表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/118

暴風の中の悪魔

新大陸レグドへと向かう巨大な輸送船の内部には、多種多様な人間がひしめき合っていた。

一攫千金を夢見る新米冒険者、経験豊富なベテラン、あるいは冒険者ですらなかった野心家たち。彼らの目的は一様ではないが、その視線がある一角に集まっている。そこには、この船に乗る者たちの中でも別格の存在である、S級冒険者パーティの姿があった。

「あれー? おかしいな。あいつら来てないのかよ」

辺りを確認しながら不満げに声を漏らすのは、燃えるような赤髪を持つ男だ。

「最近は活動をセーブしているっていう噂を聞いたから、今回は出遅れたのかしらね」

彼の言葉に、ブロンドの髪をなびかせた女性が応じる。

「アリスちゃん……」

その傍らでは、巨大な盾斧を携えた大柄な男が、その体躯に似合わず泣き出しそうな顔で呟いていた。

周囲の冒険者たちは、彼らの正体に気づきざわめき始める。

「おい、あれはS級冒険者の『バーニングハート』じゃないか?」

「あのサイクロプスロードを討伐したっていう、『炎槍』のダウラだろ……」

周囲の畏怖を余所に、パーティのリーダーであるダウラは「しゃあねえな。どうせあいつらのことだ。他の船で行ってるかもしれねえからな」と吐き捨てた。

ウォンドでの一件以来、彼らが執着している奏多たちのパーティ「アリスティ」の姿が見当たらないことが、彼らには物足りないようであった。

「残念。アリスちゃんを愛でたいわ」と魔術師のアウラが嘆息し、盾役のロウラもまた、残念そうに肩を落とす。彼らは三兄弟で構成された、名実ともにトップクラスの冒険者であった。

「そういえば、さっき甲板のほうでジリアンなら見たぜ」

ダウラが思い出したように言うと、アウラが「あの気持ち悪い男もいるのね」と嫌悪感をあらわにする。

そこへ、一人の冒険者が親しげに話しかけてきた。

「お前ら、バーニングハートだろ?」

「なんだ? お前」

「しがない冒険者のひとりさ。そんなことより、聞いたか? なんでも俺たちが向かっている新大陸は、遥か昔に存在していた大陸らしいぜ」

男の話によれば、その地は神話に登場する幻の超大陸「レグド」。かつて女神イリスによって封印されたとされる場所であった。

「その話なら知っているわ。でも、神話ではレグドにはロード級の魔物が進化した『魔神』が住んでいるっていう話でしょ?」

アウラの指摘に対し、ダウラは「本当にそんな大陸があるなら、今頃俺たちは生きてねえよ」と笑い飛ばす。

しかし、男は笑みを絶やさぬまま続けた。

「だがな、王国は新大陸のことを公式に『レグド』と呼んでいるらしい。これが偶然だとは思えねえよなあ?」

その言葉は、ダウラの冒険者としての本能に火をつけた。「はん! 面白そうじゃねえか! 俄然やる気が出るぜ」と、彼は不敵に笑った。

アクエリアの港を出発してから、およそ一週間に及ぶ旅路。

勇者である甲斐広臣たちが乗る豪華な戦艦とは異なり、予算の限られたこの船は速度も遅い。そのため、あえて波の荒い危険な航路を選んで進んでいた。

航海五日目の昼。空は暗雲に覆われ、激しい雨風が船体を叩きつける。変わらぬ荒涼とした景色に、旅慣れた冒険者たちの顔にも疲労の色が濃くにじみ始めていた。

「はあ……さすがにもう疲れてきたな」

「あと二日でしょ。と言いたいところだけど、さすがにね……」

「……はあ……」

一室に押し込められた雑魚寝の生活は、S級冒険者である彼ら三兄弟の気力をも削ぎつつあった。

その時である。静寂を破り、甲板から切迫した叫び声が響いた。

「おい! なんだあいつは!」

暇を持て余していた冒険者たちが、何事かと一斉に甲板へと走り出す。ダウラたちも、嫌な予感に突き動かされるようにその場へ向かった。

甲板に出ると、人々が呆然と空を見上げていた。

荒れ狂う暴風雨の中、そこには不自然な光景があった。一人の人間のような姿をした者が、風に煽られることもなく、平然と空中に浮遊していたのだ。

「なんだ、あいつは……」

ダウラが呟くと、隣の冒険者が「あいつ、さっきからあそこに浮かんでいるんだ」と怯えた声で答える。

ダウラがアウラに意見を求めようと横を向いた瞬間、彼は息を呑んだ。あのアウラが、恐怖に身を震わせていたのだ。

アウラは空中の敵から視線を外すことなく、低い声で隣のロウラに命じた。

「……ロウラ、あいつが一瞬でも動いたら、私たちの前に出て盾を構えて」

刹那、空中の影が微かにピクリと動いた。

「ロウラァ!!!」

ダウラとアウラの絶叫が重なる。

「フン!!!」

ロウラが即座に前に飛び出し、背負っていた巨大な盾斧を全力で構えた。

事態は一瞬であった。ダウラの目には、吹き荒れる雨風さえもが静止したかのように思えた。

「ピッ……」

微かな、しかし鋭い断裂音が響いたかと思うと、周囲の冒険者たちが物言わぬ骸のように一斉に倒れ伏した。

「ガハッ……!!」

次の瞬間、ロウラが大量の血を吐き出しながら後方へと吹き飛ばされる。

「ロウラ!!」

駆け寄った二人の目に飛び込んできたのは、無惨な光景であった。ロウラが構えていた頑強な盾斧は、真ん中から横一線にひしゃげ、その衝撃はロウラの肉体までをも深く抉り取っていた。

「退いて!」

アウラはダウラを突き飛ばすと、すぐさまロウラに回復魔法を施し始める。

「ロウラ! おい、ロウラ!」

必死に呼びかけるダウラの耳に、ロウラの途切れ途切れの声が届く。

「ダ……ウラ……アウ……ラ……逃げろ……」

「馬鹿野郎! お前を置いて逃げるわけがねえだろ!」

ダウラは叫び、アウラに向かって指示を飛ばした。

「アウラ! ロウラを連れて下に行け! そこで治療に専念するんだ!」

「はあ? あんたはどうするつもりだい!」

「俺は……あいつを倒す!」

ダウラは空中に留まる「何か」を見据えた。

「絶対生きて戻るんだよ!死ななければ私が治すから!」

アウラたちが船室へと退避するのを見届けたダウラは、口端を吊り上げ、微かに笑った。

「おかしいな。こんな状況なのに、笑えてくるぜ……」

「お前がいてよかったぜ、炎槍」

不意に背後から声がした。

振り返れば、そこには先ほどの謎の攻撃を生き延びた一人の男が立っていた。

「ジリアン!」

「久しぶりだな。あいつは俺ひとりじゃ無理そうだから、ちょうどよかったぜ。今回は退路もねえし、やるしかねえよなあ」

ジリアンの言葉を聞き、ダウラはフッと笑うと槍を構え直した。

「そうだな。どのみち俺たち二人がやられたら、この船は全滅だ。……気合い入れろやぁ!!!」

咆哮とともに、ダウラは嵐の空へと飛び上がった。船上の生命すべてを懸けた、絶望的な防衛戦が今、始まった。

こういう展開が大好きです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ