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勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


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魔物の王

山道を中腹まで進んだ3人。周囲は静まり返り、標高の低い山特有の湿った空気だけが漂っている。

「最初のゴブリンの群れ以外、魔物の姿がないな……」

奏多が周囲を警戒しながら呟くと、アリスが鋭い視線を先へ向けた。

「ですね。潜んでいる気配はするんですけど、もっと奥かもしれません」

「……魔物の嫌な匂いもしない。さっきの群れで全部ってわけじゃなさそうだね」

体調が回復し、鋭い嗅覚を取り戻したレトルも鼻を鳴らして同意する。

そんな時だった。

「あ! あそこ見てください!」

アリスが指差した先には、岩肌にぽっかりと不気味な口を開けた洞窟があった。

「洞窟か。気配は?」

「……うん、鉄の匂い。血の匂いがする」

レトルの言葉に、奏多は表情を引き締めた。

「よし、行くぞ」

洞窟内はひんやりと冷たく、奥へ進むほどに通路が広がっている。

「うっ……!」

不意にレトルが顔を顰めた。

「また酔ったか?」

「違う。血の匂いが……さっきよりずっと強い。この先だ」

奥から何かが擦れるような音、そして耳障りな笑い声が聞こえてくる。

三人は顔を見合わせて頷き、岩陰から広大な空間を覗き込んだ。

「……っ!」

その光景に、レトルは思わず後ずさり、その場で胃の中のものを吐き出した。

奥に広がる大空洞には、数百ものゴブリンが蠢いていた。座り込んで肉を食らう者、下卑た声で喋る者、そして――。

その中心で、捕らえられた人間をなぶり殺している奴らがいた。

「な、なんだあれ……」

「ゴブリンの巣……。まさかこれほどの数が群れを作るなんて」

アリスの声が怒りに震える。

「うぷっ……ど、どうする?」

「決まってます」

アリスが言い放つより早く、奏多が刀の柄に手をかけた。

「行くぞ!」

号令とともに奏多が飛び出す。担いでいた漆黒の刀を抜くと、一気に魔力を流し込む。

――キィィィィン!

鋭い音を立てて黄金に輝く刀身。異変に気づいたゴブリンが叫び声を上げようとした瞬間、その首はすでに宙を舞っていた。

目にも止まらぬ速さで、奏多がゴブリンの群れを次々と切り伏せていく。

アリスもまた、腰のレイピアを抜き放った。

「はぁっ!」

奏多の刀とは対照的に、アリスのレイピアは神々しい白光を放つ。音もなく、しかし確実にゴブリンの心臓を一突きで貫いていく。

あまりに圧倒的な二人の戦闘能力に、レトルは槍を構えたまま立ち尽くした。

「……次元が違いすぎるよ」

わずか数分の出来事だった。空洞を埋め尽くしていたゴブリンたちは、すべて物言わぬ肉塊へと変わった。

「ふぅ……」

奏多が刀身に付着した血を鋭く振り払う。

「これで全部か。おい、アリス! 捕らえられてた人たちは!」

「だめだ……」

先に駆け寄っていたレトルが、死体の前で立ち尽くしていた。

二十人ほどの男女や子供。その多くは無残な姿に成り果てていた。

「……おそらく、村を去ったと言われていた村人たちだな」

「ひどい……。これは生きるためじゃない、ただ楽しむための殺しですよ……!」

アリスが悔しげに拳を握りしめた、その時。

「アリスさん、危ない!!」

レトルの叫びが響く。

「え?」

アリスが振り返った瞬間、空洞の影から巨大な影が飛び出した。

――ドガァァァン!!

ゴブリンに似ているが、その体躯は巨大。振り下ろされた巨大な棍棒に打たれ、アリスが岩壁まで吹き飛んだ。

「アリス!!」

奏多が叫ぶ。岩壁に激突し、崩落した岩に埋もれるアリス。

「くっそがぁぁ!!」

怒りに任せ、奏多が黄金の刀をその巨躯に叩きつける。

刃は厚い肉に食い込むが、鋼のような筋肉に阻まれて止まった。

「硬ぇ……! なら、これならどうだっ! おりゃあああ!!」

さらに魔力を上乗せし、力任せに一閃。

凄まじい衝撃とともに巨人の上半身が真っ二つになり、叫び声を上げながら宙を舞う。そこへ上空から急降下したレトルが、槍をその眉間に深々と突き刺してトドメを刺した。

「ハァ……ハァ……」

着地したレトル。奏多はすぐにアリスの元へ駆け寄る。

「アリス! 大丈夫か!」

「ええ……。完全に油断してました」

岩の下から、光の魔法を自分にかけながらアリスが這い出してきた。

「ふぅ、びっくりしました!」

「……びっくりしました、じゃねえよ! 心配しただろうが」

ケロッとしているアリスに、奏多は心底安堵した。

「無事でよかったよ。……でも、あの魔物、普通のじゃないよね?」

駆け寄ってきたレトルが、真っ二つになった巨骸を見やる。

「ええ。隠蔽魔法もかなり高度だった。私が気づかなかったなんて……」

アリスが表情を曇らせる。

「昔、おばあちゃんから聞いたことがあります。魔物が進化の果てに辿り着く『ロード(王)』。知能も魔法も持ち合わせる、魔物の頂点の一つ……おそらく、今の奴はそうだったんじゃないでしょうか」

「ロード……か」

奏多は刀を鞘に収め、周囲を見渡した。

「どおりでゴブリンがこれだけ統率されてたわけだ。……とりあえず、村に戻ろう。証拠の耳と、村人の遺体も連れてな」

初めての冒険者としての依頼は、予想もしなかった強敵との遭遇、そして悲しい再会とともに幕を閉じた。

アリスティアの平穏な日々とは違う、人間大陸の「残酷な現実」を、奏多たちは身をもって知ることとなった。

10時に投稿できなかった…

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