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勇者たちのそばに偶然居合わせて異世界召喚されたら、無能はいらぬと島流しに。流刑地で覚醒した俺は島おこしで世界征服をする  作者: ほさ


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空っぽの器、絶望の海に流される

「……お前のような『不浄な余り物』に割く予算はない。即刻、刑を執行せよ」

アインシア王国、黄金に輝く謁見の間。玉座に座る国王の冷酷な声が響いた。

数分前、俺――**空井そらい 奏多かなた**は、学校の視聴覚室の隅で昼寝をしていたはずだった。目を開けたら魔法陣の上で、隣にはクラスの主役級グループである甲斐かい 広臣ひろおみ桐生きりゅう 太一たいち椎名しいな もえ、そして夢野ゆめの 愛多うたがいた。

「鑑定」が行われ、彼らのステータスが判明するたびに王宮は歓喜に沸いた。

【勇者】、【剣聖】、【大賢者】、【聖女】。伝説級の職業を宿した四人は、まさに救世主だった。

だが、俺の番になった瞬間、空気が凍りついた。

「……無職? ステータスは一般人以下。スキルは……『空きスロット』? 何だそれは、ふざけているのか!」

国王が顔を真っ赤にして怒鳴る。勇者の広臣は困ったように眉を下げ、「あの、彼は僕の友人なんです。どうか慈悲を……」と、いかにも善人らしい口調で言った。太一は気まずそうに目を逸らし、萌は「はぁ? 意味わかんないんだけど。あんた、こんな時まで空気読めないわけ?」と毒づいた。

ただ一人、委員長の愛多だけが顔を真っ白にして「待ってください! 彼は何も悪くないのに……」と声を上げたが、兵士たちの怒号に掻き消された。

「不届き者だ! 女神イリスの神聖な召喚を汚した罪、島流しにて償え!」

俺の腕が乱暴に掴まれる。愛多の方を振り返ろうとしたが、視界が歪んだ。

これが、ろくに家に帰らない母親の世話をし、学校でも影のように生きてきた俺の人生の結末か。

――最後に、たまに話しかけてくれた委員長に、挨拶くらいしておけばよかったな。

どれくらい、海の上を漂っていただろうか。

兵士に突き飛ばされ、一人乗りのボロ船で放流されてから、俺の意識は限界に達していた。

渡された食料はとっくに尽き、喉の渇きは焼けるような痛みへと変わっている。

視界の端に、残酷なステータス画面が浮かんでいた。


【状態異常:重度の脱水・飢餓】

【HP:8 / 120】


「……はは、死ぬな、これ……」

かつての生活を思い出す。シンママの母親は男遊びに夢中で、俺の夕飯はいつも冷蔵庫の残り物で作る質素なものだった。でも、そのおかげで料理だけは得意になった。もしこの先があったら、誰かに美味いもんを作って食わせたかったな……。

太陽がじりじりと脳を焼く。意識が深い闇へと沈んでいった。

「……@*#&? ……$%+!」

何かが、頭に触れている。

柔らかくて、温かくて、微かに花のようないい匂いがする。

……天国か?

ゆっくりと目を開けると、そこには信じられない光景があった。

吸い込まれるような深い青色の髪。健康的な褐色の肌。そして、少し尖った耳。

絶世の美少女が、俺を膝枕して心配そうに覗き込んでいた。

「§〆Ω……? £¢§¶♯!」

透き通るような、鈴を転がすような声。だが、彼女が話しているのは聞いたこともない複雑な音の羅列

「う、あ……だれ……?」

掠れた声でそう言うと、彼女の胸元が視界に入り、思わず心臓が跳ねた。

「え、あ、うわああああ!! 胸、むねがああああ!!」

「¥!? &*@#!」

パニックで跳ね起きようとしたが、体力は限界だ。俺はそのまま再び視界が暗転し、砂浜へと倒れ込んだ。

次に目が覚めた時は、少しだけ体が軽くなっていた。

波の音が聞こえる。横を見ると、先ほどの褐色の少女が焚き火のそばで座っていた。

彼女がまた何かを話しかけてくる。

「え、えっと……何を言ってるか全然……」

その瞬間、視界に無機質な文字が走った。


《個体名:空井そらい 奏多かなたの渇望を確認》

《スキル【言語理解(古代エルフ語)】を獲得しました。空きスロット1にセットされます》


「えっ……?」

驚く俺をよそに、少女の声が急に「意味」を持って脳内に響き始めた。

「……よかった。やっと目が覚めたのね。大丈夫ですか? まだ動かない方がいいですよ、そこの『漂流者』さん」

「言葉が……わかる。えっと、君が助けてくれたのか?」

「はい。この島の海岸をパトロールしていたら、あなたが流れてきたんです」

彼女は立ち上がり、少し誇らしげに胸を張った。だが、その背後で結んでいた髪が焚き火の煙に巻かれ、あわてて手で払っている。どこか抜けている感じだ。

「私はオリヴィア・アリス。この『原初の孤島』を守る、魔王の末裔です!」

「魔王の……末裔?」

俺は呆然と彼女を見た。王国では「魔王は諸悪の根源」だと教えられたが、目の前の少女は、ただただ純粋で、少しおっちょこちょいな、同年代の女の子にしか見えなかった。

アリスは寂しげに、周囲の広大な景色を指差した。

「でも、今は見ての通り。島は石化が進んで、住んでいるのは私一人だけ。……でも、私はいつか、ここを昔のように賑やかな場所にしたいんです」

石化した大地。枯れた木々。

その孤独な光景は、かつての自分の部屋の冷たさに似ていた。

「……空井そらい 奏多かなた。カナタでいい」

俺は、震える足で立ち上がった。

「アリス。助けてくれたお礼をしたい。……俺に、何ができるかはわからないけど。でも、君のその願い、俺も手伝わせてくれないか?」

その時、俺のステータス画面が再び輝いた。

『空きスロット』――何もない俺に与えられた、唯一の希望。

俺とアリスの、世界をひっくり返す「島おこし(世界征服)」がここから始まった。



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