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勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


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名も無き魔神

「最初から全力で行くぜ!うおおおおお!」

咆哮とともに、ダウラが天高く跳躍した。吹き荒れる暴風雨の中、彼の全身から噴き出した炎は消えるどころか、雨粒を瞬時に蒸発させ、白煙を上げてさらに激しく燃え上がる。ダウラは槍に炎を集めると、それを弾丸のように弾き出した。

「おらっ!おら!おらおらおらおらおら!!!」

無数の炎弾が、空中に浮かぶ謎の生物へと次々に叩きつけられる。パアン、パアンと着弾音が連続し、爆炎が敵を包み込む。しかし、甲板に着地したダウラが「くっそ!」と叫んだ通り、煙がぷしゅうううと消えていく中、そいつは最初と変わらぬ姿でそこに浮かんでいた。

「ふうううう。人間とはかくも進化のない生き物なのだな」

暴風雨の中、ドスの効いた低い声が響く。そいつは羽のようにしなやかに甲板へ降り立った。近くで見れば、そいつには口しかなかった。全身灰色の人間のような形をした「何か」だ。

そいつは口を開き「アー……アー……」と声を漏らすと、突如、自らの指二本を人間でいう目元に突き立てた。ブスッという音と共に開く二つの空洞。そこからギョロリと大きな目玉が生えてくる。

「あー、そこにいたのか。初めまして。私は魔神。名も無き魔神です」

怪物は丁寧に頭を下げた。

「は?魔神?」

「ええ。魔神王様の復活と共に1000年の時を経て復活しました」

「復活だあ?じゃあまた眠らせてやるよ!」

ダウラが槍を向けた瞬間、魔神は背後に現れた。早すぎて転移したようにしか見えない。魔神の軽いジャブが、受けに回した槍ごとダウラの体にめり込む。

「ぐっ……!ぐはあっ!」

血反吐を吐きながら吹き飛ばされるダウラ。それを見ていた連れの男が笑いながら走り出した。

「てめえやるじゃねえか!」

そのスピードは魔神を凌駕していた。一瞬で距離を詰め、魔神の顔面をぶん殴る。バコン!という鈍い音と共に魔神が後退する。

二人はインファイトのまま殴り合いを始めた。壁際でダウラは霞む目を必死に開ける。

(くっそ……また何もせずに終わんのかよ……。奏多、お前のようになるために特訓してきたんだ。まだだ、まだ死んでたまるか……!)

心臓がドクンと脈打つ。

一方、殴り合いを続けていた男は徐々に余裕を失い、魔神の一撃をまともに食らって後退した。

「さっ。そろそろ終わりにしようかな」

魔神が距離を詰める。すると、男が突然呟いた。

「……ハア。めんどくせぇ……」

「ん?」

「めんどくせぇ……めんどくせぇ……何もかも……めんどくせぇなぁぁぉぁぁ!!!」

爆発的なマナが男の体から溢れ出し、甲板を破壊し始める。その光景は、男の忌まわしい過去を呼び覚ましていた。

30年前、アインシア王国王都郊外の貧民街。

「おう。約束通り健康的な赤子だ」

小汚い髭面の男が、フードを被った謎の男に赤ん坊を差し出していた。

「……見せてみろ」

「先にカネをくれよ」

投げつけられた巾着袋に群がる男。赤ん坊と引き換えに金を得た男が振り返ると、既にフードの男の姿は消えていた。

赤ん坊が運ばれたのは、王都の地下にある、一部の者しか知らない研究所だった。そこでは神のマナを人間に移植し、人工的に勇者を作り出す研究が行われていた。

運ばれてきた赤ん坊は、当初から他の個体とは一線を画していた。体の大きさ、マナの蓄積量、全てが規格外。少年へと成長する頃には、周囲の子供たちはほとんど死に絶えていたが、彼だけは違った。

研究者たちは、自分たちの求める水準を常に超えてくる彼を「成功体」として甘やかした。彼は幼いながらに悟っていた。「力があれば好きに生きられる。力があれば誰でも従わせられる」のだと。

青年になった頃、生き残りは彼一人となった。だが、研究者たちは急に彼へ厳しく当たり始めた。神のマナを内包していても、彼がそれを使うことができなかったからだ。

ある時、彼は研究者たちが「この研究はもう終わりだ。国から予算が降りない」と話しているのを偶然聞いた。彼は考えた。最後に自由が欲しい。ならば、ここを完全に潰せばいい。

彼は全てを破壊した。研究者たちが扱えないと決めつけていた「神力」を、彼はただ必要がないから使っていなかっただけなのだ。自ら解放した神の力で地獄を焼き尽くし、彼は自由を手に入れた。

それから彼は一人の冒険者として、好き放題に生きてきたのだ。その名は――。

「ウオオオオオオオオオ!!!」

体から放出されたマナが、白く光り輝く神力へと変異していく。

「こ、これは……」

驚愕する魔神の前で、光が爆発した。

「ひっさびさに使ったなこれ」

爆発の中から現れたのは、神の力を全身に纏ったジリアンであった。

「驚いたな。まさか神力をもつ人間が勇者以外にいるとはね」

「じゃあ、いくぜえ」

笑みを浮かべ、ジリアンが再び地を蹴った。

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