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勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


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新たな冒険へ

アインシア王国との激戦が幕を閉じて数日、アリスティアの島には穏やかだが活気ある空気が戻っていた。戦火で荒れた大地は住民たちの手で丁寧に修復され、真なる魔王として覚醒したアリスの「加護」が島全体に行き渡る。その恩恵は凄まじく、住民たちのステータスは以前とは比較にならないほど向上していた。

そんな中、誰よりも危機感を持ち、自らを律していたのはアリス自身だった。

「まだまだ、この力を使いこなせていない……」

彼女はそう呟くと、自ら修行場に入り浸るようになる。その姿に感化されたのか、修行場には連日多くの住民が押し寄せ、互いに技を磨き合う研鑽の日々が続いていた。

「よし、行くぞ」

修行場の中央、奏多が静かに構える。対峙するのは、腕を組んで余裕を見せる精霊王だ。

「うむ。いつでも来てみろ」

修行に励んでいた住民たちが手を止め、固唾を飲んで二人を見守る。

「スキル【神力操作】! はああああ……!」

奏多が気合と共に、内側に宿る「神のマナ」を練り上げる。

「もうここまで使えるとはな。流石よ、主は」

オウが感心したように呟くが、奏多は不敵に笑った。

「それだけじゃないぞ。スキル【魔力操作(極級)】!」

奏多の周囲に渦巻いていた神のマナが、一気に凝縮され、まるで黄金の鎧のように彼の肉体を包み込んでいく。

「行くぞ」

呟きが消えるより早く、奏多の姿がその場からかき消えた。

住民たちはその速度に目を剥く。奏多の姿を完全に失い、ざわめきが広がる。

――パァァン!!

右側から空気を引き裂くような破裂音が響いた。

そこには、鋭い拳を突き出した奏多と、それを片手で平然と受け止めているオウの姿があった。

「驚いたな。神力を身に纏い、身体能力を底上げするか……」

「くっそ……まだまだぁ!」

奏多がさらに気を吐く。両手でガードを固めたオウの足が、少しずつ、だが確実に後方へと押し込まれていった。

「ぐっ……」

オウがわずかに歯を食いしばる。

「……ここまでであるな」

オウの周囲にも神力が集まり、圧倒的な圧力が膨れ上がった。

「ふんっ!」

オウが両手を振り上げると、奏多は強烈な衝撃波と共に後方へ吹き飛ばされた。

ズバァアン!

修行場の壁に叩きつけられ、地面に転がる奏多。

「だ、大丈夫ですか!?」

心配そうに住民たちが駆け寄ろうとするが、奏多は「くっそー!」と悔しげに叫びながら、すぐに跳ね起きた。そのタフさに住民たちは安堵の息を漏らす。

「これならイケるかなと思ったんだけどな……」

「まだまだ甘いわ。……しかし、今のアイディアはなかなかだったぞ、主よ」

二人が清々しい笑顔で言葉を交わしていると、そこへ一人の少女が割って入った。

「奏多ー! また強くなってる!!」

アリスがポコポコと奏多の頭を叩き始める。

「痛っ! 痛い痛い! やめろアリス!」

逃げ回る奏多を見て、オウがアリスに声をかける。

「アリスよ、お前も着実に成長はしておる。安心しろ」

「オウちゃんはそう言いますけど、自分では全く実感が湧かないんです……」

「実際、アリスは相当強くなってると思うぞ」

奏多がフォローを入れるが、アリスは頬を膨らませた。

「奏多には言われたくありません!」

そう言って、またポカポカと攻撃を再開する。その微笑ましい光景に、オウはフッと笑みを漏らすのだった。

その後も何度か組み手を繰り返したが、結局オウに膝をつかせることはできなかった。

その日の夕食時。塔の一階にある食堂で、各部族の長や奏多、アリスが食卓を囲んでいると、昼間の話を聞いたクルスがいきなりの提案を口にした。

「武者修行にでも行けばいいんじゃないかの」

「武者修行だって?」

面倒くさそうに聞き返す奏多に対し、アリスの目は一瞬でキラキラと輝き出した。

「え!? それってどういうことですか!?」

「文字通りじゃ。自分たちの力に実感が湧かないなら、外の世界で試してくればよい。嫌でも己の立ち位置がわかるじゃろう」

「それはいいのう。実戦経験は何よりの薬じゃ」

ボンドが賛成し、ゲルドは遠い目をしながら呟く。

「なんだか、昔わしとボンドがクルスに修行に行かされた時のことを思い出して悪寒が……」

「あれはお主らが悪さばかりしておったからじゃ」

クルスの容赦ないツッコミに、奏多は苦笑いしながら尋ねた。

「修行ったって、どうするんだよ。また魔物と戦うのか?」

「そうじゃなあ……」

クルスが考え込んでいると、端の方でレトルが恐る恐る手を挙げた。

「あの……人間の国に行って、『冒険者』とかはどうでしょうか?」

「は?」

奏多が呆気にとられる間もなく、クルス、ボンド、ゲルドが同時に叫んだ。

「それだ!!」

「いやいや、人間の国って……。俺たちが行ったらまたすぐに戦闘になるだろ」

「魔法で姿形を変えればよかろう。耳や角を隠す術ならわしが教えよう」

クルスの提案に奏多は渋るが、隣のアリスを見ると、もはや「行きたい!」と顔に書いてあるほど目を輝かせている。

「はぁ……。オウはどうなんだよ」

奏多がオウに向き直ると、精霊王は意外にも肯定的だった。

「悪くないな。人間の冒険者というのは、多様な依頼をこなす。ここにはいない魔物や、名のある悪人とも戦うことになるだろう。それに、人間の国に潜っていれば、女神の動向など有益な情報がいち早く手に入るかもしれん」

「……そう言われると、確かにそうかもな」

「行きましょう! 奏多! 絶対ですよ!」

アリスに両手を握られ、奏多はついに観念した。

「はぁ……わかったよ。行けばいいんだろ」

次の日、港には奏多、アリス、そしてレトルの三人の姿があった。

「奏多殿、レトルが我が儘を言って申し訳ない」

ゲルドの謝罪に、奏多は笑って首を振った。

「いや、いいんだ。仲間は多い方が楽しいしな」

「ありがとう、奏多!」

レトルは嬉しそうに尻尾を振り、その様子を見守るクルスが真剣な顔で奏多の肩に手を置いた。

「奏多殿……アリスはこの島の住民以外とはほとんど関わったことがない。あの性格じゃ、どんな厄介事に首を突っ込むか分からん。頼んだぞ」

「ああ、わかってる。クルスこそ、アリスティアを頼むな。何かあればすぐに念話をしてくれ」

「おーい! 奏多殿ー!」

遠くからボンドが、大きな包みを二つ抱えて走ってきた。

「やっと来たか、ボンド」

ゲルドが呆れるのを無視して、ボンドは息を切らしながら包みを差し出した。

「悪い悪い! これを急いで鍛えておったんじゃ!」

「これは……?」

「一本は奏多殿専用の魔法剣じゃ。塔の中で採取した『ヒヒイロカネ』を惜しみなく使っておる。どうじゃ?」

奏多が鞘から引き抜くと、刀身は漆黒で、美しい弧を描く日本刀の形をしていた。

「そこに魔力を流してみるんじゃ」

言われるがまま、奏多が魔力を込めると、黒い刀身が眩い黄金の輝きを放った。

「すげえ……。ありがとうな、ボンド」

「もう一本は、アリス様のものじゃ。扱いやすいようにレイピアに仕立ててある。これも同じ素材じゃ」

「あいつ、泣いて喜ぶぞ」

奏多が笑っていると、船の上から急かす声が響く。

「奏多! レトル! 早く出発しましょう!」

「あいつ、ワクワクしすぎだろ……。よし、じゃあ行ってくる。島をよろしくな、みんな!」

「うむ、任せよ!」

船が静かに港を離れていく。デッキから身を乗り出し、島のみんなに大きく手を振るアリス。

こうして、守王と真なる魔王、そして若き獣人の、波乱に満ちた冒険者生活への旅が始まった。

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