空っぽの器、暖かさを知る
「こっ、これは……お、お、美味しすぎるううううううう!!!」
目を輝かせ、文字通り飛び上がらんばかりに感動するアリス。その反応は、作った奏多が少し引くほどの熱量だった。
「これが『味を付ける』ってことなんだ。調味料ってのは料理の肝だからね」
「凄すぎます! この『しお』ってものは!! 奏多、どんな魔法を使ったんですか!?」
鼻息を荒くして詰め寄ってくるアリスに、奏多は苦笑しながら手を振った。
「魔法? いや、魔法なんかじゃないよ。……まあ、出したのは確かにスキルの力だから、魔法みたいなものと言えばそうなんだけどね」
(というか、願っただけで塩が出てくるなんて、やっぱりこのスキルは常軌を逸してるな……)
奏多は自分の手のひらを見つめ、その底知れなさを再確認する。しかし、目の前でこれほど喜んでくれるアリスを見ていると、理屈はどうでもよくなってきた。
「そんなに感動してくれるなんてな……。そうだ、ならこの余った骨を使って……」
奏多は解体した後に残った大きな骨を拾い上げると、大きな鍋に放り込んだ。そこに水を注ぎ、新しく獲得したスキルで、自身の知識にある「旨味」をイメージしながら粉末を振りかけていく。
アリスはその一連の動作を、まるでおもちゃを待つ子供のような、キラキラとした瞳で見つめていた。
「ほら、魔物の骨で作った『牛骨スープもどき』だ」
「こ、これは……!! なんて美味しそうな匂いなのでしょう! 私、ヨダレが止まりません! 飲んでもいいですか?」
我慢の限界といった様子のアリスは、許可が出るか出ないかのうちに、木製のスプーンでスープをひとすくいして口に含んだ。
「んんん……!!!!」
もはや言葉にならない。
アリスはあまりの美味さに目を剥き、今にも踊り出しそうな勢いで体を左右にゆらゆらと揺らす。
(か、可愛い……!)
思わず見惚れてしまった奏多の手を、アリスがいきなりガシッと掴んだ。
「奏多! あなたは神か何かですか!? 私、感動を通り越して崇拝しそうな勢いですっ!」
涙を浮かべながら、顔を「ずいっ」と至近距離まで寄せてくるアリス。鼻先が触れそうな距離、彼女の青い瞳に驚愕する自分の顔が映っている。
「ちょ、ちょっとアリス! 顔が近い……んだが?」
「あ……」
奏多の戸惑う声でようやく我に返ったアリスは、一気に顔を林檎のように真っ赤に染めた。
「すみません! 私ったら、つい……!」
ぴょん、と跳ねるように距離を取るアリス。耳の先まで赤らめて、もじもじと指をいじり始める彼女から目が離せず、奏多も変な緊張に包まれてしまう。
「……えっと、明日以降は他にも色々な料理を出してあげるよ。楽しみにしてろ」
「やった〜!!」
現金なもので、アリスはすぐに満面の笑みでガッツポーズを作った。
それを見て、奏多の緊張もふっと解ける。
「はははっ、期待してていいよ。……さて、明日は早いし、そろそろ寝るか」
自分を捨てた世界を恨む気持ちが消えたわけではない。
だが、この島でアリスと囲む焚き火の温かさは、奏多の凍てついた心を確かに溶かし始めていた。
【奏多のステータス更新】
• スキル:
• スロット1:【言語理解】
• スロット2:【魔力操作(基礎】
• スロット3:【調味料生成】




