勇者たち、アリスティアに上陸する
「ここが魔王がいるという島か……」
広臣が呟く。眼前に広がる島は、どこか神秘的で、かつてない不気味な静寂を纏っていた。
「勇者様! 最前の船より連絡です! 強固な結界が張られており、これ以上の進行は不可能とのことです!」
兵士の報告を聞き、広臣は隣に立つ太一に視線を向けた。
「結界か……。太一、いけるか?」
「ああ! 船の上でウズウズしてたんだ。遠慮なく先陣を切らせてもらうぜ!」
太一は弾かれたように甲板を蹴ると、次々と船を飛び移って最前列の艦へと躍り出た。着地と同時に背中の大剣を引き抜き、天高く跳躍する。
「これが剣聖にだけ使えるユニークスキル――『示現切り』!!」
振り下ろされた一撃は、空気を、そして眼下の海面までをも真っ二つに割り裂いた。遅れて衝撃が結界に伝わり、空間に深い亀裂が入る。
「もう一度いくぜ、示現切り!」
今度は横一文字に薙ぐ。轟音と共に、島を包んでいた透明な壁がパリーンと粉々に砕け散った。
「ふぅ……」
船に着地した太一のもとへ、広臣が合流する。
「君が二度もスキルを使わないと壊れないとはね……」
「うるせえ。あんな硬い結界、王国の魔術師共の術じゃ見たこともねえんだよ」
太一が悪態をつく後ろから、萌も杖を手に歩み寄る。
「壊せたんだからいいじゃない。さっさと上陸しましょ。……それにしても妙な島ね。スカイツリーみたいな塔が生えてるけど、それ以外はただの田舎。面倒くさいから、極大魔法で更地にしていいかしら?」
「俺たちは構わないぜ。なあ広臣。ただし、魔王だけは俺の獲物に残しておけよ?」
太一の言葉に、広臣も黙って頷く。
「じゃあ……。炎の精霊よ、我に従い力を渡せ――『バーニング・オーバー・エクスプロージョン』!」
萌が杖を掲げた瞬間、島の上空を覆い尽くすほどの巨大な隕石が出現した。ゴゴゴと大気を震わせながら、それは逃げ場のない島へと降り注ぐ。
兵士たちがその威圧感に腰を抜かす中、隕石は島に直撃し、視界を白く染めるほどの大爆発を引き起こした。
艦隊は爆発の衝撃波と高波に煽られ、次々と押し流されていく。だが、広臣たちの乗る船だけは萌の魔力障壁によって、その場に留まっていた。
島を覆う巨大な土煙。しばらく何も見えない時間が続く。
しかし、その煙が突然、目に見えるほどの鋭い突風によって一気に吹き飛ばされた。
「えっ!? なによ今の……」
萌が絶句し、太一も目を剥く。
「な、なんだありゃあ……」
土煙が晴れた先に見えたのは、傷一つついていない島そのものの姿だった。
そして、その浜辺には数人の影が立っていた。クルス率いる、エルフの魔法師団だ。
「椎名、お前の魔法、全く効いてないみたいだぞ?」
太一が皮肉げに笑う。
「うるさいわね! あんな連中が防いでたなんて……さすがラスボスの島ね」
「あれほどの魔法を無効化したんだ。消耗していないわけがない。今のうちに追撃に行くぞ!」
広臣の号令で、三人は即座に上陸を開始した。浜辺に降り立った彼らの前に、悠然とクルスたちが立ちはだかる。
「おぬしらがアインシアの勇者か……。なんだか、知り合いのマナに似ておるのう」
クルスは若返った瞳で、広臣たちを冷静に観察する。
「はっ、知り合いだぁ? お前らみたいな耳の長い知り合いなんて、俺たちにはいねえよ」
太一が挑発的に返すが、広臣がそれを手で制した。
「あなたたちはこの島の住民か? その耳……エルフ、というやつだな。魔王とは、あなたたちのことか?」
問いかける広臣に、クルスは静かに首を振る。
「いかにも。わしらはエンシェントエルフじゃ。しかし魔王はわしらでもないし、エルフでもない。お主らと同じ……『人間』じゃよ」
なんか注目ランキング入ってた!




