながら、男は平然と一礼する。

「な、なんだこいつ……!」

レトルが戦慄する。

「ここにいるリアーナ様が、少々カオス様方の情報を口滑らせてしまいそうでしたので、始末に参った所存でございます。それでは……これで失礼いたします」

セバスチャンと名乗った執事は、冷酷にそう告げると、肉塊となったリアーナの腹の闇の中へと、ズズズ……と吸い込まれるようにして消えていった。

「ま、待て!!」

奏多が手を伸ばしたが、その声はただ虚しく静寂の空間に響くだけだった。現場には、ただ無残に破壊されたリアーナの骸だけが残された。

カオス、そして残る二人の魔神将。その裏で暗躍する不気味な執事の存在。勇者たちの知らないところで、世界は確実に、より深い混沌へと突き進んでいた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ