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勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


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空っぽの器、初めての「魔法」

「うーん……。むにゃむにゃ……。知らない天井だぁ……。うーん……。しかし何故か心地のいいベッドだなぁ…………ん? おわぁっ! アリス! なにしてるんだ!」

俺は飛び起きた。

状況が飲み込めない。視界に入ったのは、肩の服がはだけた状態で俺にぴたりと抱きついて眠るアリスの姿だった。

「んんん? むにゃむにゃ……。おばあちゃん……まだ朝早いよ……。修行の時間じゃないでしょ……。ん? あー! 奏多!! このえっち!!!!」

「バチーン!」と、朝の静寂を切り裂く乾いた音が響いた。

「……自分からくっついといていきなりビンタは酷いでしょうよ!!」

俺は赤く腫れ上がった頬をさすりながら、正座するアリスにお説教を食らわせていた。

「ごめんなさい! ごめんなさい! ほんとにびっくりしちゃって!!」

アリスは深く首を垂れて、消え入りそうな声で謝っている。

昨晩、彼女からもらった木の実を腹一杯食べた俺は、これまでの疲れが一気に噴き出して泥のように眠ってしまったらしい。

アリスの話によれば、久々の話し相手が嬉しくて寝顔を眺めていたところ、気づいたら抱き枕にして寝落ちしていたという……。

「どーしたらそうなるんだよっ!」

「ほんとに悪気はなかったんですぅ〜……」

しゅんとする彼女を見て、さすがに怒りすぎたかと反省する。

「あ、悪い、少し言い過ぎたな。……で、今日はこれからどうするんだ?」

するとアリスはパッと顔を上げ、期待に満ちた目で言った。

「今日はこの島を案内します! さすがに何も知らないままじゃ、何もできませんからね!」

朝食の木の実を素直に感謝して平らげると、アリスは顔を上気させて俺を案内してくれた。

「ここが私の修行場所です。高台で見晴らしがいいから、魔物が来てもすぐに対処できるんですよ」

「ふーん。なあ、魔物ってどんなのがいるんだ?」

俺の問いに、アリスは指折り数えて説明してくれた。空飛ぶやつ、海からくるやつ、角の生えた大きな四足歩行のやつ。

「へえ、その四足のは牛みたいな感じなのかな。俺の世界にいた生き物なんだけど、肉が美味くて、そこから絞れる『牛乳』って乳が最高なんだよ」

「ち、乳を絞るんですか……っ」

アリスはなぜか顔を真っ赤にして声を詰まらせた。また何か勘違いしているようだが、あえて突っ込まないことにした。

その時だ。草原の向こうから「ドコドコドコドコ!」と地響きのような足音が近づいてきた。

「あっ! ちょうど魔物がきましたよ〜!」

アリスは嬉々として声を弾ませたが、俺はすぐに異変に気づいた。

「……なあアリス。なんか足音、多くない? それにあの土煙、やばいだろ!」

「そういえばそうですね〜。いつもより多いような……って、うわああああああ!!」

視界の先、数十匹の魔物が群れをなして猛スピードでこちらへ突進してくる。

「アリス! 魔物ってあんな数で来るものなのか!? 絶対死ぬって!」

「あんなの見たことないですよ! ちょっとどうしよう! あーん、もう! こうなったら!」

逃げ惑う俺たちだったが、アリスがいきなり足を止めた。彼女は魔物の群れと真っ向から向き合い、瞳を閉じて詠唱を始める。

「大地の精霊よ、我願うことを叶えたまえ――【サンド・ウォール】!」

砂浜の砂が意思を持ったように逆立ち、鋭い槍の壁となってせり上がる。

先頭の魔物たちが次々と串刺しになり、後続も壁に阻まれて動きを止めた。

だが、一匹。

壁の隙間を縫って、猛り狂った巨大な個体がアリスに向かって突っ込んできた。

「くっ! 逃げて、奏多!」

叫ぶアリス。

やばい、このままじゃアリスが――。

足がすくむ。俺は無力で、無能なはずだ。

でも、また失うのか? 唯一俺を「居場所」に招いてくれたこの子を?

――嫌だ。力が欲しい。ファンタジーの世界なんだろ?

魔法だ。魔法を使いたい。この子を守れるだけの力が!!


《個体名:空井奏多の精神的渇望を確認》

《スキル【魔力操作】を獲得しました。空きスロット2にセットされます》


脳内に響く無機質な声。同時に、体の中を熱い何かが駆け巡る感覚。

「……来たッ!」

俺は無意識に、今しがたアリスが見せた術を脳裏に描いた。

イメージするのは壁じゃない。獲物を確実に仕留める、鋭い一撃。

「――【サンド・ウォール】!!」

俺が叫ぶと同時に、アリスの目前で砂が爆ぜた。

せり上がった巨大な砂の槍が、突進してきた魔物の腹を正確に貫き、宙へと突き上げた。

「奏多……魔法、使えるの……?」

呆然と、今にも泣きそうな顔で俺を見上げるアリス。

その湿った瞳に心臓が跳ねるのを感じながら、俺は自分の右手を凝視した。

「……なんか、アリスを助けたいって願ったら、使えたみたいだ」

自分でも信じられない。だが、俺の「空きスロット」は確かに、この世界の理を掴み取っていた。

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